第3話 御告げ
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『聞こえるか?零斗』
何だこの声。それにこの謎の浮遊感は。
『聞こえているらしいな。大王様からこの力をお前に明け渡せと言われたのだがお前が欲しないものは受け取ってくれないのだ。お前はこの力が欲しいのか?』
この力?大王?ーー俺の中の鬼か?
『いかにも。お前と一度人生を共にした鬼だ。それで、力は欲しいのか?』
こいつが俺の中の鬼らしい。こいつのせいで死んだというのもあって少しムカツクが力がもらえるなら欲い。素の俺じゃあゴブリンにも勝てなさそうだしな。
『わかった。目が覚めたら力は全てお前にあるから使い方は注意してくれ。それとこの力はスキルにも影響するらしい。この世界のスキルのことは私にもわからないからそこは自分で何とかしてくれ』
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開けてある窓から差し込む朝日が煌めく。窓にはガラスはなく、観音開きの木の小さな扉が取り付けてある。ガラスはこの世界ではそこそこ高価なためガラス工業が盛んな土地か、高価な宿でないと付いていない。
「……っ」
差し込む朝日に顔を照らされ目を覚ますレイ。少し呆けてから何やらはっとして考え込む。
何なんだあの夢。俺の中の鬼だと?……力をくれるとは言っていたが一体……。展開が速すぎて何が何だったのか。
ベッドの上であぐらをかき手を握っては開く。
特に体には何も異変はない感じがするけど。ただの夢だったのかなぁ。まあ、因子の制御を訓練も無しに出来るなら儲けもんだと思っていたから別にいいけどさ……。ーーっあ!スキルだっけ?これも夢の中だけの存在かもしれないけど、異世界ならあり得るよな。えーと、確認するにはやっぱり占い師みたいなところに行かなきゃだめか?ゲームだとステータスのボタンをポチっとすれば出てくるんだろうけどなー。《ステータス》ねぇ?
ステータスと考えていると頭の中に直接的に入ってくる情報。情報に意識を向ける。そのままではただのデータでしかなく情報に意識することで知覚できる情報になる。
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氏名:レイ=トラギナ
年齢:15歳
種族:人間
魔力:500/500
スキル:
鬼人化Lv-
格闘術Lv1(1)
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「ちょっ、何?これ」
頭に現れる情報に混乱するレイ。
……これがステータスってやつか?いや~ステータス確認出来ちゃったよ。もう何でもアリだな。で、だ。魔力は多いのか少ないのかは分からないけど、まあ異世界だし持っていてもおかしくないな。おかしいのはスキルの鬼人化が問題だ。これにはレベル表示がないし、エルに相談するにしてもこれは言えないな。スキルとレベルに関してはエルに後で訊いてみるか。
「エルおはよう」
「おはようレイさん」
エルは食堂で先に朝食をしている。側には一本松葉杖が置いてある。
「なあ、スキルって何か分かるか?」
スクランブルエッグを挟んだパンを食べながら、当たり障りの無いように質問する。
「スキル……どういうこと?」
おや?手応えが無いな。もしかするとステータスは他の人には見えないのか?
「エルは何かスキルというか特技みたいなのあるか?」
ステータスという概念がない可能性があるため話を誤魔化し、スキルをただの能力に変換して話を進める。
「少し使えるのはナイフだけど戦闘で活躍出来るほどじゃないよ」
「ナイフか、良いな。俺も何か剣とか使えればなぁ」
「レイさんは素手でも強いじゃん!」
「あ、ああ。まぁそうだな……」
力を手に入れる夢を見たが体になにも変化がないので、今は力を持たないただの人でしかない。というのを気にしているためはっきりしない返事をするレイ。
朝食を済ませ、1度部屋に戻りスキルを再び確認する。
鬼人化は置いといて、格闘術はゴブリンの時とか素手で闘ったから手に入ったと考えれば良いのか?となると、このスキルは先天性ではなく後天性ってことだな。分からないのがレベルの横にある括弧内の数字で、何か意味があるんだろうけど想像がつかないな。
色々考えるがわからないことだらけであった。そして支度が終わり次第、初依頼を受けにギルドへ向かう。
昨日と同じようにギルドの開けっ放しのドアを通り依頼が貼り付けてある大きな板の前に着く。
「やっぱり、薬草採取が第一歩に相応しいな」
Fランクの依頼の中から薬草採取の依頼書を取り受付に持っていく。受付には昨日ギルドカード作成の時にお世話になった受付嬢が居たのでそこへいく。
「あ、レイ君。依頼受けに来たんだ」
「まあ、いつまでもエルに世話になってるのはどうかと思うんで。えーと。何か今日は随分とフランクですね」
「昨日は、ほら番兵さんと一緒にいたでしょ。冒険者と違って番兵さんには馴れ馴れしくするのは良くないかな?ってこと。あ、私ロレーヌ。よろしくね!」
「よ、よろしくお願いします」
ロレーヌのウィンクでたじろぐレイ。ちなみにロレーヌは美少女といった感じで、茶色の髪をポニーテールにしていて肌は褐色とまではいかない健康的な色をしている。
レイのような反応に少し満足したように微笑むと、依頼の手続きを始めるロレーヌ。
「クスラ草ね。ちなみにクスラ草はこれだから」
図鑑を開き指を指しながら説明するロレーヌに対し、レイは「ふむふむ。なるほど。」と聞いている。
「じゃあ気を付けてね!」
「い、行ってきます!」
またしても不意打ちのウィンクにしてやられるレイ。
ガーランの門を出て20分程経つとクスラ草が生えている林に着く。
おっ?これかクスラ草ってのは。案外簡単に見つかったな。納品しなきゃいけないのは10本だったよね。なら、あと3本か。
林に入って早々7本も見つけてしまうレイ。このクスラ草は1日かけて10本見付けるのなのでかなり運が良い。
最初に見つけてから2時間後10本見つけて終わる。やはり一発目がかなりの時間短縮になっていたようだ。
ちょうど昼か。ーーだああぁ!!飯忘れた……。金もないし仕方ないか。しかし、後半日余ってるのか何しようか。
昼飯の存在を完全に忘れていたレイはorz。実はこの時、ギルドに戻り報酬を受け取って昼飯を買えばいいだけである。
格闘術だっけ?あれの練習でもすっかなー。
少し右足を後ろに下げて、左手を前。右手を腰の辺りに持ってくる。膝を軽く曲げる。
「はっ!」
スパァァアン!!という何かが破裂したような音が鳴り響く。この音は拳をひねった回転力が腕に伝わり、着ている服の袖にも回転が伝わって、ひねりが終わったときに一瞬腕より回転が遅い袖が後から追い付き腕にぶつかり出た音である。つまり、このような音が出るということは尋常ならざるスピードあるということだ。
な、何だよ!少し集中して突いただけだぞ!ーーあ、もしかして?まさかの夢のことは本当だってことか?
ちなみにレイが集中したというが、この時レイは気を練り上げ体を強化していたのである。気は無尽蔵ではなくスタミナから引かれている。気の操作はある程度闘える者であれば使えるが、レイの気は普通の人間にはない鬼気というものである。
うしっ!決めた。ここで訓練しよう!ここなら頻繁に人が来る訳じゃないから丁度いいな。じゃあ、この木とか邪魔だな。ちゃっちゃっと片付けて訓練やろう。
おもむろに近くにある木に蹴り、次々と周辺がある程度開けるまで木を蹴り倒していくのであった。