土下座するマサシ
マサシは言った
「寺井さん、宜しくお願いします!」
寺井とはオレ(主人公)の名前である。マサシはオレの部下となったのである。しかもオレは頭だ。カシラと呼ぶべき自然な決まり事はどうなったんだ? カシラでもなく兄貴でもなく、しかも名簿名で呼んでしまうとは……
「おいマサシ! 何か勘違いしてないか?」
原の兄貴はドスの効いた声でマサシに言った
マサシは、はっとした。失言に気づいて
訂正しようとするものの
とき既に遅く、原の兄貴はマサシを白けた目で見つめていた。
マサシは幹部たちの前でドジをして冷や汗をかいている。マサシは寺井に土下座し、
「言い違えました。すいませんでした。カシラ!」
そんな表面的な言葉で上下関係に五月蝿い原の兄貴は納得しないだろう。ヤクザの世界は土下座は御法度だ。誠意を示す態度なら指の一本は差し出せる。土下座で済まそうとするのは謝罪の為に捧げる物がない、と言っているものである。何より土下座は男らしいない、。サラリーマンでもできるのだからヤクザは土下座を嫌う。
しかし、土下座は
滅多に見れるものでもないから、何故土下座がいけないのか理解できてないヤクザは多い。
マサシはきっと、これまでの人生で土下座を強要してきた側で、それはある意味、失敗を犯した経験がないエリートで、もしかしたら土下座するのは初めての経験なのかもしれない。
元来優秀であるならの、些細な失敗であるなら、これくらい多めに大目に見ても……