#3 夜の学園と幻と
第3話です
──ある日の夜。男がM.S.G.学園に忘れ物を取りに行った。
辺りは完全に薄暗く、いかにも何か出そうな感じ。
男が自分のクラスに行くと、1人の少女が窓を見ている。男が声を掛けても、少女は気付かない。
男は不思議と思い、少女に触ろうとした瞬間。
何かに引っ張られるような感覚がする。
逃げ出そうとしても行く先にいる。
そして──
「うわあああああああ!!!!!!」
──翌日、凛の教室で妙に噂が流れている。
夜のM.S.G.学園に行くと神隠しに遇うと。
実際昨日1人行方不明になった人がいる。
そんな噂がM.S.G.学園全体に響き渡った頃、響介が、藍羅、凛、紫に調査をすると言いだす。
紫は怪談話は好きだが、凛は苦手だ。
紫にしっかりしなさい、と言われたが、怖いもの全般が苦手な凛は震えながら夜のM.S.G.学園へとたどり着く。
「や、やっぱ止めましょうよ。本当に出てきたら洒落にならないし……何より薄気味悪いし……」
「ち、ちょっと! あたしに捕まらないでよ!」
「全く、仲がよろしいことで……なぁ藍羅?」
「えっ? あ、うん」
その時の藍羅は鈍感、と小さく呟いたのはほかでもない。
巡回が終わり、最後に調べる部屋は音楽室だ。
恐る恐る入ってみるが、変わった様子はない。
だが──
「……おいおい、こりゃ何の冗談だ?」
響介が見つけたのは赤く染まった机。
しかも赤くなっただけじゃなく、油性のペンで悪口が書かれてある。
他にも傷があったりとかあったが、はじっこにあった机だけ違った。
さすがにマズいと思ったのか、外に出るためドアを開けようとする。
しかしドアは、誰かがロックしたかのように全く動かない。
「おいっ! どうなってんだ! 開かないぞ!」
「こっちもふさがってます!」
響介と凛が両方の扉をチェックするが開かない。
完全に密室状態だ。
何かしらのトリックがあるかどうか調べるために4人はカーテン、ロッカー、教卓など探したが、結局見つからなかった。
「嘘……あたしら、出れないの? ……朝までずっと出れないの?」
泣きじゃくる紫に大丈夫、と肩にそっと手を置き、慰める凛。
一番不安な凛が言う。
「……ありがと、もう大丈夫」
スッと立ち上がり、目付きが変わる。
やはり凛はそういうのがあるから惹かれるのだろう。
「しっかし、どうするよ……このまま死ぬなんて、俺はごめんこうむるね」
「き、響介。私は貴方と──」
「……! 危ない! みんな伏せろ!」
藍羅が言葉を発した刹那、ガラスが爆破する。
響介は何者かの仕業と判断し、戦闘体勢に入る。
響介に続き、凛、藍羅、そして紫の順に構え、敵を待つ。
異様な殺気に漂いながら約5秒間。
身体が少し腐りかけで肉もぐちゃぐちゃ。
まさにゾンビみたいなヤツが出てきた。
「いやいやいや、これありなの?! 完全にマズい状況なんだけど……」
「……死体復活……あれは確か禁じられた超能力。何でそんなのが──」
「いやああああああ!!!!!!」
紫の声の直後、視界が一瞬で暗くなった。
そして──
「あれ? ここは……?」
響介と凛が目を覚ます。
すると、雷斗が1人の男性を連れてきた。
前髪で目が見えないが、本人は響介と凛を睨んでいるようだ。
「……あれ? 空吾? 何でいるの? てか、俺ら死んだんじゃ……」
響介の言葉に雷斗と空吾が向き合ってため息。
「……響介、空吾の超能力忘れたか?」
あっ、と思い出したかのように頭を抱え込む。
空吾の超能力は相手に幻覚、幻聴を見せる能力である。
そう、響介と凛に幻覚を見せて、彼らを止めさせるためであった。
「……たく、仮にも生徒会の副会長のお前が夜の学園に忍び込むとは何事だ。 副会長の腕章返してもらうぞ、響介」
「そんな怒るなよぉ〜、もうしないから!」
「そういってこの前の騒動を起こして俺まで一緒に謝った……あの時も『もうしない』とか言ってたなぁ……可笑しいなぁ、お前は何回もうしないとか言ったのかなぁ?」
ぐうの音も出ない。
基本響介は正直だ。
だからなおさらウソなんてつけないし、つけるはずがない。
──後日、雷斗が響介の机に沢山のプリント用紙を置く。
雷斗曰く、このプリント用紙を今月中までに出せ、のことだ。
「なぁなぁ雷斗さん……これ、100枚はありますよね?」
「はぁ? 100? んな優しくないぞ。追加で200枚だ」
雷斗がバンと、教卓の上に100枚の束を2つ追加で置く。
響介は深呼吸を3回。
そして──
「ぜってええええええ終わんねぇよおおおおお!!!!!」