第一話 旅立ち
第一話
『旅立ち』
―自分を探す。
全ての意味を理解しないまま、エレンは旅立ちの日を明日に控えた。
『世界』のことを村の長には話してならないと言われたが、旅立つ前に、親友であるジンには話そうと思った。
「……お前は明日、旅立たないといけないのか。」
「ああ」
二人は夕日の見える丘に腰かけた。ジンは少し考えて、ブラウンの髪に触れる。
「たった1人で探すなんて……不可能に近いな。」
風が、二人の腰かける丘を駆け抜けていく。
「でも、俺は旅立ちたい。限りない世界に、完成された世界に。」
エレンがそう言うと、ジンは笑った。ジンはエレンの最大の理解者であり、唯一無二の親友である。
「…多分俺もお前と同じ答えを選ぶだろうな。可能性に挑むのが男だ。」
2ヶ月後、ジンも旅立ちの日を迎えるであろう。二人は決して諦めないことを誓った。ひどくありがちで、簡単にして、とても複雑な約束を……。
翌朝
「………エレン、これ、少ししかないけれど、旅に役立てて。」
母親はお金の入った袋をエレンに渡す。向こうの世界の通貨は同じかわからない、しかし、エレンは受けとることにした。何故なら彼には……断る言葉が見つからなかったからだ。
エレンは黙って、村の門の前へ行き、見上げる。未だ見たことのない村の外へ足を踏み入れるのだ。村の人々はエレンの旅立ちを笑顔で見送る。
「……自分に正直に生きるんだ。」
村長がエレンに語りかけ、肩を叩く。
その暖かい手は、エレンの気持ちを後押しした。
「村のみんな………行ってきます!」
こうして、エレンは村を旅立った。
道筋にびっしりと芝が生え、どこが道かはくっきりとしていた。手渡された地図によると街へはこの道をひたすら突き進めば着くらしい。
「……別世界に行くのは…どうするんだ?」
1人呟きながら、ひたすら道を突き進む。風が吹くたびにざわめく木の葉が、外の世界を知らないエレンにとって不気味な存在となっていた。どのぐらいの時が過ぎたであろう?道の端に、小さな小屋が見えてきた。小屋の前にたどり着き、気になってエレンは見ていた。
「どうしてこんなところに……?」
エレンがじっと見ていると、扉が開き、中から青年が出てきた。
「……どうした? 何か用か?」
青年は眠そうに欠伸をしながらエレンをジロリと見る。
「…すいません、こんなところに小屋があるんだって気になって」
曖昧に答えたのがかえって良かったのか、青年は嬉しそうな笑みを浮かべ語り出す。エレンは訳がわからず、仕方なく聞く姿勢に入った。
「やっぱり気になるか!! こんな果実も何もない平原にポツリと小屋があるってことを。……実はな、聞いて驚け! ここに小屋があるのには秘密があるんだ。」
青年は、名をストラウスと名乗り、小屋の中から1つの剣を持ってきた。
「その剣は……?」
「…異世界移動を…可能にする剣よっ!!」
現実味が無さすぎて、エレンは何も答えれなかった。ストラウスはそれを驚いていると捉えたのか、続きを語り出す。
「……お前、『完成された世界』へ行きたい、『訪問者』だろ?」
「はい、でもどうして……?」
「……村の外をお前ぐらいのやつが1人で歩いていたら、それしかねぇ。いいか?もう1つの世界へ行くには、異世界移動をしなければ行けねぇんだ。その為にはこの剣が必要になる。」
話が……繋がった。エレンはあまりの展開に、脳がついて行っていない。
「……俺はお前を待っていた。違う世界へ行く、『訪問者』を。」
エレンは疑問をぶつけた。
「でも、さっき『何か用か?』って聞いてきましたよね……?」
ストラウスは自分の失態を思いだし、顔が赤くなる。