上映作品‐1 "サイレントスニーカー" EX パンフレットという名の設定集 #2 キャラ編
前話と今話は設定集ですので、別段読み飛ばされても何の支障もございません。それでも興味を持たれたのなら、どうぞ見ていってくださいな。
#1の方でも書きましたが、本文に※(番号)とルビが振られている事柄については#1の方に解説が載っているので、できれば別ウィンドウで#1と#2を同時に見られたほうが良いかと思います。
>キャラクター編
※プロフィールの中にある"黒髪/ブラウン"は髪の色と目(虹彩)の色のことです。分かると思いますが、念のため。
あと文の上に※〇(〇内は数字)と付いてある項目については、もう一方の設定集に解説を載せてありますので、気になる方はそちらを見ていただけますようお願いします。
①チーム"サイレントスニーカー"
・特殊軍務チームのメンバーは、指揮官を除くほぼ全員が元犯罪者、といっても一般的な犯罪を犯した者達ではなく、軍命として行ってきたことが新体制では犯罪となり告発・逮捕された者や新体制への諜報活動あるいは直接的な破壊活動を行うなどの活動をしていた者、武力を用いて領民解放運動を行った者などで収監あるいは労役に就かされている者から兵士としての優れた技能とそれ以外の特殊な技能を併せ持ち、減刑と引き換えに集められた者達である。
基本的にメンバーとして選抜する際はまず兵士としての技能を見るが、まれに一般の犯罪者の中からも指揮官が求める能力を持っていた場合、そういった技能を度外視して特別に引き入れられることもある。
ユーゴー・ドラゴネスト(本名:竜ヶ峰 勇吾):29歳 身長185cm 体重80kg 黒髪/ブラウン
アルケリア王国特殊軍務チームの一つ、"サイレントスニーカー"のリーダー。
ドラゴネスト流斥候術宗家第15代頭首ミツヨシの息子で、15歳にして次代の頭首と目されるほどの技量を持っており、内戦前~中は軍の諜報・工作機関に属していた。
9年前、内戦時における作戦中に誤って起こした民間人の大量殺人の罪(実は作戦ミスではなく、謀略による濡れ衣)により逮捕、内戦終了まで王都監獄に収監される。
そして内戦後の裁判で国境付近の未開拓地での強制労働50年の刑を受けるが、後に設立される特殊軍務チームに入りそこでの功績により期間が減免されることになり、首輪付ではあるが一応の自由を得た。
その件で家からは勘当され、ドラゴネスト流では現在、まだ若いものの技量も指導者としての器量もあると言われている、ユーゴーの6歳下の弟ジュウロウを次代に推す声が上がっている。
しかしユーゴーとしては勘当された事について特に思うことはなく、むしろ要らぬしがらみから開放され自由になったと思うと同時に弟が次代の頭首候補になったことを喜んでもいる。
基本的に冷静沈着だが、芯に熱いものを持っていて皆を引っ張るリーダー気質。よく気の回る男だが、女心には鈍感。
だが少年期はどちらかというと考える前に体が動くというタイプだったため、修行中はその辺りを父であり師匠でもあるミツヨシに窘められていた。今でもその時代ほどではないが、考えるより早く突っ走ってしまう事がある。
あと大抵の事には鷹揚に構えて怒る事はあまりないが、横から食事を邪魔されることについては別。
もしそんなことをした場合、良くて不機嫌になるだけだが、最悪の場合烈火のごとく怒りだし相手を気絶するまで殴り倒す、こともあるらしい。
偵察・諜報・暗殺を司る術の家に生まれ育ったことと当人の素質と努力とも相まって、それぞれの技量は通常の斥候員をはるかに凌駕するものを持っている。
さらに一流の剣士とも互角以上に渡り合える程の剣技と、爆薬を用いた破壊工作の技術をも持つというまさにオールラウンダーである。
それ故に軍属であった時は、普通の斥候員ではまず潜入不可能と言われた場所へ単独で潜入し、任務を必ず成功させて生還してきた。
加えて任務達成目標以外に人的被害・器物損壊がほぼないことから、誰ともなく彼を"忍び寄る亡霊"と呼び、敵味方双方から恐れられた。
当人としてはこの二つ名で呼ばれることを非常に嫌がっているが、この名がある種の抑止力になればいいと思いあえて黙認している。
内戦後の軍内部で特殊軍務チームを作ることが決定された際、指揮官に任命された者達の一人である"大佐"が彼を自分のチームのリーダーにしようとしたが何度も断わった。しかし、任務成功による刑期の減免と兄の腕を監獄で腐らせたくないという弟の説得により、渋々ながら引き受け現在に至る。
趣味は体を動かすこと全般。
普段は体力維持もかねて日雇いの肉体労働(工事人夫のみならず、工員、鉱夫など)に勤しんでいるが、他に仕事が無いときは"ドラグネット"で用心棒の真似事をしている。
あと時折、ミツヨシに内緒で弟に道場に入れてもらい、ドラゴネスト流の鍛錬もしている(実はミツヨシもその事は知っているが、勘当した手前知らぬ振りをしている)
カーライル・ディーマスト:29歳 身長180cm 体重65kg ブロンド/ブルー
通称・カール。元薬事院・上席研究員でユーゴーの幼馴染でもあるチームのサブリーダー。
両親は2人とも薬事院の研究員だったが、カールが10歳のときに研究中の事故により他界。
その後就職するまでは父親の実家で祖父母と暮らすが、たまたまその家がドラゴネスト流の道場の隣にあることからユーゴーと知り合い、その事が縁でドラゴネスト道場に通うことになる(といっても、この当時は友達の家に遊びに行くという感覚で、修行というより遊びに近かったが……)。
しかし最初は遊びとはいえほぼ毎日通い続け、薬事院に就職した後も運動不足の解消と称して道場に通っていたため、研究職の人間にありがちな細身で白い顔という見た目に反して格闘能力は低くない。
薬事院の上席研究員だった7年前、軍から秘密裏に依頼された薬品の開発に参加していて、それが失敗に終わると機密保持のためか魔薬(麻薬や覚醒剤みたいな物と思って下され)取扱法違反の罪で逮捕・収監された。
しかし収監中でも体術の自己鍛錬は続けていてそれほど腕は落ちておらず、現在でも並みの兵士なら2・3人は苦も無くひねることができる。
チームにはユーゴーの推薦で加入、以降サブリーダーとしてユーゴー不在の時はチームの指揮を執る。
性格は温厚だが、元々が研究職な為か感情より理性が先に立つタイプ。
それ故かミーティングなどでは自分から意見を言う事は少なく、先に出された意見に対して補正案や折衷案を出すなどの調整役をすることが多い。
しかし自分が強く興味を感じたことだけは別で、それを解明あるいは達成するためになりふり構わない傾向にあり、ある程度納得できる成果が出るまで引こうとしない頑固な一面も持っている。
さらに生まれつき五感が鋭く、特に触覚・嗅覚・味覚に優れ、精度をあまり求めない調剤なら秤を使わずに調剤できる。
その感覚を利用した料理の腕も絶品で、特にスパイスを使った煮込みや炒め物が得意。
その腕前はたまたま彼の料理を食べたグルメの貴族にして、一般的な料理人の給料の10倍で雇ってもいいと言わしめたほど。
普段はパブ"ドラグネット"のバーテンダー兼シェフとして腕を振るっていて、その料理の味でもって客を引っ張り、路地裏にあるにもかかわらず店に客足は絶えない。
しかし、場所が場所だけに主に来るのはその辺りに巣くうゴロツキばかりで、一般の客はあまり来ないが……。
だがゴロツキと呼ばれる者達であっても、ここで飲食をして支払をせずに帰った者や暴力沙汰を起こした者は誰もおらず、一般人の客にも手を出さない。
というのも、ここで1回でも無銭飲食をしたり喧嘩などの騒ぎを起こすとその場で退場させられ(最悪の場合袋叩きにされて)、次に来た時は門前払い、というか自称ファンのゴロツキ(もしくはユーゴー)に問答無用に袋叩きにされ、2度とここへの出入りができなくなるからである。
ただ喧嘩に関しては仮に殴り合いになったとしてもカールが仲裁に入った時点で止まれば、その時の1回だけは見逃してもらえた(ただしその時に、器物損壊があればその分は弁償させられるが)
そのため、何をさて置いてもここの支払いだけは欠かさないし、騒いでも殴り合いには発展しない。
メイベル・レインフォール(本名:天音 美鈴):27歳 身長170cm 体重・BWH 教えてあげない♪ 黒髪/ヘーゼル
元はドラゴネスト流と並ぶ斥候術宗家、レインフォール家の長女。
頭首の父と師範の母、次期頭首候補の兄との4人で運営していたが、ある事件によりメイベル以外の3人が死亡、門弟にも多数の死傷者が出たためレインフォール流道場は閉鎖を余儀なくされる。
閉鎖後は培った技を用いて貴族の子女のボディガード(当時10代後半と若いので、一緒にいても護衛とは見られないことや歳が近いことで子女の信頼を得やすい)や、様々な場所に潜入しそこで情報を得てそれを売る、密偵か情報屋みたいなことをして生計を立てていた。
このチームに入ったのは別に犯罪者として捕らえられたからではなく、風の便りで内戦後に創設された軍の極秘チームの中にユーゴーがいると知ったため。
そしてチームに加入すべく自分の情報網を使って指揮官である"大佐"を捜し出し、半ば強引に自己をアピール、それが認められ彼のスカウトという形で加入できた。
故に彼女の首に"契約の首輪"は嵌められていないが、代わりに仲間と識別されるための呪術をかけたチョーカーを着けている。ただし、他のメンバーのような拘束具ではないので任意に着脱が可能。
見た目は理知的でちょっと冷たい感じだが、姉御肌で面倒見がいい。家事全般も得意で、特に東州(日本のような国と思って下され)風の料理ならカールよりも上手い。
意外と負けず嫌いなのか、誰かが技を披露するとそれが武技であれ料理であれ、自分も負けじと何か披露したがる癖がある。
家族の死に魔薬が絡んでいるため、そういった薬そのものやそれを不法に扱う者を憎んでいる。
以前密売業者を捕縛する任務に就いた際、業者や彼らの用心棒を必要以上に痛めつけ、そのうち何人かを生死の境にさまよわせたほど。
レインフォール流はドラゴネスト流や他の流派よりも斥候の技や生還率を上げる事に重きを置いた流派で、メイベルもそこで生まれ育ってきたためか斥候としての技量(気配を消す、無音侵入など)はユーゴーよりも上である。
格闘技能おいても打撃等の剛の技についてはユーゴーやロックハマーに及ばぬものの(打撃力は一般兵士の平均よりは上程度)、投げる、関節を極める、相手の攻撃を捌く等の柔の技では2人より上。
さらにこの流派は力を用いない技が多いことで、門下生は他の流派に比べると女性の比率が高く、一部の貴族の間では娘の花嫁修業の一環に奨励されていたことも。
また、打撃技より投げ技・関節技といった相手を押さえ込む技が多いため、警吏や護衛官が使う武術としても奨励されていた。
現在レインフォール流はもうないため、以前そこで免許皆伝を受けた者が道場を立ち上げ(流派名は興した者の名ではあるが)、そこで教えたり警吏庁舎へ指導員を派遣したりして何とかレインフォール流の技を守っている。
時間があればメイベルも道場に赴き、自己の技の確認をしたり特別講師として門下生にアドバイス等をしたりしている。
普段は王都の大手貿易会社にて経理事務として入っている。
裏の仕事があるときは仕事を長期で休むことがあるが、その休む前にはその期間分+αの仕事をきっちりこなしているため誰も文句は言えず、社員の間では経理部の"魔女"と呼ばれている。またいつそこまでの仕事をこなしているか誰も分からないため"幽霊女"とも呼ばれ、周りから恐れ、慕われている。
さらに一部の男性社員の間では、彼女が意図しない接触(セクハラか、それに近い行為)に成功した者が誰もいないため"触れえざる者"と呼ばれ、誰が最初に触れるか賭けの対象になっていたりもする。
あと、あまり会社の人間とは飲みに行かず、飲んでもそれほど飲まないため、殆どの上司や同僚達には飲んでも嗜む程度と思われている。
しかし実は"ザル"もしくは"ウワバミ"と言われるくらい飲め、その酒量は北方育ちで酒には強いロックハマーをも上回る。
過去何度か彼女を狙う同僚や上司が彼女を酔い潰そうと飲みに誘うが、どれだけ強い酒を飲ませても潰れないため逆に誘ったほうが潰れるケースが多々あった。
その場合、潰れた方が"女に潰された"ということを知られたくないため口を噤み、意外に彼女の酒の武勇伝は誰にも知られていない。
実は幼い時分に流派間の交流会でユーゴーと会っていて、それ以来彼を想っている。
それ故にユーゴーの事となるとかなり感情的になりやすく、他の事は理性的に処理できるためユーゴーに関する事についてはメンバーから陰で"残念美女"のレッテルを貼られている。
しかしユーゴーの方はメイベルと会った事をすっかり忘れている様で、現時点で彼女の事を信頼できる仲間としか思っていない。
ちなみにユーゴー以外のメンバーはメイベルの気持ちに気付いているため、機会があれば2人きりにしようとしている。
しかしそういうときに限っていつも何かしらの邪魔が入り、結局2人きりになることは今のところほぼ無かったりする。
ウォルガン・アーバレス・ロックハマー:32歳 身長190cm 体重100kg アッシュブロンド/グレー
アルケリア王国の北の国境線でもあるアルピナス山脈のふもとに住んでいる少数民族"ディグマブル族"の出身で族長の息子であり、自警団(というよりは戦士団)の団長を務めていた。
彼らは王国建国以前からそこに住み着いており、そのため王国に編入される際には集落における自治権を認めさせ、彼らの住んでいる辺り一帯を治めている領主も代々それに倣ってきた。
男性は鉱業や林業に携わるためか一様に筋肉質で体も大きく、女性もアルケリアの他の地方に比べると長身で骨も太い。そして男女共に北方にすむ者特有の白い肌を持ち、髪は大抵アッシュブロンドである。
普段はアルピナス山脈で採れる白光石や集落の周りに生えているシルバーチの木を伐採・加工したもの、山脈地帯に住む動物を狩りその皮や肉など売って生計を立てている。
しかし10年前に今の領主へ代替わりすると、突然彼らの住んでいる地域における自治権の撤廃を宣言し、属領とすべく兵を派遣してきた。
当初は族長が武力を使わずに自治権を回復させるため幾度となく領主と会談をしようとしたが、結局領主への反抗とみなされ投獄、失意の内に獄中で死亡する。
その事に怒った彼は自警団を率いて武力によって自治権の回復を認めさせようとしたが、結局は敗れて彼らは捕らえられてしまう。
そして領主に反抗した罪で処刑されかかったところ、たまたまこの地を訪れていた"大佐"の取り成しで処刑は免れ自警団は解放される。
実のところ"大佐"は王命によりここの領地の調査に来ていて、その中で領主がディグマブル族を支配下に置き彼らが受ける利益を搾取、それを裏金として中央へ入り込むことを画策していた事を掴む。
そして"大佐"がその証拠を持って領主と交渉(という脅し)、それにより自警団を解放させ彼らが自治権を取り戻す事ができた。
しかしリーダーであるロックハマーは次代族長ということで今回の騒動の責任を負い、王都にて重犯罪者用監獄における労役に就かせるという名目(実はディグマブル族に対する牽制あるいは反乱を抑える人質として)で王都へ連行されていった。その後、"大佐"が率いる特殊軍務チームの一員となる。
基本的に戦闘時は武器を持たず、素手か指関節を保護するグローブを付けて戦う。
一応武器類は剣から弓まで一通り扱えるのだが、先祖伝来の格闘術に誇りを持っているのと拳なら必殺と不殺の加減がしやすいため。
その先祖伝来の格闘術は一般に兵士が使うものに比べるとかなり特殊である。
"ツボ"と呼ばれる人体の急所を的確に突き、見た目以上のダメージを与えたり、関節部に打撃を与えて関節を外す、もしくは破壊すること等少ない打撃数で相手を制圧する事を主眼としている。
特に斥候としての訓練を受けたわけではないが、気配を消して忍び寄るという技術はユーゴーに匹敵する。
当人に言わせると、小さいときから山林にすむ動物を狩るため、それらに分からないように近づこうとしていたらいつのまにか身に付いていたとのこと。
普段は下街区で接骨院を開いている。
筋骨隆々で手足も岩のようにごつごつしているという見た目の割りに手先は器用で、単純骨折や脱臼などは簡単に治してしまう。
特にマッサージは見た目通りの力で的確にツボを突くため、最初は身体がバラバラになるような痛みを感じるが、その後痛みが引くと嘘のように快調になるとかで体を使って仕事をする者たち(人足や鍛冶師、警吏など)がよく来るので結構繁盛している。
長期の作戦が入るとその期間接骨院を休むことになるが、彼の施術じゃないと体の調子が戻らないといったリピーターが結構存在しているため、患者離れはほとんどないらしい。
実はロックハマーは妻帯者で、妻は現在族長代理として集落をまとめつつ彼の帰りを待っている。
ロックハマー曰く、美人で優しくしっかりした女性だが、本気で怒らせると拳と兵糧攻めの2段攻撃をしてくるため彼女に頭が上がらないとか。
アーガイル・ファルスター:24歳 身長178cm 体重65kg ブロンド/アンバー
王都下街区にある孤児院で育ったため、正確な出自は不明。満年齢も施設に預けられた日から加算されたものであり、誕生日についても預けられた日をそう決めているだけである。名字にしても便宜上、孤児院の院長の名字をつけていた。
彼を孤児院に預けた者の話によると、南の国境付近にある森の中で狩りの最中に見つけたらしい。
その森は人が入れないほどではないが、一応肉食の獣もいるため、中で狩りをする時は最低2,3人でパーティーを組んで入ることを推奨される程度の危険性があった。
そんな森の中で赤子が1人で、たとえ1日でも放置されて生きているのはまずありえない話なのだが、彼が発見されたとき身に着けている産着が多少汚れていたものの、それ以外に何の異常も見られなかった事に誰もが驚きを隠せなかった。
そのような不思議な出自を持つ子供ではあったが、動物が懐きやすいことを除き別に変わったところはなく、他の孤児院の子供たちと同じように育っていった。
そして彼が6歳の時に火事で孤児院が消失(放火か失火かは不明)し、生き残った数人の孤児とストリートチルドレンとなる。
しかし、さすがにその歳では望むような仕事ができないとして誰も雇ってくれなかったり、仕事があったとしても全員を食べさせられるほどの賃金は得られず、結局万引きや引ったくり等で何とか食いつないでいった。
10歳くらいの頃から身の軽さと器用さを利用して、自分と同じくらい動ける子供達2人と貴族や金持ちの家に窃盗を働くようになった。
アーガイルはこういう生活を続けてきたからか、天性のものなのかは分からないが危機を察知する能力が非常に高い。
その力は一見盗みに入りやすそうな屋敷でも近づくだけで罠が仕掛けられている事に気付いたり、逃げる際も必ず危険度が低い方へ行くことができるというもの。
そうやって何度も盗みに成功していた彼らだったが、ある金持ちの屋敷に盗みに入った折、仲間の一人の不注意で家人に見付かり、逃げるものの結局は捕らえられてしまう。
その後、屋敷の主の前に引き出されるが、彼はアーガイルらを見て何を思ったのか警吏には突き出さず屋敷で下働きとして雇い入れる。あと彼らを待っている子供達については、雇いはしなかったものの屋敷の主が出資している孤児院に入れることで生活できるようにした。
15歳のとき内戦が勃発、富裕層や貴族に不満を持っていた民衆により屋敷に焼き討ちをかけられ、それにより主夫妻とアーガイル以外の使用人全員が死亡した。
実は焼き討ちをかけられた時アーガイルは他の使用人と共に家を守ろうとするが、主にまだ幼児だった自分の一人娘をある場所まで送り届けるよう言い付けられ、彼は泣く泣く娘を連れて脱出する。
脱出の際にアーガイルは馬を使ったのだが、燃え盛る屋敷のすぐ脇を通ったにもかかわらず全然怯えず、追手を普通では考えられない速さで引き離して見事に逃げ果せた。
その事から自分と動物との相性の良さに気付き、主の娘のような理不尽にさらされた者達を逃がすべく裏稼業で"逃がし屋"を始める。ちなみに表の仕事は常時馬を引いていても怪しまれないよう、町から町へ小荷物や郵便物の配送をしていた。
そんなある日、アーガイルはいつも行く小荷物の集積所で"逃がし屋"の依頼を受ける。
ある貴族の奥方とその幼い子供をある場所まで逃がしてほしい、との事だった。
しかしその依頼はアーガイルを陥れるための罠で、彼が待ち合わせ場所まで行くと王国軍の兵に取り囲まれ逮捕される。
逮捕容疑はクーデター軍に通じていた、つまり逃がした者の中に敵のスパイがいたということらしい。
しかし実際のところは、アーガイルが以前に逃がした者の中に大物貴族が狙っていた女性がいたようで、彼が逃がして以降行方が分からなくなっていたため、彼を捕らえて居場所を吐かせるつもりだったとか。
結局、その大物貴族がクーデターにより失脚したため、その罪に関しては無罪とされた。
しかし自分の子女を逃がすことにより最後まで戦い続けた貴族が居るということで、内戦の長期化を支援した容疑により再逮捕されてしまう。
その後、1年ほど監獄に収監されていたが、彼の能力を欲した大佐によってチームにスカウトされ現在に至る。
兵士としての能力はそれほど高くはないが、少年時から建物に侵入しての窃盗を繰り返していたためか非常に身が軽く、鍵を開ける事ではメンバー随一の腕を持っていて、無音侵入の技能についてはメイベルに匹敵する。そして得意技の投げナイフは、5m以内ならほぼ百発百中の腕を持つ。
現在の表の職業は逮捕前と同じく配送業を営んでいる(逃し屋は現在休業中)。
評判は悪くないのだが、従業員が自分だけなので裏の仕事が入るとその間は休業せざるを得なくなり、中々軌道に乗せられないというのが目下の悩みである。
ちなみに彼だけではなく、任務達成の報酬は基本的に刑期の減免のため、任務に成功しても殆ど現金が入らない(メイベルを除く。あと、最低限の生活費は任務期間内外にかかわらず支給される)。
一応、任務期間中であれば通常の生活費以外に旅費等の必要経費として幾ばくか現金が支給されるが、余った分は返却しないといけないので結局は金が残らず、生活費も一人食べるだけが精一杯のため荷馬車の維持費やそれを引く馬の餌代にいつも四苦八苦している。
そのため任務が無い時の食生活は、大抵"ドラグネット"でカールかメイベル(自身に収入があるため時々自分から奢っている)にたかってしのいでいる。
"大佐"(本名不詳):60歳前後? 身長180cm 体重65kg シルバーグレイ/ブラウン
アルケリア王国特殊軍務チームの一つ、"サイレントスニーカー"の指揮官。
軍の中でも彼を知る者は多いが、本名・経歴を知る者は殆ど居らず、大抵の者は彼を内戦以前の階級である"大佐"と呼んでいる。
彫りの深い端正な顔立ちでスーツがよく似合うダンディな感じなのだが、自己抑制が強いのかその表情が動くところを見たものは誰も居らず、裏では"鉄仮面"や"王国の鋼鉄の猟犬"(一時期、王直属の監察官として地方を回っていたため)と呼ばれている。
普段は王国軍情報部の庁舎にある自分の部屋にいるため前に出ることは少なく、武術の腕は分からないが、下街区の裏に巣くうチンピラ程度では何人かかっても相手にならない模様。
実はユーゴーの父であるミツヨシとは古い友人で、たまに2人で下街区の居酒屋で飲んでいる。
それ故にユーゴーの事は幼少の頃から知っているが、ユーゴーは2人の関係を知らないため、彼の前では指揮官と兵士というスタンスは崩さない。
②アルケリア旧王族とその関係者
シャリア・ブルズアイ(本名:ヴァルシャリア・アーケイオス):29歳 身長 182cm 体重 78kg ブロンド/ブルー
元はアルケリア王国の王族(現王とは叔父・甥の関係)だったが、クーデターにより国を追われ現在は辺境にいる前王派の貴族に祖父(前王)・父親と共に匿われている。
少年期には偽名を名乗って(王族と知られて手加減されるのを嫌ったため)ドラゴネスト流の道場に通い、当時のユーゴーとは同い年で実力も伯仲していることから互いをライバルと認め合い切磋琢磨していた。
少し面長で線の細い端正な顔立ちをしていて、ぱっと見ではとても武術を習っているとは思えないほど細く、しかしその中は引き締まった筋肉が詰まっているといういわゆる細マッチョな体型をしている。
そんな容姿の為か15歳を過ぎた辺り(この国では15歳を過ぎると成年と扱われる)から、大物貴族や周辺国家の有力貴族の娘より婚姻希望者が殺到、その数は歴代の王族でも最多だろうといわれていた。
しかしその当時の彼には武術しか興味がなかったため、その手の事に何の興味も示さなかった。その分"戦う"ということにはのめり込みやすく、また強敵を前にするもしくはそういった者が相手になると分かったときには気持ちが昂ぶるのか言動や態度が荒くなる傾向がある。
荒くなるといっても"闘技祭"の辺りまでは貴族の子息から平民の子供くらいのものだったが、内戦後に再び表舞台に出てきたときは平民どころかならず者もかくやという位になっていた。
20歳のとき、王城における"闘技祭"でユーゴーを打ち負かす。
意気揚々と控え室に戻るが、汗を拭くために服を脱いだとき、身体に幾つかの打撃痕を発見する。
それを見て取ったシャリアは、もしかしてユーゴーに手加減されていたのではないかと疑惑を持ちすぐさまユーゴーに詰め寄るが、"手加減はしていない"やら"あれは何発か打ち込んだ後、最後の一発で決まる技だった"などと言われその場は収まった。
しかしその後、使用人たちの会話の中で自分の父親がユーゴーに手紙を出したことを聞き、彼らを問い詰めたところ、その内容が彼に試合で負ける事を依頼するものだったということを知る。
その事により同等以上と思っていたユーゴーから下に見られていたと思い、シャリアの胸に自分の人の見る目の無さからくる嘆きと悔しさと彼への怒りがない交ぜになって彼を憎み始める。
内戦の勃発時、シャリアは身分を隠し王国軍にいて、ユーゴー率いる斥候・工作チームのサブリーダーを務めていた。
そしてある夜間の作戦でユーゴーを罠に掛け、民間人の大量殺人という罪を着せ監獄送りにする。
その後内戦が旧王国軍の敗北で終わったことでクーデター側でない王族の大半は投降するが、王であるガリウス、第一王子であるゴルディアス及び王孫のシャリアは辺境に住む旧王国派の貴族の下へ落ち延びていった。
それからしばらく消息を絶っていたが、アイマン鉱山における鉱夫の行方不明事件において再び姿を現す事になる。
クライン・グランバトラー:70歳 身長 170cm 体重 70kg シルバーグレイ/アンバー
シャリアに仕えている老僕で、元はアーケイオス家の執事だった。
シャリアの母親である王太子妃が彼を生むとすぐに亡くなったため、幼い頃から彼の面倒を見ている(この国では15歳までは王太子妃が中心になって育てるのが慣例)
そのためかシャリアは彼を家の執事ではなく実の父や祖父よりも近い家族のように思っていて、彼もまたシャリアを孫のように思っている。
出自のはっきりしたところは分からないが、若い頃は武術家でもしていたのか非常に腕が立ち、シャリアの武術の基礎は彼によって仕込まれた。
普段は物静かでおおよそ怒鳴り声なぞ上げそうにない感じではあるが、シャリアに武術を教えるときは内側の激しさが表に出るのかその時の彼をシャリアはこう語る。
「いつもは誰よりも優しいんだけど武術を教えるときはすごく怖くて、東州にいると言われてる"鬼"ってもしかしてこんな感じなのかなって思ったよ」
そして内戦終結後に彼を含む全ての使用人は解雇されるが、彼だけはシャリアを守るためとしてアーケイオス家に残り、以後彼の忠実な老僕として付き従う。
ゴルディアス・"シルヴァリオ"・アーケイオス:54歳 身長 165cm 体重 70kg ブロンド/ブルー
アルケリア王国元第1王子でヴァルシャリアの父親、そして今回の鉱夫行方不明事件の首謀者とも目されている人物でもある。
アイマン鉱山の現在の所有者であるオラクル社の真のオーナーとも言われているが、現時点では噂の段階につき詳細は不明。
さらに、鉱山の元の所有者でユーゴーの叔父でもあるヒョウゴ・リュウガミネの死にも関わっているという話もあるが、既に20年以上の話でもあるので証言できる者も居らず、今のところその信憑性は低い。
現在は国境近くに領地を持つ旧王家派の貴族に匿われていて、表には姿を現さず何か計略を進めているようだが、息子であるシャリアにもその詳細は知らされていない。
ガリウス・"ゴールディ"・アーケイオス:75歳 身長 160cm 体重 58kg 白髪/ブルー
アルケリア王国前王でゴルディアスの父親、ヴァルシャリアの祖父。
クーデターにより王都を追われ、現在は国境近くに領地を持つ旧王家派の貴族に息子、孫と共に匿われている。
今回の事件にどのように関わっているかは不明。
ちなみに"ゴールディ"というのは王族の称号で即位した、もしくは在位中の王を指し、"シルヴァリオ"はその時点での第一王位継承者の意味を持つ。
ただし現在王国から追われる身であり、王族から彼らは追放されたということになっているため、称号は以前そういう立場の者であった事を示すのみである。
③その他
ミツヨシ・ドラゴネスト(本名:竜ヶ峰 七郎):58歳 身長 178cm 体重 73kg 黒髪/ブラウン
ドラゴネスト流斥候術宗家第15代頭首で、ユーゴーと彼の弟であるジュウロウの父親。
若かりしうちは斥候技の鍛錬より武術の鍛錬を好み(無論、程度の差であり、斥候技を疎かにしていたわけではないが)、その腕は歴代頭首の中でも最強といわれている。
それゆえか軍属であった時は、斥候よりも前線で戦うことを望み歩兵部隊に所属していたが、斥候員としても相当の技量を持っていたためにそちらの任務もさせられていた。
現在は頭首を引き継いだため第一線からは退き、道場で門人を鍛える日々を送っている。
しかし武の腕はまだまだ健在で、息子2人を同時に相手にしても一歩も引けを取らない。
9年前の事件によりユーゴーを勘当し弟のジュウロウを次期頭首に推してはいるが、彼を嫌っているわけではなくむしろ心配していて、時々彼のチームの指揮官で古い友人でもある"大佐"から彼の様子を聞いている。
ジュウロウ・ドラゴネスト(本名:竜ヶ峰 宗春):23歳 身長 182cm 体重 73kg 栗毛/ヘーゼル
ユーゴーの6歳下の弟で、現時点でのドラゴネスト流斥候術次期頭首候補でもある。
性格は温厚で人当たりも良くいつもニコニコしているためか門人の受けもよく、ユーゴーが勘当される前でも彼を次期頭首に推す声が結構あった。
体つきはユーゴーに比べると色も白く身体つきもヒョロッとした感じで優男に見えるが、その体は十分に鍛えられており斥候員としての技量は彼に匹敵する。しかし武術に関しては、ユーゴーに一歩譲る(一般の斥候員と比較した場合、かなり上ではあるが)
あとユーゴーとは違い、体を動かすより読書や学問を嗜む方が好みで、基本的に何かするにしても考えてから動く。
それ故か掛かる問題を"力"ではなく"知"で解決しようとする傾向があり、1対1の試合ではユーゴーに勝てないが多対多で行う模擬戦のような知略を用いる試合ではジュウロウの方が強い。
次期頭首の話については、元々ユーゴーを頭首にして自分は彼のサポートに回ることを考えていたため自分が頭首になる気は全くなかった。
しかし現在、ユーゴーが勘当され自分にそのお鉢が回ってきたため、本当に自分がなってもいいものかと当惑している。
ローガン・(カンテツ)・ペネトロック :62歳 身長 198cm 体重 90kg 栗毛/ブラウン
アルケリア西方の国境に近い村の出身で、幼い頃より村に伝わる武術を嗜んできた。
20歳になったとき自分の腕を試すために王都へ出向きドラゴネスト流の門を叩くが、当時16歳ですでに師範代だったミツヨシに叩きのめされ、以降ドラゴネスト流に入門する。
元々鍛えられてきた体に類まれなる向上心を持って腕をめきめきと上げ、遂にはドラゴネスト流の道場で体術や棒術などの"表"の技を教える師範代にまでになっていた。
それからしばらくは師範代として門人を鍛えていたが、ひょんなことからミツヨシの弟でアイマン鉱山の前オーナーでもあるヒョウゴ・リュウガミネと意気投合、後進となるものを育てた後道場を辞してアイマン鉱山へ赴き彼を手伝っていた。
その後、ヒョウゴが死亡(死因については未だに事故が事件かはっきりしない)し鉱山はオラクル社に買収されるが、ペネトロックは鉱夫として鉱山に残り現在に至る。
"カンテツ"の名は彼がまだ師範代でなかった時、貫手(拳法の技で拳ではなく指先で相手を突く技)で厚さ10セラ(cm)もある木の板を貫いた事からミツヨシに付けられた。
ちなみにこの名は東州の文字で書くと"貫徹"となり、貫き通すものという意味があるらしい。
ヒョウゴ・リュウガミネ(本名:竜ヶ峰 厳長):享年 36歳 身長・体重 すでに鬼籍に入っているため計測不能
ユーゴーの父であるミツヨシの1歳下の弟で、アイマン鉱山を開いた人物。
ミツヨシと同じドラゴネスト流の宗家に生まれたが、ミツヨシと違い斥候員としての資質はあまり無く、一応鍛錬はするものの能力が伸びず兄との差が格段に開いていった。
実のところヒョウゴは武技よりも学問の方に興味があり、中でも鉱物学を好んで鍛錬の暇を見つけてはそこかしこで石を拾ってきて、図鑑で石の素性を確認していた。
その後ミツヨシが20歳で後継者扱いとなったことで、自分は好きなことをすべく家を出て一人暮らししつつ鉱物学を勉強した。
それから鉱物学のフィールドワークと元からの趣味で国中の山を歩くあるいは登り、ついにはアイマンにて鉄貫石の鉱脈を見つけるに至る。
鉱山を開いてからペネトロックの力も借りて鉱山を切り盛りしていたが、経営が軌道に乗るにつれ信頼できる部下に経営の中心を移行させ自分は趣味の山登りを再開した。
そしてアルケリア北方の国境線に当たる山脈を登山中に落石事故で死亡、享年36歳だった。
彼が亡くなった後、アイマン鉱山は数々の鉱山を持つ企業であるオラクル社に買収されたが、彼の事故は今でも事故か事件かはっきりしない点があり、もし事件であった場合オラクル社が裏にいるのではといわれている。
彼が"ドラゴネスト"ではなく本来の氏である"リュウガミネ"を名乗っている点について。
ドラゴネスト流は長男であるミツヨシが後を継ぐため、次男である彼はドラゴネスト流に関わらない限りどちらを名乗っても構わないという頭首の言葉によりリュウガミネを名乗ることにした。
※彼らが本名と通名を持つ詳しい理由については、設定集1に斥候術の項で書いてあるので、そちらを参照のこと。
ジェームズ・マインスミス :45歳 身長 180cm 体重78kg 赤毛/グリーン
第1種精錬技師の肩書きを持ち、アイマンの鉱山には鉄貫石の純度を更に上げるために呼ばれたはずが鉱山を裏で仕切る者たちに捕らえられ、ある建物の地下で非合法に魔鉱石の純度を上げる実験をさせられる羽目に陥る。
地下へ押し込められた当初は渋々だったが、結果さえ出すことができればほぼ自由にやらせてもらえたため、最近では嬉々として実験を行っている。
そしていずれはここでの実験結果を世に役立てるために解放しようと密かに目論み、それまでの実験結果を別の手帳に謄写した。
その後カール達がマインスミスを救出に向かったが、既に彼は別の場所へ連れ去られた後であり、彼らの手にはマインスミスが隠しておいた手帳と彼らへの手紙が残った。
エレナ・マインスミス :19歳 身長 156cm 体重・BWH 不明(恥ずかしがって教えてくれなかった) 赤毛/グリーン
ジェームズ・マインスミスの娘で、普段は王都の下街区にある診療所で看護師をしている。
ある日アイマン鉱山から、そちらに赴任している父親が倒れたとの手紙をもらい急ぎアイマンへと出立するが、その道中で彼女はならず者たちに襲われる。
しかしその場は、偶然そこに通りかかったユーゴーによって事なきを得た。
そしてアイマンに到着後に鉱山事務所で話を聞くが、父親が2週間ほど前から行方不明になっていることを知る。
それから数日後自分の手では探しきれないと悟ったエレナは、"鉄龍亭"にナナシ(ここでのユーゴーの偽名)を訪ねるが彼も父親の情報を全く持っておらず落胆する。
しかし彼女の話を聞いた"鉄龍亭"の主人であるステイから、この宿に滞在するよう説得されたのを切っ掛けに父親や鉱夫の失踪事件、そしてチーム"サイレントスニーカー"に関わっていくことになる。
ステイマン・オーバーナイト :66歳 身長 178cm 体重 65kg シルバーグレイ/ブラウン
通称、ステイ。アイマンの町にある宿泊施設"鉄龍亭"の主人。
物腰も穏やかで落ち着いた感じの風体であるが、時折現役の頃のような鋭い目つきをしてしまうことがあり町の人々にはヤバイとこの出身("ヤ"とか"マ"とかの自由業)だと思われていた。
しかし偶々町の人が彼に相談を持ち掛けた際の回答がえらく的確だったため、いつの間にかアイマンの町の相談役としてのポジションを確立していた。
若かりし頃は諜報員として、近隣諸国を調査して回っていた。
ユーゴーの父であるミツヨシとはそのころからの付き合いで、双方が現場から退いた後も付き合いが続いている。
さらにアイマンの鉱山のオーナーがミツヨシの弟であるヒョウゴであったため彼とも知り合いになり、ミツヨシがそこにユーゴーを修行させるために連れて行った時は常宿として"鉄龍亭"を利用していた。
"鉄龍亭"はアルケリア王国が他国への諜報活動の拠点として建てられたものの一つで、王都へ直接通信できる通信施設があったり、保護対象者を匿うための隠し部屋がある。
ここの主人は代々引退した諜報員が務めており、従業員も王都から派遣された諜報員のみだった。
しかし最近では隣接する国との関係が良くなってきたことで四六時中監視する必要もなくなり、常駐する諜報員を他の地域に派遣して、代わりに現地の住民を雇用するようになっていった。
余談だが"斥候員"と"諜報員"は、どちらも相手の情報を得るのが目的という職種である。
しかし"諜報員"は"斥候員"と違いあまり戦場に出ることはなく、その分武力については比ぶべくもないが情報収集・分析能力、人に紛れて存在を目立たなくする能力においては上だといわれている。
アラン・スティックス :28歳 身長 175cm 体重 70kg ブロンド/ブルー
クライド王国軍・作戦立案部・特殊調査室に所属しており、普段からクライド内外を飛び回って国内における反乱等の火種や国をまたいだ犯罪など警吏では対応しきれない案件を調査している。
見た目や普段の行動は軽薄な感じでよく作戦立案部や他の部署の女性職員を食事やらデートに誘ってはいるが、意外に真面目で熱血漢なところがありそこがうけているのか評判はそれほど悪くない。
家族は病弱な母親が一人いるだけで、特殊捜査室に程近いアパートにて二人で暮らしている。
少年期は貧民外で育ったためか非常に喧嘩っ早く、自分と似たような者に難癖を付けて付けられていつも喧嘩ばかりしていた。
そのため周りもギャング予備軍とか彼をそのような目でしか見ず、ますます喧嘩に明け暮れさらには窃盗などの犯罪にも手を出し、果てには自分と同じよう連中を引き連れ本当にストリートギャングになっていった。
そんな荒れた暮らしを送るアランにも転機が訪れる。
アラン達が闊歩する街に一人の老人が現れる。
その老人は腰も曲がっていて身体も枯れ木のように細く見え、自分の身長と同じくらいの木の棒を杖代わりによたよたと歩いていた。
どんな用があるかは分からないが、老人が一人で歩くにはここは非常に危険な街だった。
やはりというか老人を見つけたアラン達が強盗目的で取り囲む。
しかし彼らが老人に脅し文句を言った瞬間、その場で爆発でもおきたかのようにアラン以外の全員が吹き飛んだ。
何が起きたか分からなかったアランだったが、これまで力でのし上がってきた彼にとってここで引くことは許されず老人に向かっていく。
しかしいくら街の不良達を力で纏め上げたとはいえ、一瞬で十数人を撥ね飛ばす者には勝てるはずもなくあと一歩で殺されるところまで追い詰められた。
ところがその老人はアランを追い詰めた時、彼の目に死の恐怖が表れているのを見て取り"若いの、突っ張るのも自由だが、親を悲しませる真似はするなよ"と言って去っていった。
その瞬間アランの脳裏に母の姿が浮かび、その日以降ストリートギャングを解散し老人に師事を乞う事になる。
老人はウィロー流棒術という武術の達人で、この街には古い友人に会いに来たらしい。
最初は自分は浪々の身だから教える事はできないと断るが、彼が訪ねた友人の口ぞえというかアランに教える間の住居を提供するという事で仕方なしに引き受けた。
結局老人は10年間アランを教えることになり、アランもまた彼の教えを身に刻み付け、彼に負けず劣らずの実力を持つに至る。
老人から教えを受け始めて数年後、修行の途中ではあったがアランは糧を得るために仕方なく軍に入る。
ある時、軍での野外訓練中の休憩時間に、同僚が習っている流派や老人を貶める発言をしたため彼が怒り、近くにあった岩に突きを繰り出して1m以上もある厚さもものともせず貫き破壊した。
それ以降その同僚は彼に対して何の文句も言わなくなり、他の周りの者も彼を"全てを貫く者"という二つ名で呼ぶようになった。
それにより"棒を持っていれば無双だが"と嫌味を言われることもあるが、実は素手の体術でもそこいらの兵士では束になってもかなわない腕を持っている。
しかし彼はそれを非常手段と考えているため、人前で徒手格闘の腕は殆ど見せない。
仮に誰かと喧嘩になった場合でも、最後まで追い詰められない限り棒も格闘術も使わない。
余談として、その後師匠である老人はその友人の家に住み着き、軍の仕事で家にあまりいないアランに代わり何くれとなくアランの母親の面倒を見ている。
というのも、老人が家族を持っていたときに娘が若くして亡くなっており、生きていればアランの母親と同じくらいの歳だというので何となく娘を見ている気がするかららしい。
あと気配を消す事や相手の認識を外す技術を高レベルで持っており、例え目の前にいても存在を認識できないことから"見えざる男"ともいわれていて、潜入捜査もよくやらされているが当人しては強行突入などの前面で戦う任務の方が好み。
バンゴとは特殊調査室に配属になって以来の腐れ縁で、よくコンビで任務に当たるが潜入捜査のはずが敵味方入り乱れての大捕物になったりと結果的に任務を達成するものの問題も多い。
バーンハード・ゴーラム :28歳 身長 201cm 体重 110kg ブルネット/グレー
通称・バンゴ。アランと同じ部署に所属しており、よく彼とコンビを組んでいる。
厳つい風貌と筋骨隆々な体躯なため周りからは"脳筋"と思われているが、素の当人は至って物静かで余程のことがなければ怒りをあらわにせず趣味は読書と観劇で、この風貌・体格でなければ文学青年で通ったのでないかと周りの者達に思われている。
クライド軍高官の家に生まれ、幼少の時分より同年代の子より大きい体格をしていたためか、軍人になるべく日夜父親の施す特訓に励み身体を鍛えていた。
しかし15歳の時、たまたま家族と見た巡業劇団の喜劇に衝撃を受け、それまで決まっていた軍士官への道を蹴り喜劇役者に弟子入りしようとした。
それはさすがに家族に反対されたが、彼は手荷物一つで家出し巡業劇団に身を寄せる。
それから2年後に両親が巡業先を突き止め、強引に連れ帰ろうとした。
しかしバンゴは頑強に拒みこのまま役者の道に進もうとするが、師匠である喜劇役者から諭され渋々親と帰郷する。
その後、その巡業劇団がクライドに来ることはなく、また彼らを追う術を持たなかったバンゴは仕方なくまた軍人への道を進み始める。
それから嫌々軍人をしていただけに日頃からストレスが溜まっていたバンゴは、何かと難癖をつけては同僚や下の者を暴行するなど当り散らし、中にはその時の怪我が元で軍を辞めた者も発生する事態となってしまっていた。
次第に軍ではバンゴがこのままの状態なら、高官の息子とはいえ素行不良で退役させた方がいいんじゃないかという意見が出始めていた。
その事に頭を抱えた父親は友人でもある特殊調査室の室長に相談したところ、自分の部署で預かろうという事になり彼は特殊調査室へ転属することになる。
そこで相棒となるアランと出会うが、会った当初は片や"金持ちのボンボン"、片や"貧民外のネズミ"と罵り合いからの殴り合いをしょっちゅうしていた(さすがにバンゴ相手では分が悪かったのか、棒は使わなかったが格闘術は使っていた)
しかし何度もぶつかり合う内に何か共感できることでもあったのか、いつの間にか親友兼ライバルといった関係になっていき、以降は大概の任務でコンビを組むようになった。
バンゴは2年間の劇団での生活で演技について厳しく鍛えられたらしく、物静かな学者や粗野なゴロツキ、果ては道化師などさざまなキャラクターを演じ分け、その腕はその場で色々な役をやらせてみても同じ人間が演じていると思えないほどのものだった。
そのためアランの様な気配を消すといった事はその巨躯もあってうまくできないが、その培った演技で調査対象になる人や会社、さらに裏組織など大抵の組織にすんなり入り込むことができる。
最近では上記の事件や実績の評価、それに鍛え上げられた巌のような体躯と岩をも砕くほどの力とがあいまって"破壊の道化師"という二つ名で呼ばれている。
実は"破壊の道化師"という二つ名には、もう一つというか裏の意味がある。
普段は怒ってもきちんと表情に出るのだが、怒りに我を忘れた時バンゴの顔から表情が消え眼前にある全てのもの(人・物にかかわらず)を破壊しつくすまで止まらないという悪癖を持っている。
その際彼の顔に表情は出ていないものの、唇の端が微笑しているように軽く上がり、まるで泣いている演技をしているのに笑っているように見える道化師みたいだ、と誰かが言ったことからその名が付いたともいわれている。
ただし当人としてはこの名に、以前の荒れていた時や怒りに我をを忘れて暴れた後の自分を思い出してしまうようで、この二つ名で呼ばれる事をあまりよく思っていない。
あと意外にいたずら好きな面も持っていて、チャラそうな外見だが真面目なアランを時々弄って遊んでいたりもする。
上映作品-1 "サイレントスニーカー"はこれにて終了となります。
読んでいただいた皆様、本当にありがとうございました。
2017/ 6/20 カールの項に文言を追加。
2017/ 7/13 メイベルの項を一部修正。
2018/ 3/20 バンゴの項の誤字を修正。
2018/12/ 6 アランの設定を一部変更。