第46話~重なり合う想い~
R15です。初っ端からイチャコラしっ放しです。
糖度高めにつき、胸焼けにご注意下さい(笑)
どのくらい時間が経過したのだろうか。
長椅子に座りながら抱きしめあっていたゼウォンと私は、ゆっくりと互いの拘束を解いた。
「ユリーナ…」
「…ゼウォン」
愛しい者の名を呼び合い、対鏡のように互いの瞳に互いを映す。
ゼウォンの長い指が私の髪を優しく梳き、そのまま赤く火照った頬を撫でてきた。
彼の整った顔が目の前に来た時……私はそっと瞼を伏せた。
触れ合う唇。
何度か軽く掠るように触れ合うと、彼の舌先が私の下唇をなぞってきて、そのまま私の唇の合わせ目を突いてくる。
無意識に口を微かに開くと、すぐに中に入ってきた。
彼の舌が私のそれを捕らえ、なぞるように絡められて軽く吸われる。
なにこれ…キスって、こんなにクラクラするものなの?
初めての感覚に戸惑いつつも、ただゼウォンが与えてくれる感触を受け入れる。
「ん…んんっ…」
鼻から抜けるように甘ったるい声が自分から発せられて、益々顔が赤くなる。
私の声に反応したかのように、深くなる口付け。
「…ん…んっ、んあっ」
息苦しくなって来た時、ようやくゼウォンが唇を開放してくれた。
はぁはぁ、と空気を吸い込み、そっと目を開けると。
熱を湛えたアメジストが、私を見詰めながら近づいてきた。
そのまま再び重なる唇。
今度は最初から、隙間を埋めるように深く重ねられた。
舐め取るように、吸い取るように、舌が絡められていく。
熱い…体が熱くて…お腹の下あたりが、きゅううん…ってなる。
時々顔の角度を変えながら、私達はキスし続けていた。
やがて、ゼウォンが私の下唇をチュっと軽く吸って、ゆっくりと離れる。
「ユリーナ…オマエは俺のツガイであると、そう思って良いんだよな?」
ツガイって、恋人ってことだってレギが言ってたよね?
もちろん良いに決まってる。
コクンと頷くと、ゼウォンは蕩けるような微笑を浮かべて、私を包み込むように優しく抱きしめ直した。
「一応確認しておくが…ツガイってのは関係を解消したり、複数作ったりすることは出来ないんだぞ?」
え~と、それってつまり、別れたり浮気したりは出来ないってことよね…?
むしろ大歓迎だし。バッチコイ。
ゼウォンの広い胸に埋もれた頭をコクンと縦にふる。
「オマエは人間で…俺は魔獣だ。異種族間は子が出来にくい。ただでさえ俺は繁殖率の悪い銀狼族だから、子が出来る可能性は皆無に等しい。それでも、生涯俺と共にあると、それでも構わないと言ってくれるんだな?」
……
……ぱーどぅん?
子が出来る可能性は皆無?って、え?そうなの??
初耳なんですケド!
「私、ゼウォンとの赤ちゃん授かれないの?」
「え?さっきオマエ「分かってたことだから今更」って言わなかったか?」
「え?それって、同族…銀狼族に紹介してもらえないのは分かってるって意味で言ったんだけど…」
「はあぁ?!そうなのか?……俺は…てっきり……」
ガクンと項垂れたゼウォンは、私の肩に頭を乗せた。
なんだか、えらく打ちひしがれている様子なんだけど…。
狼耳とモフモフの尻尾がペタンと垂れ下がっている幻覚が見えるんですけど…。
カーワーイーイ~~
って、そうじゃなくて。
まあ、よくよく考えてみれば、魔獣のゼウォンと人間の私の間では赤ちゃん出来ないってのは至極当然だよね。
自分が妊娠して出産して、子供を育てていくっていう未来像は漠然とあったけど、その未来像に固執はしてない。
だって、いつか我が子は自分の手元を離れてしまうから、ずっと一緒には居られないんだよな~…って思っちゃうんだ。
とは言え、子供を産んで育てるって、すっごく大変だけど特別な幸せも得られるのよ~ってバイト先の社員さんが言ってたし、出来ることならゼウォンとの子が欲しいって思う。
でも、不可能ならば仕方ない。
ゼウォンと私は、血の繋がった家族を作ることは出来ないっていうのは非常に残念だけど、今しがた彼は「生涯共にある」と言った。
それって、つまり、子供は無理でも彼はずっと一緒にいてくれるってことだよね?
「それでも、いいよ」
なぐさめる様に、ゼウォンの背中を軽くポンポンと叩く。
顔を上げた彼は、驚いた表情で私を凝視した。
「赤ちゃん授かれないのは仕方ないことだもの。赤ちゃんいなくても、ゼウォンはずっと私と一緒にいてくれるんでしょう?」
「それはもちろん、オマエから離れるなんて有り得ないが…」
「なら、いいの。ゼウォンがいてくれるなら、私は幸せ」
「ユリーナ…」
私の身体にまわされていたゼウォンの腕に力がこもり、覆い尽くすように強く抱きしめられる。ぐえっ。
だけど今回はすぐに腕の力が緩んだ。良かった。
「本当に、いいんだな?俺のツガイになってくれるんだな?」
「うん。だけど…」
「けど?」
「ツガイという言い方より、恋人っていう言い方のほうが嬉しいデス…」
些細なことかもしれないけど、やっぱり、ねぇ?
照れつつも、そんなことを口にすると、ゼウォンは今まで見たことないほど嬉しそうに微笑んで、それから真摯な瞳を向けてきた。
「ユリーナ。俺の、生涯の恋人になってくれるか?」
「っっ、…はい」
嬉しくて嬉しくて、私はそのままゼウォンにギュウってしがみ付いた。
「ゼウォン…ずっと一緒にいてね?」
「もちろん。離しはしない…俺のユリーナ」
どうしよう、嬉しすぎる。
最愛の彼が、この先ずーっと一緒にいてくれるなんて…夢オチなんかじゃないよね?
感激に浸りながらゼウォンと抱きしめあっていたけど、私は徐に心の内を吐露し始めた。
「あのね…私、寂しかったの。幼い頃にお母さんが死んじゃって、その後育ててくれたお祖母ちゃんも死んじゃって。お父さんは仕事が忙しくて殆ど会えなかったし。家族を失うって、辛いよね…ゼウォンは凄いね、5年間1人で…」
私がポツリポツリと話している間、大きな手で優しく頭を撫でてくれるゼウォン。とっても気持ち良いな…
「凄くもないさ。俺は、銀狼族だってことが知られるのが怖くて、誰も寄せ付けなかった。結果的に1人だっただけだ。」
「そう…それなのに秘密を教えてくれて、恋人にしてくれて…私、こんなに幸せって思ったの、初めてよ」
「ユリーナ…」
頭を撫でられる心地よさに身を委ね、目を閉じた。
「実はね、お祖母ちゃんが死んじゃった時…こんなに悲しくて辛い思いをするなら、家族なんて居なくていい、とか思っちゃったんだ。お友達には恵まれていたけど、お家に帰れば1人ぼっちで。でもホントはね、ずっと一緒にいたいと思える存在を…ずっと一緒にいてくれる存在を…いつも、求めていたの」
閉じていた目を開き、ゆっくりと顔を上げて彼を見詰める。
お祖母ちゃんが言っていた“想念”ってホントかも。
だって、出会えたんだもの。私のたった一人に…
「私…求めていた存在に出会えたのね…」
ゼウォンに出会えたことに、想い合えたことに、歓喜で心が震える。
愛しく想う気持ちを込めて微笑むと、彼も微笑み返してくれた。
そして、私のおでこに、眦に、頬に、耳元に、優しくキスして、それから再び唇同士をくっつける。
しばらく舌で舌を弄られた後、苦しくない程度にギュッと抱きすくめられた。
「ユリーナ…俺のユリーナ…こんなに愛しく思うのはオマエだけだ」
…今の、ホントにゼウォンが私に言ったの?
あうぅっ。嬉しすぎて泣けてくる。
涙が出そうになったけど、私もギュっと抱きしめかえして、何とか泣くのを堪えた。
結構泣き顔見られているんだけど、それでもあんまり見せたくないんだよね~なんて思っていると。
私の背中にあったゼウォンの手が、胸元にきた。
あれ?なんか、胸を触られている?
あれれ?なんか、胸を撫でられてる??
あれあれ?なんか、撫でる擦るというより、掴む揉むといった手の動きをされてませんか???
状況判断しかねているうちに、私の身体は長椅子の上に倒されていた。
えーと、これって、あれかな?交尾体勢っていうやつ?
私の上にゼウォンが覆い被さり、唇を寄せてきた。そのまま受け止め、口付けに耽る。
その間もゼウォンはずっと私の胸から手を離さなかった。
「ユリーナ…」
手の動きは止めずに顔だけを離した彼は、艶のある声で私の名を呼んだ。
愛しげな、でも少し切なげな彼の美声を聞いて、下腹部にまたナゾの感覚が沸き起こる。
ゼウォンの唇が、私の頬から首筋を伝って、鎖骨の窪みに落ちてきた。
彼の手がようやく胸から離れたと思ったら、今度は服の中に侵入して直に私の肌を撫でてくる。
はっ!!これはマズイ!
直撫でされた感触に、流されっぱなしだった理性が蘇った。
っていうか、本能が危険信号を発信している。
ゼウォンてば本気?マジで最後まで、いたしちゃう気でいるんですか?!
ここまでされると、ちょっと過ぎたスキンシップってワケにはいかないよね?!
まさか、此処で?!こんな長椅子の上で?!第一ここ、宿屋の屋上だよ?!
焦りまくりの私の心中なんてお構いなしに、彼の手が私の腰骨あたりを撫で、色気もそっけもない簡素な長ズボンの腰紐を解こうとしてきた。
「ぅきゃっ、ちょ、待っ……ん、んんっ」
ちょっと待ってと言おうとした口は、彼の口で塞がれる。
ヤダヤダ!こんな所じゃイヤーーっ
ジタバタともがくと、ゼウォンが動きを止めて私の顔を覗き込んだ。
「どうした?ユリーナ」
「(どうしたもこうしたも、こんな所じゃ)イヤっ」
「え?」
「(初エッチが宿屋の屋上だなんて)有り得ないからっ」
「……………(俺に身体を許すのは)有り得ないのか?」
「うん」
力強く頷くと、ガーンって効果音が聞こえそうなほどショックを受けたって表情をするゼウォン。
「何故だ?!俺のツガイになってくれたじゃないかっ」
「確かにそうだけど、でもっ、ここ屋上だよ?!」
真っ赤になりながら訴えると「は?」と一言、とぼけた返事をするゼウォン。
「だ か ら 、ここ宿屋の屋上でしょ?こんなところでなんてイヤよぅ…」
「あ、そっか。そういうことか…良かった…」
「ええっ?!何が「良かった」なのよ?良くないよっ、いくら真夜中でも誰かに見られる可能性あるでしょ?!」
「あー、スマン。性急だったな、悪かった」
ゼウォンは謝りながら私の体を起こしてくれた。パパッと乱れた衣服を整える。
「じゃ、部屋に戻って仕切り直すか」
「え゛?!あの、レギとルーシェが…」
「不可侵、不可視、不可聴の効果が3日間ほど持続する強固結界石を使うから、何も気にすることないぞ」
「ぇえ?!強固結界石??」
「使いきりの結界石にしては割高だったが、効果は抜群だ」
「いや、そんな、何も今すぐじゃなくても…」
「俺としても、何の気兼ねも無くユリーナと交じり合いたいからな。結界石の1個や2個なんて惜しくない」
「ちょ、だから、今すぐじゃなくて日と場所を改めて…」
「行くぞユリーナ」
「え、や、ちょ、ぅわあぁぁ~~~んっっ」
もはや聞く耳持たずのゼウォンに半ば引きずられるように、部屋へと戻ったのでした。
狼ゼウォンくんに拉致られちゃったユリーナちゃん。
部屋に戻った2人のその後は、ムーンさんの方で投稿させていただく予定です。