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魔王の長女に転生したけど平和主義じゃダメですか?  作者: 初瀬ケイム
第一章 あーくでーもん
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第十一話 名前を付けてね♪

――ガタンッ!


「ぬふおっ!」


 唐突な縦揺れに、俺は変な声を上げて目覚めた。


 周りを見回す。

 俺は壁際に腰掛けるようにして眠っていたようだ。


 俺の両脇にはアイリスとコロネが、俺の肩にもたれるようにして眠っている。


 おぉぅ、マジ天使。

 守りたい、この寝顔。


「あら、お目覚めでして?」


 掛けられた声に視線を向ければ、対面にエリノアが同じく座っている。


 さっき程ではないが、今も揺れは続いている。


 ……そうだ。

 ここは荷馬車の中だ。


(あ……だんだん思い出してきた……)


 襲撃のあった昨日の夜……。

 あの後、俺たちは夜通しで旅の準備をした。


 俺の推測。

 俺たちには"先代魔王の娘"って事以外に、"何か"がある。

 あの魔族復権推進派どもが形振り構わず夜襲をかけてでも確保したいような"何か"が……。


 その手がかりを探すべく……

 魔王軍の幹部、その娘さんに話を聞くのが旅の目的だ。


 そして日が昇る前の時間。

 荷物をまとめた俺たちは、まだ眠い目を擦っているアイリスとコロネを連れて街の外に出た。


 そこで目的の街に移動する為、貨物用の荷馬車に乗せてもらって……


(で、徹夜で準備して疲れ切った俺は、荷馬車に揺られながら爆睡してたってワケか。)


 我ながら、よく眠れたモンだ。

 元々貨物を乗っけるトコに乗り込んだもんだから床は固いし、揺れはモロに来るし。

 子供の頃に乗せてもらった軽トラの荷台の方がまだ乗り心地良かったわ。

 あー、ケツがいてぇ。


 アイリスもコロネもよく寝れるな……と思い、二人に目線をやると……

 妹たちの可愛いお尻の下には、この世界には有り得ないような、柔らかそうなクッションが敷かれていた。

 しかも明らかに現代日本の……具体的に言えば某"お値段以上のお店"で見たことがあるやつだ。


 俺が驚いているのに気付いたエリノアが説明する。


「覚えてませんの? 荷馬車に乗った後、妹さま方が辛そうだったのを見てアナタが"出して"差し上げたのですわ。」


 ……あー、そうだ。

 で、自分の分も出そうとしたけど急に来た眠気に負けてそのまま寝落ちしたんだ。


 エリノアが「わたくしも欲しかったですわ!」とか言ってるので俺の分と一緒に出してやった。


「はぁー、快適ですわぁ……!」


 クッションをお尻に敷いたエリノアが感嘆の声を上げる。

 俺もそれに倣うが……おぉ! このクッション性! まさにお値段以上だ!


「……で、そろそろ説明して頂けませんこと?」


 しばらくクッションの有難味を噛みしめた後、エリノアが口を開く。

 ……まぁいい加減、聞きたくもなるよな。


「……この"力"のことだよな?」


 俺は右手を握る。

 次の瞬間、手のひらにポン!と"ペットボトル飲料(500ml)"が出現する。


「そう! それですわ! 何なんですの!?」


 エリノアが指差したペットボトルの蓋を開け、一口飲む。

 ……うん、美味い。


「これは……俺のいた世界の物だ。」


「それは……何となく察してますわ。」


 エリノアが頷く。


「俺の"力"ってのは……過去に見た物、記憶にある物を"出現させる力"みたいだ。」


 ――転生した日。

 朝の食卓に"イチゴジャム"を出現させた俺は、当然その"力"を検証した。


 そして分かったことは、この"力"は、"見たことのある物"を出現させられる、ってことだ。


 但し、無制限ってワケじゃない。

 具体的には、次のような制限があるらしい。


1.実際に"現物"を目で見た物に限る。

(テレビやネット等の"映像"でしか見たことのないものは出現しない)

2.生物は不可。(但し植物については出せるっぽい)

3.重量は両手で持てる程度まで。

4.必ず"手元"に現れる。



 ……なかなか面倒な制限だ。


 まず"兵器"は基本ムリ。

 アメリカやロシアならともかく、平和な日本で平和に育った俺だ。

 手榴弾もサブマシンガンも、現物なんて見たこと無い。


 家電は小さいものなら出せるかもだが、電気が無い。

 出すとしたら電池式かバッテリー式のものくらいか。


 ちなみに、昨夜の襲撃を退けた"暗視スコープ"と"スタンガン"。


 "暗視スコープ"は学生時代にサバゲー好きの知人が、頼んでもいないのに自慢気に見せてきたものだ。

 まぁコイツのおかげで足音を全く立てない襲撃者を、ドアの隙間から確認して迎撃できたのだから野郎には感謝だが。


 "スタンガン"はアキバのアレな店で見かけたものだったのだが……思いのほか高威力で正直ビビった。

 威力を水増しする為に銅製のドアノブから足元まで"塩水"をたっぷり掛けておいたのだが……

 あの店、こんなモン取り扱って規制入らないのか?

 護身用って威力じゃねーぞ?


「……と、こんなとこだ。」


俺の説明に、エリノアは驚いているようだ。


「記憶にあるものを出現させる……あ! でしたらお金も出せますの!?」


「あ、ゴメン、言い忘れた。」


5."元の世界の物"に限る。


 ……つまりこの世界に来てから見たものは例え石ころだろうと出せない。

 逆に言えば一万円札ならいくらでも出せる……が、無意味だ。


「まぁでも、とりあえず食いっぱぐれはねぇな。」


 俺は右手を握るとポン!と"どら焼き"を二つ出し、一つをエリノアに放る。

 エリノアはキャッチしたどら焼きをまじまじと見ていたが、俺が齧ってみせると、それに倣って一口食べた。


「……ん~~~!! 美味しいですわぁ!!」


 エリノアが目を輝かせる。


 さて。

 とりあえず近代兵器で異世界無双的な路線は無理ってことだが……。


 まぁ別に、俺TUEEE!!したいワケでもないし。

 俺は最低限、俺の身と可愛い妹二人(と、ついでにエリノア)を守れる力があればいい。


 そういう意味じゃ、この"力"は当たりなのかもな。


「その"力"……名前は付けませんの?」


 エリノアが思いついたように問う。


「? 別に付けなくてもいいんじゃないか?」


「構いませんけど……魔族には自らの"力"を名付けることで自分と"力"の結びつきを強めるという風習がありますの。」


 そういうもんかね。


「ん~~。じゃあ……【既視の魔眼(デジャビュ・アイ)】とでも呼んどくか。」


 厨二上等。

 異世界でカッコつけて誰に恥じるんだってーの。


 そんなやりとりをする俺らを乗せた荷馬車は、目的の街へと続く凸凹道を進むのだった。

 今さらですがはじめまして♪

 初瀬ケイムと申します。


 今回の投稿で第一章・完となります。

 正直第一章終わるくらいまではブックマーク0かな? と覚悟してたのですが……

 応援して頂けているようで感謝です!


 展開遅くてすみません。

 ストーリーは今後もこれくらいのまったり(?)ペースで進みます。

 なので投稿だけはハイペースで! がんばるよ!……いけるとこまでは。


 明日は章末閑話を上げて、あさってから第二章を投稿できると思います。


 それでは今後とも、本作をよろしくお願い致します!

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