章末閑話:いもうとの役目
第一章完結ということで、アイリス視点の閑話です。
ストーリーは進まないので読み飛ばして頂いてもだいじょぶです。
あ、章タイトル追加しました!
わたしはアイリス。
レティおねーちゃんの妹で、コロネのおねーちゃんだよ!
あのね! 今日はびっくりするコトがいっぱいあったの!
まず朝起きると、一緒に寝てたハズのおねーちゃんがいなかったの!
おねーちゃんがいない!? どうしよう!?
わたしはコロネを起こしてきんきゅーじたいを知らせる。
「コロネ! 起きて! 大変! おねーちゃんがいないの!」
「ふみゅぅ……きっとトイレなの。アイねぇ、心配しすぎなの。」
コロネはそう言ったけど、わたしはそんなコトないと思ったの!
だって……昨日の夜、おねーちゃん、すっごく苦しそうだったもん!
もしどこかで倒れてたら……大変!
わたしはすぐに部屋を飛び出した。
まずはエリノアに知らせなきゃ!
エリノアはおとーさんの"じゅうしゃ"(?)だった人。
おとーさんは死んじゃったけど、その後もわたしたちのお世話をしてくれてる。
おかーさんみたいな存在……かな?
わたしはエリノアの部屋のドアを勢いよく開ける。
ノックをする余裕なんてなかったの!
「エリノアー! 大変! おねーちゃんがいなく……あれ?」
そこにはエリノアと……おねーちゃんが居た!
「おねーちゃん、ここにいたの? もー! 心配したよー!」
おねーちゃんの顔色は、昨日の夜がウソみたいに元気そうだった。
よかったぁ……病気治ったんだぁ……。
安心したら力が抜けて、わたしはその場に座りこんじゃった。
「れてぃねぇ、みつかったの……?」
頭の上から声がしたから見上げると、コロネがわたしの後ろから部屋を覗き込んでいた。
ほら! コロネも心配だったんじゃん!
「見つかったよー。もー、わたしもコロネも心配したんだよー?」
「アイねぇは大げさなの。ころねはアイねぇの方が心配なの。」
「コロネひどいよー!」
でもおねーちゃんが元気になったみたいで安心したぁ。
「お二人とも! お嬢さまは病み上がりなんですから、あまり大声を出してはダメですわ! 朝食まで少しお散歩でもしてきたらいかがですの?」
あ! おさんぽ!
そうだ!
おねーちゃんが元気になったんだから、神様にお礼を言わなきゃ!
おねーちゃんが早く元気になりますように! っていつも神様にしてたお祈り。
エリノアにも、もちろんおねーちゃんにも内緒でコロネと毎日してたんだぁ。
わたしはコロネと顔を見合わせる。
コロネも同じことを考えたみたいで、わたしにこくりと頷いた。
「んー。そうだね! おねーちゃん! あとでね!」
「れてぃねぇ、またあとでなの。」
わたしとコロネは、階段を降りておさんぽに出かけた。
今日は司祭のおじーさんいるかな?
おじーさんもおねーちゃんのこと心配してくれてたし、早く教えてあげなきゃ!
***
教会で神様にお礼を言って家に帰ると、おねーちゃんが待っていた。
「ただいまー! あ! おねーちゃん! おはよー!」
わたしはおねーちゃんにまだ言ってなかったおはようを言う。
「もー。起きたらおねーちゃんいないんだもん!」
何してたの? と聞くと、おねーちゃんが答える。
「わりぃわりぃ。早く目が覚めちまったからエリノアと世間話をちょっとな。」
その後、朝ごはんになったんだけど、そこでまたびっくりすることがあったの!
「おねーちゃん! それ何!?」
おねーちゃんの手元、テーブルの上にいつのまにか赤い小瓶が置いてあったの。
「イチゴジャム……だな……。」
「「「イチゴジャム?」」」
わたしとコロネとエリノアが、おんなじタイミングで声を上げる。
エリノアも知らなかったみたい。
「あー、イチゴっていう果物を使った食品で……こうやってパンに塗って食べるんだ。」
おねーちゃんがパンに赤いのを塗って食べる。
パンを口に含んだおねーちゃんは、すっごく幸せそうな顔だ。
なんだか……すっごくおいしそー!!
「わ、わたしも食べたい!」
「ころねも! なの!」
「わ、わたくしも頂きたいですわ!」
おねーちゃんがイチゴジャムを塗ってくれたパンを口に入れる。
ほんとに! びっくりするくらいすっごーく! おいしかったの!
でもわたしたちがイチゴジャムにはしゃいでいる間、おねーちゃんはイチゴジャムの小瓶を見つめて真剣な顔をしていたのがちょっと気になった。
***
その日の夜。
「妹さま方、今日はこちらでおやすみ下さいね。」
エリノアに言われて、わたしとコロネはいつもと違う奥の部屋で眠ることになった。
「えー? おねーちゃんは?」
「お嬢さまは"念のため"階段前の部屋でおやすみするそうです。……何もないと思いますけど。」
"念のため"?
どういう意味だろ?
コロネも不思議そうな顔をしていた。
「アイねぇ……なんだかアヤしい気がするの。」
「うん。……ね! ちょっと起きててみようよ!」
わたしの提案に、コロネも頷いた。
***
「がぁあああああああああああ!!!??」
ドアの外から聞こえた声に、寝ちゃいそうになっていたわたしはびっくりして目を覚ました。
コロネも同じだったみたいで、二人で顔を見合わせる。
……何の声だろ?
ドアの隙間から外を見ると……知らない男のひとと、おねーちゃんと、エリノアがいた。
男のひとは倒れてるみたい。
おねーちゃんが何か話しかけてる。
「俺の妹に手ェ出すって事は、自殺志願者ってことでイイんだよなァ!?」
ビクッ!
おねーちゃんの怒ってる声に、わたしもコロネもびっくりする。
でも……おねーちゃん、わたしたちのこと、守ってくれてる……の?
その先の話は、よく聞こえなかったけど……
でも、おねーちゃんがわたしたちの為にがんばってくれたことはわかった。
おねーちゃんとエリノアはまだ何かしてるみたいだったけど、わたしとコロネはおふとんに入った。
「アイねぇ……どうするの?」
となりで一緒に天井を見つめるコロネが聞いてくる。
「あさになったら、れてぃねぇにさっきのこと……きくの?」
コロネの質問に、でもわたしは
「……知らないフリ……しよ?」
そう答えた。
ホントは……聞きたい。
でも……
「おねーちゃん、わたしたちを心配させたくないみたい。」
「……それは……わかるの。」
コロネはちょっとおませさんだけど、まだ小さい。
不安な気持ちもあるみたいだった。
わたしはコロネをおふとんの中で、ぎゅっと抱きしめてあげる。
「おねーちゃん、すっごく優しいから、わたしたちが不安がると、おねーちゃんも不安になっちゃうでしょ?」
そう言うとコロネはわたしを見つめて、こくんと頷いた。
「だから……知らないフリしよ? わたしたちが笑ってれば、おねーちゃんも安心して笑ってくれるよ♪」
わたしが笑ってそう言うと、コロネも笑った。
「アイねぇは、れてぃねぇのこと、好きすぎなの。」
「えー、コロネも大好きだよー?」
わたしはまたコロネをぎゅってする。
そうして、わたしのびっくりな一日は終わった。
明日からもっとびっくりすることが待ってるかもしれないけど……わたしはいつも笑ってなきゃね!
がんばり屋さんのおねーちゃんが、少しでも安心できますように♪