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魔王の長女に転生したけど平和主義じゃダメですか?  作者: 初瀬ケイム
第一章 あーくでーもん
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第十話 娘さんに会いに行こう

 襲撃者の男は、エリノアによって口封じの呪術を施された。

 これで他人に今夜の件を伝えることは出来ないとのことだ。


 男は、これからは遠くの街に移って真っ当な仕事をすると言って屋敷を出て行った。

 ……最後までエリノアに熱い視線を送っていたことに、エリノアは気づいていないようだった。


「ふぅ。なんとか今回は無事に済みましたわね。でも、明日にはこの屋敷を離れた方がいいですわ。」


「……そうだな。」


「? どうしたんですの?」


「いや、ちと妙だと思ってな。」


 そう、妙だ。

 いろいろ辻褄が合わない。


 今夜の襲撃は、間違いなくテノン……というか、魔族復権推進派どもの仕掛けだ。


 それは俺らを迎え入れて、先代魔王のカリスマで人集めして、より強固な軍閥を築くためのモンだ。


 その方法が無理やりになったのはまだ理解できる。


 "力"ってヤツがどこまで出来るのか知らんが、『捕らえてしまえばどうとでもなる』ような"力"があるのかもしれん。


 "洗脳"、"催眠"、"肉体操作"、……もっと言えば"死者傀儡"さえ、可能性としては有り得る。


 でもじゃあ、なんでその大事な"対象の確保"の計画が……こんなに雑なんだ?


 訪問した日の夜?

 ……一番警戒されやすいタイミングじゃねぇか。


 しかも実行犯が雇われの人間一人?

 ……万が一取り逃がしたら、俺らに身を隠される恐れもあるのに?


「考えすぎじゃありませんこと? 魔族復権推進派といっても、そこまで考えて行動していないんじゃありません?」


 エリノアは否定する。

 だが俺には確信に近いものがあった。


「今日訪ねてきたテノン、アイツは間違いなく慎重な男だ。俺らを仲間に引き入れる為にした話だって、こっちの事情を考えて、生活のアフターフォローまできっちり提案してきた。こんな雑なやり方は、本来しないハズなんだ。」



 だとすると考えられるのは……焦ってんのか?


 なんか『すぐにでも確保しなければマズい!』って理由でもあんのか?

 人集めなんて長い時間がかかるのが当然だろーに。何を焦る?


 ……いや、


「目的は人集めじゃ……ないのか?」


 "俺ら"を手中に置きたい"理由"。


 ……それも雑な計画になってでも"すぐに確保したい理由"が……あるのか?


「……わからん。」


 どうも、今ある情報だけじゃ足りないみたいだ。


「エリノア。ちょっと聞くが、俺ら……つーか、"魔王の娘"について、何か特別な話って知ってる?」


「……? どういう意味ですの?」


 エリノアが首を傾げる。


「あー……俺も見当がつかんのだが、何か特別な"能力"とか"権利"とか……そんな感じ?」


 俺の言葉に、しかしエリノアはピンと来るものは無かったらしく、


「んー……ちょっとわかりませんわね。魔族は人間と違って個人能力主義ですから、いくら先代魔王さまのご息女でも特別な権利はありませんし。それに魔族の"力"も……確かに魔王さまの"力"は特別でしたけど……血縁だから類似の"力"が発現する、って話は聞かないですわね。」


 ……とのことだ。


 しかし……多分なんかある。

 魔族復権推進派どもが、焦ってでも欲しがるような"特別な何か"が。


「エリノア。質問を変えよう。"魔王の娘"について、お前以上に詳しい話を聞けるヤツっているか?」


「そんなの魔王さまくらいしか……あ!」


 エリノアは何か思いついたらしく、口に手を当てる。


「もしかしたら……"魔王軍の幹部"であれば、何かご存知だったかもしれませんわ!」


 なるほど、"魔王軍幹部"ね。


 ……ん?


「え? 魔王軍が敗北して魔王自身も死んだのに、幹部で生き残ってるヤツっていんの?」


「いえ。魔王軍幹部も全員、お亡くなりになりましたわ。」


 ダメじゃん! 話聞けないじゃん!


「ですが、魔王軍幹部には、お嬢さま方のように"ご息女さま"がいらっしゃったハズですわ。」


 なるほど!

 魔王軍幹部の娘なら、幹部から何らかの話を聞いてるかも知れないな。


「じゃあその娘さんに話を聞きに行ってみるか。……ってエリノア、居場所わかんのか?」


「戦後、皆さま従者と一緒に、散り散りになって人間領で暮らしてますわ。詳しい居場所はわかりませんが……」


 ただ、とエリノアは言葉を続ける。


「物質種の幹部、【オリハルコンゴーレム】さまのご息女さまが、この近くの街にいるらしいという噂は聞いてますわ。」


 お、おぅ……。

 【オリハルコンゴーレム】とかすげーパワーワードぶっ込んで来たな。


「じゃあ目的地はそこだな。明日の朝、出発しよう。」


「そうですわね。……どのみち、この屋敷にはもう居られそうにありませんし。」


 襲撃者の男には口封じの呪術を施した。

 だが報告がなければ襲撃の失敗はいずれ伝わるだろう。


 当然、再度襲撃される恐れはある。

 その前にさっさと移動した方がいい。


 アイリスとコロネには、家族旅行とでも伝えよう。


「出発は夜明け前だな。それまでに準備だ。」


「わかりましたわ。」


 俺たちは旅立ちに向けて準備を始めた。

 ふぅ。今日は徹夜だな……。


 俺は右手を握り、目を閉じる。

 そして再び目を開けると……


 俺の手には"缶コーヒー(ブラック)"が握られていた。


 俺はそれをグイッと飲み干す。


「さて、ちゃっちゃと準備しますか!」

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