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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

男が18禁BLを書いたら(フィクションコメディ)

作者: 地海月

BL表現はありません。BLを書いた男の喜劇です。

「俺、頑張ったよな。もう、ゴールしてもいいよな」

男が床に手をつき、膝をついて燃え尽きている

「おー。頑張ったね。えらいえらい。」

女がしゃがんで男の頭をいい子いい子してる


どうしてこの光景が生まれたか。始まりから語るとしよう。



数日前、喫茶店にて


「ショタ小説が欲しいとな。」

男は友人と会っていた。不器用かつ人見知り気味の男にとっては唯一の親友である。


「そうそう。お兄さん×ショタとかいいよね。あどけないショタがお兄さんに堕ちるのとか、妄想するだけでご飯がおいしい。」

ただ、雰囲気も容姿も凛々しく、美形であるのだが、中身が少し残念であった。無類の創作物のショタ好きなのである。

普段頼れる男なのに、この部分だけ子供っぽい。それが彼の魅力なのかもしれないが。


「何故。俺にいうんだ。お前は。」

男はネットで小説を書いて投稿する趣味があった。そのことを友人である彼も知っているのである。

主に書くのは恋愛ものや童話。性別非公開なのでたまに女性が書いてるのだと読者に思われる。

純愛ほんわか大好き。でも悲しい描写にそれなりに定評がある。そんな物書きである。


「だって、前プロットだけつくって死蔵してるっていってたし。俺お前の小説の雰囲気好きだし」

彼が慕われるのはこういうところからだろうか。本心であるから性質が悪いのである。

天然人誑し。そう評されることもあったと、男は記憶している。


「ぬう……頑張っては見るが、期待するな」

とりあえず男は書いてだけは見ることにした。友人には多々世話になってるのである。

滅多にない友人への恩返しの機会だ。少しくらい精神的にまいることになろうとも、一作仕上げようと決意した。


「期待してるから!」

彼はそういって男と別れた。いい笑顔だった。


次の日。興奮した友人に呼び出された、同じ喫茶店にて。


昨日のうちに書き上げ、男はネット上に投稿した。

結果、男は友人からの電話で叩き起こされ、喫茶店に来ていた。



「ショタおいしいです。」

そして、現れた友人の最初の一言がこれである。


「もう一つ書いてほしいんだけど。ショタ視点が読みたい。」

いろいろ語った後、彼は真顔でこう言った。真剣そのものである。普段の5割増しくらいのオーラが漂っていた。


「もう一つ書けともうすか。俺に。お前は。」

男は精神的に疲れていた。

ネットでそういう道の人の体験談や、やる時の方法などを調べながら半日かけて書いたのである。

その気のある人に理解はあれど、本人にその気は一切ない。

しかもどちらかというと乙女よりの感性を持つ男である。

初めて書くジャンルだったから、楽しかったとはいえ、精神的にはいろいろ複雑なのである。


「このショタかわいいもん。ショタ視点読みたい。」

キラキラと眼が輝いてる。期待の眼である。


「……はあ。いいさ、いいさ、書いてやろうじゃないか。」

焼けである。テンションおかしくなってるのである。

期待されたら書かずには居られない物書きの性であろうか。

喜ばれたのもあって、男はもう一つ書く覚悟を決めた。


その後は他の雑談をしてから男と友人は別れた。


また次の日。友人の家


疲れた男は、書き上げて投稿したことを電話で伝えた。

そうしたら家に来て欲しいと言われたので、トボトボと訪れた。

インターホンを押し、昨日よりいい笑顔の友人が出てきた時点で嫌な予感が男によぎった。

しかし、お礼がしたいという友人の好意を無碍にするのは嫌であった男は、諦めて中に上がった。


「ブラボー!マーベラス!ハラショー!トレビア~ン!」

男の友人は踊る。普段の凛々しい姿はどことやら。愉しそうである。

「これはイイ。凄くイイよ。愉悦愉悦。あはははは。」

まさに美形が台無しというのであろうか、キャラが完全に崩壊してた。

喜びが吹っ切れたようである。


「ああ、うん。満足してくれたならいいさ。うん。」

男はそれ以上考えるのをやめた。

付き合いきれない部分は放置する。彼としばらくつるんで、悟ったことである。

精神的に疲れてたものあり、男は早々に付き合うのをやめた。

一作目と違い、スラスラ書けたのが空恐ろしかったのもある。かけた時間は一作目の半分くらいであった。


「俺、帰るわ。寝むい。」

男は出されたお茶と茶菓子を早々に食べ終え、そう言って帰ろうとした。

友人が喜んでいるから、頑張ったかいはあったと思えたが、やはり内心は複雑である。

精神的に疲れたし、不貞寝したかった。夢見が悪かろうと関係ない。俺は寝ると思ってたのである。

多分頭はそう回っていなかったであろう。


「ありがとな。これはいい小説だわ。」

別れ際に彼はそう言った。とりあえず男は左手を上げて応えた。別にいいさと己に言い聞かせたかったと男は後に語る。


現在。男の家


そこには、恋人に慰められている男の姿があった。

冒頭の光景である。


「いいじゃないの、私も読んだけど面白かったわよ。」

「男の人って、ああいう風に書くのね。参考になったわ」

女が男に止めを刺した。

そして男は、吹っ切れた。ああ、もういいや。18禁のBLも書ける物書きで。と


後に男はそのことをネタにして一本の小説を書いた。男初のコメディ小説だった。




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― 新着の感想 ―
[一言] 女性目線のBL作品はどうしても美化され過ぎなものが多い中。男性目線だとリアルになりますね。 ただ下品にならないのは作者の筆力ではないかと思いました。
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