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第5話~朝から族長さんとお話しました~



異世界-ヘアグ-にきて初めて迎えた朝は、スッキリした目覚めだった。

夢もみなかったよ。

う~ん、とベッドの中で体を伸ばし、そのままゆっくりと簡単なストレッチをしてから起き上がって部屋を見渡す。


「この世界って、人間より魔物の方が裕福なのかね…あはは…」


この部屋は東の貴賓室ではなくて、幾つか有るという客間の一つなんだけど、なんていうかさ、どこぞの高級ホテルのロイヤルスイートですか?!って言いたいくらいに無駄に広くて豪華。

昨日、食事が終わってからミリーが案内してくれたんだけど、思わず「部屋間違えてない?」って聞いちゃったもん。

これだけ広いと思いっきり体を動かしても大丈夫そうだし、薙刀の型でもやろうかな。


私が習っていた薙刀術は、お祖母ちゃんの生家に伝わるもので、どこの流派にも属していない。

小学校1年生の時にお母さんが他界しちゃって、お祖母ちゃんにお世話になることになったんだけど(お父さんは商社勤務であんまり日本にいなかった)偶然お祖母ちゃんが薙刀を振るうのを見たの。

それがとってもカッコよくて、お祖母ちゃんに頼み込んで教えてもらったんだ。

稽古はかなり厳しかったけど、挫折することなく続けてた。

今やっている型は、実際に得物を持っていなくても出来る基本的動作。これは目を瞑っていてもできるのよ。


幾つか基本型をこなした頃、「ユリーナ様、お目覚めですかぁ?」とドア越しに声がしたので、は~いと返事をしながら開けると、タオルや何かの壜や桶っぽい物がのったトレーを持っているミリーがニコニコ顔で立っていた。


「おはようございますぅ、ユリーナ様。朝のお手水道具をお持ちしましたぁ。入ってもよろしいですかぁ?」

「うん。どうぞ~」


ミリーはトレーごとテーブルに置くと、道具の使い方を教えてくれた。

青い壜に入っているのは身体洗浄液で、絞った濡れタオルにしみ込ませて顔を拭くんだって。ちなみに身体洗浄液は、髪も顔も体もOKな万能液なんだそうだ。

これ一本でシャンプー、リンス、ボディウォッシュ、洗顔料になるなんて!

スゴイです。

お次は緑の壜に入った口内洗浄液で、マウスウォッシュみたいにお口クチュクチュするだけで歯がツルツル!

これもスゲーです。


朝の身支度を整えると、族長さんが待っているという部屋に案内された。

まずは朝の挨拶と昨夜の晩餐会欠席のお詫びを言ってから、勧められた椅子に腰掛ける。


「朝早くに呼び立ててすまないの。今日はこの時間しか都合がつかなくてな」

「いえ、そんな。お気になさらないでください」

「実はユリーナ殿に報告したいことがあっての…。昨夜の晩餐会でギルガの脅威は去った旨を皆に伝えたのじゃが…ユリーナ殿のことは話してないのじゃ」


ん?なんで?って気持ちが表情に出ていたのか、族長さんはおもむろに口を開くと理由を話し始めてくれた。


理由その1 11,2歳に見える少女が天災級の怪物ギルガを倒したとは信じてもらえそうになく、族長が虚言していると疑われる可能性あり


理由その2 ギルガに懸けられていた報奨金狙いで盗賊なんかに襲われる可能性あり


理由その3 ギルガの強さは世界中に知れ渡っている。そのギルガを倒した者を打ち倒せば名をあげられると思う戦士達に狙われる可能性あり


理由その4 異世界人というだけで物珍しさから狙われる可能性あり



なるほど。ごもっともです。

理由1はともかく、他は私の為を思っての理由だわ。


「確かに仰るとおりですね。ご配慮ありがとうございます。…あの、こんなに気を使っていただくのは何故なのですか?」

「何故、というと?」

「その…お気を悪くされたら申し訳ないですが…メルーロさんやミリーはギルガをやっつけてくれた恩人だからって言ってたけど、褒賞金を受け取る時点で私は恩人にはならないと思うんです。得体の知れない異世界の小娘に、長である族長さんが気をつかってくださり、しかもかなりな高待遇なので…何か理由があるのかと。あの、もちろん良くして下さることには感謝していますが…」

「ふむ。ユリーナ殿はなかなか洞察力がおありですなぁ。いや、なに、ユリーナ殿が我々を信頼してくれれば、異世界の知識や技術を教えていただけるかと思っておったのじゃ」

「異世界の知識…技術?」

「左様、昨日ユリーナ殿が着ていた服も初めて見たものじゃった。新たな知識や技術は我等の一族を更に発展させてくれると思うのじゃ」


更なる発展……それって『監視者』の言っていた世界の活性化に繋がるかも。

それに1人立ちできるまでは色々と配慮してくれそうな羊緑族さんにお世話になる方が得策だよね。


「わかりました。私がお伝えできる知識や技術はたいしたものではないかもしれませんが、それでも良ければ尽力いたします。」

「そうか!それはありがたい。我々もユリーナ殿のお力になるよう協力は惜しみませんぞ。心行くまでここに滞在してくだされぃ」

「ありがとうございます」


こうして族長さんと私は相互協力関係となったのでした。 


なんとかなるでしょ~と思ってたら、ホントになんとかなりそうで良かったよ。

とりあえず、あの豪華すぎる客間を変えてもらって、私でも働ける職業を教えてもらおっと。


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