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007-冒険の準備をしよう


 『教練一、花のあるマレットカムを三株集めて提出せよ』

 『教練二、フビリイームを三体討伐し、首を取って提出せよ』

 『教練三、川岸で採れるトートリットを三個集めて提出せよ』


 固有名詞多すぎ問題。

 なんてこった、ここは難易度の高い異世界みたいだ。何故か日本と同じ草木が生えていたり、誰が編集しているのか不明な人類統一見解を鑑定スキルで読めるイージーワールドが羨ましい。

 あるかも判らない別世界を羨んでも仕方ない。クエストをこなす事を考えなければ。


「やー、情報収集も冒険者の仕事のウチよ? でも三つとも判んないって事は、遠くから来た人? ならしゃーない、ヒントをあげよう。マレットカムは紫色の花で、葉っぱがギザギザしている草。フビリイームは森に出る虫のモンスター。トートリットは緑色の石ね、正確には石じゃないんだけど」


 冒険者ギルド受付のおねーちゃんに泣きついた結果、ヒントが貰えた。ありがとうございます!

 マレットカムは紫色の花を探せばよし、トートリットは川岸で緑色の石を探せばよしで、問題はフビリイームなる虫型モンスターだ。具体的な姿が判らないので、こればかりは自分で情報収集しろって事なんだろう。


 受付から離れてギルドの外へ向かう途中、待合室の壁に地図が貼られているのに気付いた。椅子に座ると背を向ける形になるので、さっきは気付かなかったのだ。

 地図は街の周辺の……モンスター配置だ! 簡単なイラスト付きなので、どの辺にどんなモンスターが出るのか、翻訳機能を使わなくてもある程度把握出来る。もちろん文字情報も重要なので、スマホで撮影して保存した。

 地図によると、フビリイームはテッサの街(現在地)の北にある森に生息するムカデみたいな奴だ。イラストにはムカデの様な体に羽みたいなのが描かれている。ちょっとキモい。

 この森には、フビリイームの他に数種類のモンスターが生息している様子。おいおい初心者をこの森に入れるのかよブラックだな冒険者ギルド。


 モンスターの情報もゲット出来たので、ギルドを出て、宿を探すことにした。街に着いた時点で昼過ぎだったし。

 宿のランクはそこそこで……手持ちのコインは小銭と大公銀貨しかねーや。安宿だとまたトラブルになるかもしれん。大通り沿いの良さそうな宿を探そう。


 そんな訳で、冒険者ギルドからちょっと離れた所にあった宿に入りました。お一人様一泊食事付銀五枚。ちょっと高いが、良いんじゃないでしょうか。大公銀貨を見ても気にせず会計する所も良し。お部屋の方も、狭さに目を瞑れば問題なし。麦藁じゃなく、綿か何かを詰めたベッドでさらにポイントアップ。いやぁ、街に来て良かった。

 夕食はスティックパンみたいなのに肉野菜スープ、蒸かしイモっぽいものにバターらしき物と、名称不明だが味は問題無かった。料理や素材の名前を聞いても、きっと謎の固有名詞ばっかりなんだろうなぁ。


 一夜明けて、朝食のスープ(この辺りの料理、スープばっかりだな)をすすりながら今日の行動を考える。

 まずは、採取した素材を入れる袋が欲しい。特にムカデモドキ……フビリイームの頭を切って入れるので、耐水だったり使い捨てだったりの袋が複数要るだろう。冒険者が良く使う袋とか、店で売ってるんじゃないだろうか。

 水筒も複数持っていた方がいいかな。どうせスマホに入れるんだし。後は保存食に包帯、傷薬。魔法薬ポーションってあるんだろうか。これは要確認。

 うーむ、真面目に冒険者始めようとすると、結構金かかるな。


 部屋に戻り、改めて初心者用クエスト(の写真)を見る。

 やはり名前から対象物の推測が出来ないのがダメだな。固有名詞といえども、汎用的な単語の組み合わせはある筈なんだが、もうちょっとこう、何とかならんものか。


「固有名詞の翻訳、なんとかならないのか? トゲナシトゲトゲみたいのでもいいから」


 このスマホには音声入力ヘルプ機能が付いている。こうやって話し掛ければ、何らかの反応を出してくれるはずだ。でなければ独り言をしゃべる怪しい人だ。おっと、反応が来た。


 『完全翻訳には辞書内容が不足しています。

  会話を繰り返してサンプルを取得して下さい。』


 翻訳がへちょいのは、会話をしない俺が悪いらしい。

 そもそも翻訳用の辞書なんて誰が作ったんだ、と突っ込みたかったんだが、今更の話だな。

 だが固有名詞の問題は、会話を繰り返せば改善されるらしい? ので、気長に構えるしかないのか。


 ていうか、スマホの翻訳機能って会話も翻訳してるの?

 俺がしゃべった言葉、相手がしゃべった言葉、周囲の喧騒も、コイツが翻訳している?

 超機能なのは今更だけど、そんな超機能あるなら読み書きも直接翻訳してくれよ。


 『読み書き機能の解放はレベル5です。

  (現在のレベルは3です)』


「あるのかよ! てかレベル制限かよ!!」


 ◇


 宿から冒険者ギルドへと向かう途中に、冒険者御用達っぽい雑貨屋を見つけた。

 中を覗くと、よくわからない物が色々ある。いや、よく見れば用途が分かるのが半分ぐらいあるな。縄とか鍋とか。試験管のような物もある。あれ、今までガラス板あったっけ? 無いな。多分これが初ガラスだ。

 お目当ての袋……何種類かあるな。大きさも様々だ。

 迷ったら店員に聞こう。会話をしろって言われているしな!


「モンスターの素材なんかを入れる袋ありますかね?」

「それならコイツだな。血で汚れても洗えば落ちる」

「じゃあそれ二つと、これと、これ。水筒あります?」

「水筒はこっちだな。でかいのと小さいのがあるぞ」

「うーん、じゃあ両方。傷薬ってあります?」

「傷薬はウチにはねぇな。向こうの、ホラ、あの店が薬屋で、包帯なんかもあるぞ」

「そうですか。じゃあ、あとはこれと……」


 必要そうな物が目の前にあると、どうも選んでしまう。おかげで結構な量になってしまった。


「ちょっと多すぎたか」

「だなぁ。そのバッグじゃ小さ過ぎて入んねぇだろう。”魔法の小袋”は持ってないのか?」

「”魔法の小袋”?」


 翻訳されても判らない謎ワード来たよ。いや、このタイミングでこの言葉ならば、多分……


「何だ? 知らねぇのか? ほら、こんな小せぇのに物が沢山入る袋だよ」

「あー、ああ、アレですか」


 あるんだ、ソレ。スマホだけの機能じゃないのか。


「冒険者やるなら、一つぐらいは持っといた方がいいぞ。荷物多いからな」

「ははは……あいにく持ってないですねー」


 持っていれば、スマホの収納を誤魔化せるな。いや、似た袋さえあれば良いのか?


「ギルドの正面にある魔法屋に売ってるから、見ておいた方がいいぞ」

「そうですね、そうします。あ、じゃあちょっと買う量減らしますね」

「ったく、仕方ねぇな」


 ひとまず、初心者クエストクリアに必要な品だけ買って店を出る。

 次に教えてもらった薬屋へ行ってみたが、高い! 包帯一巻銀一枚とか、ポーション一瓶銀五十枚とか。ポーションはダメだ高すぎる。包帯と止血用軟膏だけ買って後にした。


 街の大通りを北に進む。準備は終わった。いよいよ本番だ。

 これから北門を通って街から出て、草原を街道沿いに北上し、森に入る。森に入ったら、奥に行かないようにして東へ進むと川がある。

 このルートで上手くいけばクエスト三種がクリアできるハズ。

 別に今日一日でクリアしなければならない訳じゃない。単に効率の良いルートを取ってみただけだ。無理はしない。無理はしないが、お金が減る一方なので稼げるようになりたい。


「よし、行くぞ」


 北門を潜り、街の外に出た。



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