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魔王の長女に転生したけど平和主義じゃダメですか?  作者: 初瀬ケイム
花降り編 第五章 せんりつとともに
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第四十三話 嘘のつけないキミだから

「あれ……?」


 俺とシュレムが宿に辿り着いた頃には、既に空が白み始めていた。


 夜明け前のその時間――。


 普段ならばまだ人が出歩くには早すぎるであろうその時間に……


 俺たちが泊まっている宿の周りに、複数の人影が見えた。


 一瞬『敵襲か!?』と焦りかけたが……


 よくよく見ればそれらの人影は、俺のよく見知った仲間たちだった。


 エリノアにロロにミリィにグリムにシャル……。


 みんなが……ランプを片手に宿の周辺をウロウロしている。


「!! レティ殿!! シュレム殿!!」


 ロロが俺たちに気付いて声を上げる。


 あー……、そっか。

 俺たちが居なくなったことに気付いて探してくれてたのか……。


 申し訳ないことしたな。

 書置きのひとつくらい用意しとけば……ってそんな余裕も無かったか。


(さて、どうやって誤魔化すかな……。)


 正直に話すのは、シュレムをまた責めてしまうようで気が引ける。


 駆け寄ってきたみんなに、俺は普段通りを装って対応する。


「おー。 みんなどうしたー?」


「どうしたじゃありませんわ! お嬢さまとシュレムさんが居なくなってることに気付いて、みなさんと探し回っていたんですのよ!!」


 エリノアの言葉を聞き、俺は内心申し訳なく思いつつもすっとぼける。


「ありゃ、そっかー。わりぃわりぃ。シュレムと朝の散歩に……」


「みなさん、すみませんっ!!」


 俺の言葉を遮って、シュレムが突然ガバッと頭を下げた。


「すみません……! ボクがレティーナさまを連れ出したんですっ!!」


 そう言ってみんなに詫びるシュレム。


 あー……。

 誤魔化し失敗。


「……いいのか? シュレム。」


 俺が頭を下げるシュレムに問うと、シュレムは顔を上げて……覚悟を決めた表情で告げる。


「はい……。みなさんに、全て話します。」


 やれやれ。


 どうやらこれが、この子の性格らしい。


 不器用な程の"誠実さ"――。


 スパイとしちゃ落第だが……


「そっか。……ん。わかった。」


 俺はそう言って微笑む。


 きっとそれがシュレムのいいところだもんな。


***


「…………という訳で、ボクはレティーナさまやみなさんを騙していたんです。本当に、申し訳ありませんっ……!!」


 宿に戻った俺は、幼女たちと共にシュレムからの謝罪の言葉を聞いた。


「シュレムも親父さんの為に必死だったんだ。それに俺もみんなも被害は無かった。だから……俺は許した。あとはみんな次第だ。」


 俺はそう言ってフォローする。


 まぁ幼女たちが『どうしても許せない』っていうようなら、俺も対応を考えるが……。


 しかし幼女たちの反応は、それ程苛立ったものでは無かった。


 というよりも、むしろ……


「そう……でありますか。"夢渡り"の力……」


「その"力"で……あの……わたしたちが……」


「眠っておったレティーナを……その……」


 ロロ、ミリィ、グリムの三人が、赤面しながら呟く。


 どうも話の中で幼女たちが一番引っかかったトコがそこらしい。


 シュレムの力で命じられたとはいえ……


 俺を"襲ってしまった"コト。


 ……それも"えっちぃ意味で"だ。


 無理やりならまだしも、シュレムの説明では『相手にその意思が無いような命令は出来ない』とのこと。


 シュレムを責めるよりも、自分の中に生まれた羞恥心と戦うのでいっぱいいっぱいなのだろう。


「あ~……えっと。その件なら俺は気にしてないからな?」


 一応幼女たちにそう告げておく。


 俺的には全然嬉しかったから大丈夫なんだけど……


「そういう問題ではないであります!」


「そうだよ!」


「わ、妾たちが……その……"そーゆーコト"をしたがっていたなんて……!」


 口に出して、一層顔を羞恥に染める三人。


「ご、ごめんなさいっ! 全部ボクのせいなんですっ! ボクがレティーナさまを"襲え"なんて……!」


「あー! もう! その言葉を出すのはやめるのじゃシュレム!」


 真っ赤になったグリムがシュレムを止める。


 やがて三人は、まだ顔を赤くしたまま絞り出すように言葉を紡ぐ。


「も、もうそのコトは忘れるようにせぬか?」


「そうでありますな。何も無かったということで……。」


「う、うん。そうだね。ぜんぶ無かったことにしよう?」


 どうやらそれで納得したらしい三人。


「じゃあもうシュレムのことは許したってことでいいよな?」


「う、うむ。」


「う、うん。」


「そ、そうでありますな。」


 ふぅ……。


 まぁこれでとりあえずこの場は治まった。


 そう安心していた俺だったのだが……


「……納得いかない。」


 そう口にしたのはシャルだった。


 え?

 なんでシャル?


「シャルは何もされてないだろ?」


 俺がそう言うと、シャルは不機嫌そうにほっぺをぷくぅ、と膨らませた。


「……だから(・・・)……納得できない。」


 "だから"?


 何もされてないから?


 ……って、あぁ、そっか。


「……シュレム。」


「え!? あ、はいっ!」


 シャルは部屋の隅へとシュレムを引っ張っていく。


 そこで……何やらごにょごにょと内緒話を始めた。


 しばらくして戻ってきたシャルは、晴れやかな表情に変わっていた。


「……ん。……ゆるした。」


 お、おぅ……。

 許した、っつーか……


 今明らかに"裏取引"らしきものがあったような……?


 ま、まぁいいや。


「それで、今日はどうするんでありますか? 予定通り王都へ?」


 ロロが聞いてくる。


「いや、その予定は変更しよう。」


「えっ!?」


 俺が言うとシュレムが驚きの声を上げる。


「いや、俺もシュレムもほぼ徹夜だっただろ? それにみんなも朝早くから俺たちを探して疲れてる筈だ。」


「でも……選挙開始前にレティーナさまの意思表明をしないと……」


「いいさ。どうせ"選挙には出ません"って言うだけだろ? 大した問題じゃない。」


 そうだ。

 もともと"魔族全体が曖昧な気持ちのままでは、選定選挙に支障がある"って程度の話だ。


 そんなモンより、寝不足のシュレムに馬車を運転させる方が大問題だ。


「もう一泊してから出発すれば、どうやったって俺の立候補の期限には間に合わない。"時間切れ"だ。その方が……シュレムも安心だろ?」


 俺の出馬を恐れて、無理な襲撃まで仕掛けてきたシュレムだ。

 出馬しないと言った俺の言葉を信じてくれてはいるが、内心にはまだ不安があるだろう。


 だから王都に到着するのは、時間切れの後でいい。


「レティーナさま……ありがとうございますっ!」


 気遣いが伝わったのか、シュレムは深々と頭を下げた。


「……それじゃ……今日は……宿でじっとしてる?」


 シャルの言葉に、俺は唇の端を上げる。


「宿で過ごすが……じっとしててもつまんねぇだろ?」


 せっかくシュレムが、ホントの意味で"仲間"になったんだ。


 だったら……"歓迎会"をしなくちゃな!

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