#9 幼なじみと開会式と
遅くなりましたが、第9話です
さあ、始まりました、とかなりテンションが高く、むさ苦しい実況をしているのを合図に、開会式が始まる。
今日は開会式で終わるが、凛達は休んでなどいられない。
帰って特訓をする、と雷斗が名案。他のメンバーは賛成したが、響介に至っては嫌な顔で後退り。
雷斗の『特訓』と言うのは響介だけ分かっているようだ。何せ、響介は雷斗の『特訓』に付き合わされ、ボロボロ状態になったことがあるようだ。
かなりのトラウマになり、一時期雷斗を拒否したことがあるのだ。
「何があったのよ」
「藍羅、それを聞くのは野暮ってものだ。察してくれ」
「まあ、辛いなら言わなくてもけど……」
「あ、ありがとう……はあ」
辛気臭くため息で心を落ち着かせる響介。
どうやらホントに地獄らしい。
「へっ、俺様にとっては地獄じゃねえぜ」
汰一の発言で雷斗の顔は悪魔のような顔をする。そして──
「よく言った。ではこれから俺の『特訓』を行う。拒否は許さん」
ものすごい目力で凛達を震えさせる雷斗。その後ろでバカァ、と小声で膝をつく響介。
「そんなに辛いのかな?」
「さぁ? でもセンパイがあんなにビビってる姿初めてかも。普段は堂々としてるのに」
「紫、それを言っちゃうと……」
「うん、そうね」
その翌日。
凛の家に訪問者が現れる。聞いたことがある声、のはずだが思い出せない。
「お兄ちゃん、だれー?」
千鶴の質問に答えようにも答えれないので、流す。
「あの……失礼ですがお名前は……?」
「僕の顔を忘れたのかい? 浬だよ」
南野 浬。凛の幼なじみであり、凛のよき理解者である。
浬の用事とは、大会の事。彼も出場だ。彼は小学6年の時に両親の都合で九州へ引っ越ししたため、それ以来顔も会ってない。今時の小学生は携帯を持っているが、ごく一部。故に連絡手段はない。
「で、何しに来たんだ? まさか、大会に出るのを阻止しようと──」
「逆だよ、僕は君と戦いたい。しかも全力で。あれから君はどれだけ強くなったのか知りたいからね、それに紫にも」
浬の能力はテレーポート。少々やっかいな能力である。自分自身瞬間移動が出来るため、攻撃が当たりにくい。もともと浬は運動神経が良く、友人とケンカすると必ず友人が負ける。
「ま、そんなわけだ。負けるなよ?」
「わかってるよ、浬も絶対に負けるな」
「おいおい、僕はケンカで負けたことないよ」
運動神経がよく、頭がいい。文武両道とはこのことだろう。
「ま、お互い頑張ろうぜ」
右手を突きだし握手をしようとする凛に対し、少しためらって浬も右手を出す。
「ああっ!!」
二人は『正々堂々』と勝負すると約束したのだった。