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スルガニャン物語2  作者: サイコー君
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スルガニャン物語2(7)

  3 いざ、ベックオフ本社へ


 事務室には俺とスルガニャン、スルガニャル子さん、お辞儀君が集まった。

「うにゃー、貴殿野郎が単独でそんなことをしていたとは……」

「やったことは犯罪だけど、貴殿野郎はベックオフを崩壊させた。駿可屋のためを思ってね。貴殿野郎はまだベックオフ本社にいる可能性がある。そのまま警察に突き出されているかもしれないけどね。……どうする?」

「放っておいてもいいんじゃないかにゃる」とスルガニャル子さん。

「そうするのは簡単ですけど。でも……」

 俺がここへ来る前、おそらく駿可屋の買い物で世話になっていた。駿可屋の楽しい買い物の思い出は俺の宝だ。

 それに最後に言った彼の言葉が忘れられない。……俺、どうしたんだろう。スルガニャル子さんの言う通り、放っておけばいいじゃないか。そしたらベックオフも潰れたことだし、駿可屋に平穏が訪れる。でも、本当にそれで後悔しないのだろうか。

 貴殿野郎は駿可屋に携わるスルガイヤーだ。スルガイヤーだったらスルガイヤーを助けるのは当然のこと。やっぱり俺は貴殿野郎を放っておけない!

 それがスルガニャンやお辞儀君だったとしても、俺は同じ結論にたどり着くだろう。

「ねぇ、スルガニャン……」

「サイコー君。なにも言わなくていいにゃ。サイコー君の考えていることぐらい、おいらにはわかるにゃ。……行くにゃ、貴殿野郎を助けに」

「あぁっ!」

 というわけで俺たちはベックオフ本社に乗り込むことになった。

 メンバーは俺、スルガニャン、お辞儀君の三人。スルガニャル子さんは留守番。また俺たちがいない間に高級エステとか行くのだろうか。心配だ。

 俺たちは揃って外に出た。

「いってらっしゃいにゃる~」

 スルガニャル子さんはご機嫌だった。この様子ではおそらく行くだろう。猫のエステなんかに何十万円もかけやがって。

 タクシー会社に電話をしようとしたところ、一台の車がこちらに向かってやってくる。

 タクシーか? だったら都合がいい。でも、やってくるのは高級そうな車だ。外車だな、あれ。

 俺たちの前で車は止まった。助手席から出てくるのは金髪の青年。……由宇君だ。

 梨本由宇。スルガニャンとスルガニャル子さんの息子さん。

「由宇君っ!」

「――あ、サイコーさん。あれ? 皆してどうしたんですか? もしかしてぼくたちが帰ってくることに気づいていたとか?」

 運転席からは金髪の美女……塔子さんが出てきた。相変わらずFFTファイナルファンタジー・タクティクスのアグリアスに似ている。

「サイコーさん? それに父上と母上も……」

 そう言えばスルガニャル子さんはアメリカ人だった。猫の姿をしているから、そんなことすっかり忘れていたよ。

「君たち、どうしてこのタイミングで?」

 由宇君が答えた。

「サイコーさんのブログを見たからですよ。駿可屋がベックオフに勝負を仕掛けてるんですよね? だったらぼくたちもいたほうが有利かなぁって。今の時期、ぼくも姉さんも大学が休みなんですよ」

 そうだったのか。これは助かる! ただでさえ人が少なかったんだ。

 正直、スルガニャンとお辞儀君だけでは心細いと思っていた。この姉弟は即戦力になる。

「二人にお願いしたいことがあるんだ。それも早急に……聞いてくれるかい?」

「「もちろん!」」


 思いがけない助っ人に俺の胸は躍った。塔子さんは護身術をある程度心得ているらしいし、由宇君のコンピュータの知識はとても貴重だ。それに車もある。

「塔子さん、この車どうしたの? めちゃくちゃ高そうに見えるんだけど」

「この車か? 最近買ったものだ、FXで儲けたからな」

「君もFXやるの?」

「君も……とは? まさかサイコーさんも?」

「いや、違うんだけどね……。あー、でも負けてる人がいるってことは勝ってる人も確実にいるってわけね」

 これが才能というやつだよ、貴殿野郎。

 二人に事情を説明し、計五人(スルガニャン一匹含む)でベックオフ本社に向かうことになった。

「――ごめんね、本当は実家に戻ってゆっくりしたいところなのに」

「なにを言うんです。ぼくたち、駿可屋ファミリーじゃないですか。貴殿野郎さんが捕まっているんだったら助けに行く他ないですよ」

 いい奴だな、由宇君は……。

「しかし貴殿野郎がFXで三十億も損させるとは……ある意味、わたしより才能があるぞ、あの男」

 確かに。貴殿野郎の逆のトレードをすれば三十億儲かるってことだもんな。

「サイコーさん、ベックオフ本社に行くのはいいが、そこから先のことは考えているのか? そう簡単に建物の中に入れるとは思わないが」

 そうだ。それを考えないといけない。

 ウチの従業員がそちらで捕まっていると思うのですが、解放してもらえないでしょうか? ……んなこと言えるわけない。

「お引取りを」なんて言われるのがオチだ。

 だったら警察にウチの従業員が監禁されてます、なんて言ってみるか?

 それもまずい。最悪、俺たち全員が共犯で捕まってしまう。……ん? よく考えてみたらそうだよな。今回、俺たちに正義はどこにもないぞ。引き返すか?

「――サイコーさん。建物のセキュリティなら、ぼくが解除できますよ」

「由宇君……」

 マジでそういうのできるの? すっげー頼もしいんだけど、これ以上罪を重ねることにならないかなぁ?

 そうこう考えているうちに車は東京に着いた。

「あと二十分ほどでベックオフの本社に着く。皆、心の準備を」

 ここまで来たら腹をくくるしかないか。例えどんな手を使ってでも貴殿野郎を助ける! あとのことはあとで考えよう。

 ……もしかしたら破滅のパターンになるかも?


 ベックオフの本社に着いたとき、辺りはすっかり暗くなっていた。

 従業員は大方帰っているだろうから、残っているとしても数名だ。不法侵入するには絶好の機会!

 ん……? なんか思ってたよりずっと小さいな。もっと五十階建てのビルとか想像してたけど四階までしかない。

 辺りは住宅地っぽいし。真っ白な建物だった。

「塔子さん、ここ本当にあのベックオフの本社? 間違ってない?」

「ここが本社だ。わたしはナビ通りに車を動かした。不安ならネットで検索したらいい」

 別に塔子さんを疑うわけじゃなかったが念のために確認。……マジだ。この白い四階建が正真正銘ベックオフの本社。

 セキュリティなんて言葉が似合わない。よし、とりあえず普通に建物に入れないかやってみるか。

「皆は車の中でちょっと待ってて」

 入り口には警備員が一人、大股を開けて立っていた。

「あの、すいません。中に入ってもよろしいでしょうか?」

「ご用件はなんでしょう?」

「見学です。憧れのベックオフ本社の建物の中に一度入りたかったもので」

「……申し訳ありませんが、お引取りを願います。もう時間も遅いですし、また後日改めて来ていただけますか?」

 ダメだったか。予想通り断られてしまったな。車に戻って作戦を立てよう。

 すると、お辞儀君に妙案があるとのこと。彼お得意のお辞儀で中に入らせてもらう手だ。

 塔子さんの色気で迫る手も考えたが……まあこの際試してみるか。彼から発言することも珍しかったし。

 さて俺は車の中に戻り、今度はお辞儀君が警備員に近づいた。うまくやってくれよ。二人のやり取りはかろうじて聞き取ることができた。

「あ、あの……中に入らせてもらえませんか? ちょっとでいいんです」

「誰だ、アンタ? ……ダメダメ。悪いけど帰って。また明日にでも来て下さい」

「そんなこと言わず、ね? お願いしますからぁ」

 すごいスピードで頭を下げてる。さすがお辞儀君だ。しかし、その効果は薄そうだな。

 中年の警備員は首を縦に振ろうとしない。やはりここは塔子さんの色気でいくしか……。

「お願いしますよぉ、お願いしますったら!」

「ダメなものはダメですって! もう、しつこいなアンタ。いい加減にしてくれ!」

「お願い……しますっ!」

 ――ドガッ!

 ……ん?

 あ、あれ? 警備員が倒れた? なんで? え?

 一瞬の出来事だった。なにが起こったのかよくわからない。お辞儀君が警備員にお辞儀をして倒れた? ……ように見えたんだけど。

 お辞儀君はこっちに走って戻ってきた。警備員はまだ倒れたままだ。

「サイコーさん、中に入れますよ」

「お辞儀君? 君、なにをしたの? 警備員の人、倒れてるみたいだけど……?」

「お辞儀ですよ。……でも、ちょっと頭が相手に接触してしまいましたけどね」

 それ、世間では頭突きって言うから。

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