#2 響と雷と
第2話です
じわりじわりと男が2人に迫り、ハンマーを振りかざした瞬間、突然現れた雷が男に直撃する。
放たれた方向を見ると、金髪に茶色のメッシュを入れている青年と、少し茶色の混じった黒髪の女性が仁王立ちをしていた。
制服を見るかぎりM.S.G.学園の生徒のようだ。
「てめぇら……この俺を怒らせた事を、後悔させてやる!」
大気が震え、男の後ろにいた人たちもひざまずく。
だが、青年と女性は全く動じない。
「どうするよ、雷斗」
「あんまり派手は好きじゃない、早く倒そう。響介」
「んだよ……つれないな」
響介と呼ばれた女性と雷斗と呼ばれた青年は構え、男に近づく。
男はパチンと指を鳴らすと周りから50人ぐらいの男がドンドン来る。
「雷斗、どちらが多く倒すか勝負しようぜ」
「またか……俺はそんなのには興味ないと言っているだろうが」
「コイツらをぶっ殺せーー!!!」
男の掛け声で約50人の男共は2人に飛び掛かる。
響介は拳を握り、相手の目の前で手を開く。
「──ミストイリュージョン」
「う、前が見えない……うがああああああ!!!!」
「な、なんだアイツ。突然倒れて……」
「ミストイリュージョン……俺の霧で幻覚を見せる。死にはしないが、かなりの苦痛だ。お前らみたいなやつにゃもってこいの技だ……どうする? まだやるのか?」
油断したのか、1人の男が後ろから攻撃。このタイミングで避けられるのはいない。だが――
「雷光──」
訓練用の槍に雷が帯びて。
「──千閃!!」
千回の乱れ突き。雷斗の助太刀だ。
「後ろががら空きだ。鍛練を怠っている証拠だぞ」
「うっさいなぁ……どこぞの鍛練バカと違って、俺は楽しく生きたいの」
「な、なぁ、アイツらって……」
「ああ、間違いねえ、《雷槍の狩人》と《怖響我音》だ」
雷槍の狩人と怖響我音と訊いていか、つい男以外は全員慌てて去った。
何がなんだかわからない状況の凛と紫だが、自分達を助けてくれた2人はスゴい人たちと言うことはわかった。
「……さて、あとはアンタだけだよ。今のうちに去った方がアンタの身のためになるし、何より俺らはそういう弱いものいじめはキライなの。どうなってもいいなら俺らと戦ってもいいしねぇ」
「う、うおおおおお!!!!」
ためらいもなく襲い掛かる。どうやら恐ろしさがわかってないようだ。
雷斗は槍を、響介は溜め息をつきながら拳を構え、男を飛ばす。
「全く、手応えがないヤツらだな」
「どうでもいい、それとお前はもう少し鍛えろ」
「へいへい。で、この新入生どうする?」
「ここで話すのもなんだ、響介ん家で話す」
「へいへ――って俺ん家かよ!?」
「仕方ないだろ、俺の家はここから遠い。それにお前ん家はデカイ」
響介は渋々了承を得て、早速響介ん家へ行くことになった。
「うわっ、デカイ」
「ホント、かなりの金持ちなんだね」
凛と紫は唖然するばかりだ。無理もないだろう、響介の父は大物会社の社長である。
「じゃあまず、自己紹介からだ」
響介はソファーに座り、紅茶をすする。最初に自己紹介をするのは雷斗だ。
「俺は地橋 雷斗、魔導師で属性は雷。M.S.G.学園の2年だ。魔法側生徒会の会長をしている」
「んで、俺は安藤 響介。雷斗と同じく魔導師で、属性は水。M.S.G.学園の2年で、魔法側生徒会の副会長。言っておくが、性別は男だからな?」
次に喋ったのは紫だ。
「桜庭 紫です。超能力者で、空間切断と言う超能力を持っています。M.S.G.学園1年。入ったばかりですが、よろしくお願いします!」
深々とお辞儀をして凛の自己紹介に入る。
「俺は神楽 凛と言います。魔導師で属性は風です。同じく新入生なので、よろしくお願いします」
自己紹介が終わり、本題に入る。それはなぜあの男達に捕まったのか、その真相が知りたかったのだ。
だが、何度も聞いても理由はわからない。
復讐されるような行為はしていないようだ。
「まあ、今日の出来事のことは先生方に話をしておく。今日は帰って寝なさい。明日も学校だからな」
はい、と返事をして家に帰る。
翌日、学校に来る途中に響介と雷斗に会う。響介から言われたのは、放課後に食堂で話したいことがある、だそうだ。
放課後、言われたとおりに食堂で響介達を待つ。5分後に来た響介達は2人友人を連れてきた。
「よう、待たせたな」
「い、いえ、俺たちも今来たところですから」
響介の発言に凛が答える。
「実は、話というのは俺らの友人を紹介しようと思う。頼むぞ」
「おう! 俺は伊藤 亮一、コイツらと同じM.S.G.学園の2年生。魔導師で属性は地。よろしくな!」
雷斗のセリフで亮一が挨拶をする。黒色の髪で、アホ毛が生えているのがチャームポイント。
「は、はぁ……」
「次は藍羅」
「わ、わかってるわよこのバカ!」
馬鹿は亮一だろ、と響介は心の中でツッコミを入れた。
「私は水瀬 藍羅、M.S.G.学園の2年生。で、私は能力側生徒会の会長。ちなみに超能力者で水使いよ」
「あ、あの、質問していいですか?」
藍羅の紹介が終わったとたん、紫が手を挙げる。雷斗はどうぞと言って質問内容を聴く。
「昨日気になったのですが、《雷槍の狩人》と《怖響我音》って何ですか?」
「……それは誰かが付けた俺と雷斗の二つ名さ、俺らはただ超能力や魔力を持ったヤツらが何かに悪用するのが許せないんだ」
「まぁ、本職の奴等には色々と敵わないがな」
重い空気になったが、亮一の馬鹿な言動に藍羅がツッコミを入れたりして、空気は軽くなった。
そんな風景を見ながら凛と紫は心に誓った。
この人たちみたいな先輩になりたいと……