#7 過去と覚醒と
第7話です
「どうした! 逃げるだけか!」
「ちょっ、どうして俺!?」
霧夜が指名したのは凛。
霧夜いわく、いつも紫の傍に居るのが許さない。
自分の方がもっと相応しいと思っているのだろう。
「燃えろー!」
両手を地面にかざし、下から魔方陣が展開され、凛目掛けて放たれる。
その威力は木々を軽々と燃やす程だろう。
しかし霧夜は一つ誤算をしていた……それは凛の使う属性。
凛が使う属性は風。
そして「風は炎を消す」と言われている。
「ほう……」
「はぁ……はぁ……」
凛は炎をかき消すように腕を払い、右手を空に翳し、中指と人差し指だけ立てると、そこに意識を集中し始める。
「──“空刃”」
指に集まった魔力を小太刀に流し、そして霧夜に乱れ突き。凛が使っている得物は模擬戦用の木刀だが、風の魔力を宿った今……その威力は鉄をも軽々と粉砕するだろう。
「いいねぃ、その目……まるで獣を狩る目だ」
「マズイ……凛の魔力が半端ない! 急いで凛を止めろ!」
何かを感じたのか、急いで凛を止めに入ろうとする雷斗。それに続いて響介、藍羅、紫も動く。
いつの間にか凛の目からはハイライトが消えていて、暴走状態になっている。
魔導師の使う魔力は人それぞれだが、必ずしも限界がある。
その限界を超えてしまうと魔導師は魔力と共に暴走して手がつけられなくなり……最悪の場合、暴走した魔導師は死に至る事も実は多々あるのだ。
「響介! お前のミストイリュージョンで幻覚を! その間に藍羅はお前の超能力≪アクアキネシス≫で凛に拘束!」
雷斗の的確な指示に響介と藍羅はう頷く。
霧夜と紫はそのまま動かざる得ない状況。
そして雷斗の指示により、凛捕獲作戦が実行される。
(魔力は風。つまり素早いからタイミングさえわかれば……)
響介は呼吸を整え、拳を作ると同時に目を瞑る。
そしてゆっくりと腕を後ろに下げると、凛に向かって放つ。
「──ミストイリュージョン“業”!!」
〈ミストイリュージョン“業”〉とは……ミストイリュージョンの応用で、幻覚を見せる時間は短くなるが射程圏が広くなる。
そして、それを食らった凛の眠りにつく。
その間に藍羅は水で凛の体を縛り上げる。
「凛……またなのね……」
紫の発言は思いもよらぬ言葉を発した。
また、つまりこれは最初ではなかったのだ……
──小学生の頃。
凛と遊んでいた友人は木登りをすることになったが、突如枝が折れる事態が起きたのだ。
その時……凛の目からハイライトが消え、無意識に腕から刃みたいのが出現。
友人に斬りかかると思いきや、友人へと落ちてくる太い枝を斬った。
そんな状況を見た友人は泣きながら帰り、親にその事を伝えてしまった。
しかし運悪く、その友人の親はPTAの会長で、友人を助けた代償に大切なもの無くしてしまった凛だった。