#8 仲間と能力と
第8話です
「そっか、凛にそんな過去が……」
紫が話終わると、雷斗が口にする。
それにつられ、藍羅、響介と深刻な表情をする。
ただ1人除いては……
「……でもよ、俺ら異能力者はそういうモンだろ?」
霧夜だ。
彼は産まれたときから異能力者であり、親から見捨てられていた。
それにより霧夜は1人孤独に育ったので、親の暖かさも知らないし、友人という存在もいない。
ただ、1人だったのだ。
そんな霧夜にこの『M.S.G.学園』の学園長……松平 多十郎が手をさしのべてくれて、自分は今現在ここにいると言う。
だから霧夜は凛が羨まし過ぎるようだ。
かといって、霧夜の性格上顔に出さないので、分かるのはほんの数人だけ。
「霧夜、気持ちはわからなくはないが少し落ち着け」
霧夜の興奮に押さえつける雷斗に、ぐっすり眠っている凛。
やはり、2人の間には少なからず亀裂が入っているのだ。
そんな亀裂が入っているにも関わらず、ある日……学園長直々に招集が掛けられる。
内容は勿論、大会のこと。
「よく、来てくれたのぅ」
「学園長、お話と言うのは……?」
「雷斗よ、それは愚問と言うものじゃ。大会の件で招集を掛けた。当然ここにおる者は大会に参加なんじゃが1人足らん。そこで先生方と話し合った結果、こやつがお主らの仲間になる事になったじゃよ」
多十郎に呼び出されたのは1人の男性。
凛には見覚えがある人。
それは……
「お前……如月か?」
「そうだよ、俺様はある男を追うためにこの学園に入学してきた……が、此処には居なかった」
ある男、その言葉にざわつく一行。
凛はおそるおそる挙手を試みるが、最後まで聞けと汰一突っ込まれる。
「つう訳だ。よろしくな」
「あ、ああ」
それから大会までの2週間、凛たちは汰一と一緒に訓練することになった。
翌朝、凛はベッドから起きると見慣れない景色に気づく。
壁や床、扉もかなり高級な造りをしている。
「ようやく目が覚めたか」
声が聞こえた方向を見ると雷斗が足を組んで微笑んでいた。
普段笑顔を見せることの無い人が笑うと、それに釣られて笑うものだ。
「ここは……?」
「ああ、俺の家だ。とは言っても、別荘だがな」
「べ、べ……別荘ぉ!?」
「そうだが?」
頭に疑問符が付いているような顔をしている。
前に響介にも言われていた事なのだが、ド忘れしている。
雷斗はしっかりしているが、時々抜けているところがあるのだ。
「い、いや、そんなことより俺どれくらい眠っていたんですか!」
「ざっと三日だろう。安心しろ、学校には連絡してある。それよりお前のその能力のこと知りたい」
「俺の能力は魔法の風ですよ、忘れたんですか?」
当たり前のように答えるが『そっち』ではない。
雷斗が知りたいのは凛が覚醒時に使っていた能力。
だが、凛にはその時の記憶が一切無い。
覚醒した凛が気になった雷斗は、どうしても知りたいので凛を別荘へ運んだ。
そのついでで響介、藍羅、紫、霧夜、汰一を招いた。響介、藍羅は今回で3度目だが、紫、霧夜、汰一は初めてなので唖然していた。
「まあいいや、外でみんながBBQの準備をしている。手伝ったほうがいいだろう」
「あ、はい」
雷斗の言うとおり、外に移動する凛。
そしてゆっくりとその後を雷斗。
(もし、あの能力があいつら――メルダーに渡ったら……)
「雷斗さーん! 置いていきますよー!」
(とにかく、あいつらだけには渡せない!)