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第41話~嬉しい発見!パスタがありました~



「ワシは回りくどい事が苦手だからハッキリ言うが---無理だ」


無理…って、それは薙刀を作ってもらえないってこと?

王都でも名の知れた腕利きの鍛冶職人さんってギルドで聞いたから、此処に来たのに。

ここでダメなら、何処に行けば作ってもらえるんだろう?


ショボンとなってしまった私に、オジサンは少し相好を崩した。


「ま、今、嬢ちゃんが手にしているヤツよりはマシなものを作ることは出来るがな」

「え?!あの、どういうことですか?」


薙刀作れるなら、どうして無理なんて言ったんだろう?


オジサンは軽くため息を吐き、無理だと言った理由を説明してくれた。


曰く、私の希望通りの薙刀を新規作成するには、〔鍛冶職人〕とは別の〔魔具職人〕の技術が必要なんだそうな。

オジサンも有る程度は魔武器を扱うことは出来るらしいが、私の戦闘スタイルに見合う物を作るのは難しいんだって。

加えて、オジサンの所では私の〔風〕の魔力と相性の良い材料が無いらしい。


「……わかりましたぁ。でも、私はこれ1本しか武器を持ってないので、まったく同じモノで構いませんから新しく作ってもらえませんか?」

「わかった。全く同じ曲刀槍(?)なら、そうだな、形状は覚えたから5日あれば作れる。しっかし勿体ねえなぁ、嬢ちゃんよ」

「勿体無いって、何がですか?」

「さっきの型を見ただけでも、得物が実力に合ってねぇってのが分かる。嬢ちゃんの力に見合うモノを作ってやれんのは残念だが、それでもソイツよりは良いモノに仕上げてやんよ」

「本当ですか?ありがとうございます!」

「ただな、今ウチにある素材の中でもそれなりのブツを使うことになるから、大金貨2枚くらいかかっちまうが…良いか?」


大金貨2枚か…どうしよう…?

今の手持ち残金は大金貨2枚以上ある。ブーツやブレスレットは貰えるし、食材や宿代はゼウォンがチーム資金(コルエン裏山の報奨金&山中で採取して換金したお金)で払ってくれるから、一応払える金額だ。

ちょっと悩んだけど、思い切ってOKしちゃうことに。


「はい。わかりました。今、お支払いした方がいいですか?」

「いや、出来あがったモノを試してからでいい」


では5日後にまた来ます、と言い残し、鍛冶屋さんを後にした。


理想通りの薙刀は無理だったけど、今よりも優れた薙刀が手に入るんだから、ここに来た甲斐があったわ~。





さて、お次は待望の食市場へGO!!

なんだか私の我侭に皆を付き合わせちゃってるみたいで申し訳ないな~と思いつつも、3人とも気にした風でもなく、むしろなんだか楽しそうだから、まぁいっか。



食市場は、とっても魅力的でございました。

もうね、さすが西の地最大の都ってだけあるね!

シプグリールやヌーエンの食市場も大規模だと思ったけど、ここはとにかく食材の種類が豊富なの!!

俄然テンションあがりますですヨ!5日間くらい時間をかけて物色したい~~。


目を輝かせながらキョロキョロしていると、とある食材に惹き寄せられた。


太さ5mmくらい、長さ30cmくらいのコレはっ。まさしくロングパスタではないですか~~!


やった~~!!


この世界にきてから、主食はずーっとパンだった。別にパンも嫌いじゃないけど、いい加減飽きてたんだよね。

お米が無い以上、せめて麺類だけでもないものかと思ってたんだ。

うどんや蕎麦なんかは無理でも、パンがあるなら同じ小麦粉系ということでパスタは在るかも、と期待してたの。

ああ、ようやく巡り合えたパスタちゃん。会いたかった~~!


トマトもどきやニンニクの香りがする食材はあるから、ボロネーゼにナポリタンにポモドーロにアラビアータ、ぺペロンチーノとかは作れそう。

バジルに近い葉があればジェノベーゼなんかもいいなぁ。カルボナーラも可能かも。

シーフード食材はあんまり見ないから、ペスカトーレやボンゴレは無理かな~…。

そうそう、醤油もどきを使って和風に仕上げるのもアリよね。スープスパにするのも良いし~♪


頭の中でパスタ料理のレシピを思い描き、ニマニマしながらロングパスタを見詰める。


肩に魔竜のっけてニヤケ顔した黒髪女。その隣には、肩に魔鳥をのせた青髪男。


注目の的です。思いっきり見られています。周囲の視線、集中です。


でも気にしな~い。別に悪いことしてないんだから、堂々とすべし!



「なんだかユリーナ随分とゴキゲンじゃ~ん?それって、そんなに旨いのか?」

「うふっ。レギ、いい質問だわ。この食材があれば料理の幅が広がるのよ!今、頭の中で思いついただけでも5種類は作れるわ」

「へぇ~。でもそんな長っちろいの、オイラは食べにくくてヤだ~」


それもそうか。せっかくだからレギにも食べてもらいたいしなぁ。

マカロニのようなショートパスタだったら、レギも大丈夫かも。


売り物を見回すと、あったあった、ありましたよ~。ペンネ状のショートパスタ、発見!


「ね、レギ。あれだったら食べれるんじゃない?」

「あ~、あのくらいならイケる」


よっしゃ。ショートパスタならグラタンとかパスタサラダも作れるし、ロングとショート、両方買いだめ決定だね!


ルンルン気分で次の出店へと向かおうとすると「買わないのか?」とゼウォンに聞かれた。


だって、これだけ広い食市場なら、パスタ扱っているお店は他にもたくさんあるだろうから、他の所の価格を見てから決めたほうがいい。

平均価格を知らないと、値切ったり、オマケ付けてって交渉もできないじゃん。

大量に買うんだから、比較検討もせずに即買いなんて愚の骨頂!


そう力説すると、ゼウォンは微妙な顔して「そっか」と一言。


あれ?なんかマズかった??シプグリールでは値切り交渉OKだったけど、もしかして、この国では値切っちゃいけない決まりでもあるとか???


若干焦ってゼウォンに尋ねると、別にそんな決まりは無いとのこと。


「いや、何ていうか…ユリーナって成人したばかりのわりにはカネの事しっかりしてるよなって思って。(ホントにギルガの褒賞金受け取ったのか疑問だ…)」

「そうぉ?やっぱ、お金って大事だと思うし…ゼウォンは、価格交渉するようなオンナは…嫌い?」


嫌いって言われちゃったら、どうしよう?

不安に駆られながら彼を見上げると、優しげな紫の瞳が私を見詰めてた。


「まさか。むしろ交渉するのは良い事だと思うぞ」

「ホント?…良かった」


ホッとしてニコっと微笑むと、ゼウォンの長い指が私の頬に触れ、優しく掠るように撫でてきた。


ドキッ。カァ~ッ。途端に跳ねる心臓。赤くなる顔。


「大事に金を使うのは好ましいことだが、ヘンな遠慮はするなよ?」

「あ、うん。ありがとう…」


ゼウォンは甘さを含んだ瞳をして、赤面した私の頬を更に撫でる。


ここは食市場で、大勢の人がいるわけでして、大和撫子(?)の私としては大変恥ずかしいのですが、意中の殿方が自分に触れてくるのがイヤなワケもなく、もっとシテとかハシタナイこと思う自分がいて、そんな自分に益々羞恥が募るといいますか、なんかもう勘弁してくださいって言いたくなるワケですよっ。(←プチ混乱中)


「ユリーナ、お顔真っ赤なの。大丈夫?」


肩越しから覗き込むように私を見る、つぶらな銀の瞳のチビ竜ちゃん。

ニヤニヤといった形容がドンピシャな表情の魔鳥さん。


あうっ、そんな純真無垢な瞳で私を見ないでルーシェ~~っ。

ってゆーか、レギ!アンタ完全に面白がってるでしょ!


「大丈夫よ、ルーシェ。なんでもないの。今度はあっちの方を見てみたいな」


平常心平常心と心の中で言い聞かせて、殊更普通を装い、市場内を見学する。


香辛料や調味料、果物に野菜に加工肉と、買いたいものは沢っ山あったけど、今回は結局何も買わずじまい。


というのも、来月に開催される〔土の神〕の大祭にあわせて、王都中で格安バザー期間が設けられるらしいの。所謂、激安セールですよ!


前の世界にいた時、将来のために出来るだけ貯蓄していたから、お洋服は年始のバーゲンか在庫処分セールで、食品はスーパーの見切り品、たまに買うお惣菜は閉店時間間際のタイムセール半額品で購入していた私。

格安バザーなんて聞いた日にゃ~、今むざむざ買うわけにはいかないっしょ。

とは言え、今月中に王都を出立するなら、その限りではないんだけど…。


いつまで王都に滞在するのか仲間3人に尋ねると、特に急ぐことも無いし、私とルーシェは大祭を見たことがないから、来月末まで王都に滞在しようかということになった。

やったね!



そうと決まれば宿屋の確保。

昨夜ギルドで紹介してもらった宿は、そこそこ値段も設備もサービスも良かったので、そのまま長期滞在手続きをとる。

来月になったら途端に商人や冒険者が押し寄せ、宿泊客が激増するらしいので、今のうちにキープしちゃおうってワケ。


「あ、そうだ」


唐突に、何かを思い出したように声をあげたゼウォン。


「どしたの?」

「ギルドチームの登録名。皆に聞いてから決めようと思って、昨日書類に記入してないんだ。なんか良い名、あるか?」

「う~ん、チーム名かぁ…。なにがいいかな…」


なかなかコレって名前が思い浮かばないな~…なんて悩んでいると。


「ユリーナの武器の名ってなんだっけ?ナギラ…じゃなくって、ナギナワ、だっけ?」


レギがそんなことを聞いてきた。


「違うわよ、レギ。薙刀よ。 な ぎ な た 」


一字づつ発音すると、「それそれ!それでいいじゃん」とか言い出した。


「は?それでいいって…まさか、チーム名を薙刀にするってこと?!」

「おうよ!そのナギナタってのはユリーナだけが使ってる武器だから~、ユリーナの代名詞みたいなもんじゃん?んでオイラ達はユリーナの召喚魔。ユリーナを介して皆が繋がってるから~丁度いいじゃん」

「うんうん。アタシ賛成」「俺もそれで良いぞ」


金銀魔達はマジだ。

マジでチーム名〔ナギナタ〕?!それって、どうよ?!


でも、イヤだとゴネても代わりのチーム名なんて思いつかないし、私を介して繋がっているってのは嬉しいし、この世界では〔薙刀〕っていうより〔曲刀槍〕っていう呼び名の方が浸透しそうだし……


ま、いっか。


「じゃあ…チーム名は〔ナギナタ〕で決まりね。リーダーはゼウォンがしてくれる?」

「え?俺?」

「ま、当然じゃん?経験浅いユリーナにゃ無理だし、そのユリーナの召喚魔であるオイラとルーシェは論外。ゼウォンしかいないじゃん」


レギ、ナイス補足!


「う~ん…。ま、仕方ないか…わかった」


よし、リーダーはゼウォンに決定~!よかった、よかった。





チーム名とリーダー決定のお祝い(?)に、その日の夕食は宿ではなくて、食市場で勧められたお店で外食をすることになった。


そのお店は石造りのお洒落な店構えで、木のテーブルや椅子なんかも良いカンジ。

レギとルーシェを連れてるからか、他のお客さんや店員さんから驚きの視線で見られたけど、私も驚いた!


だってロングパスタの食べ方が全然違うんだもん!


イボイボ付きのミニトングのようなものにパスタを絡めて、ディップ状のソース(?)につけて食べるんだよ。

他にも、細長くカットした味付き根菜を葉野菜に巻いて食べるだとか、スパイスのきいた肉料理なのに更にタレを付けるだとか、緑色したスープがパンプキンスープに良く似た味だとか……

全部美味しかったんだけど、なんか色々と衝撃的な食事だったよ…。






夜風を心地よく感じながら、私はゼウォンと石畳の道をゆったりと歩いている。


先程の飲食店で、つい話の流れで店員さんに「初めて王都に来たんです」って言ったら、是非行ってみてくださいとオススメ夜景スポットを教えてくれたので、行ってみることにしたの。


グリンジアス王都の道や建物には、薄緑に光る光源石が多めに填め込まれていて、夜になると幻想的に光って、とてもキレイ。


レギが以前、ヌーエンよりグリンジアスの方がキレイだと言ってたけど、確かに夜景は一見の価値があると思う。

そんなレギはルーシェと共に夜空に飛んでいっちゃったんだけどさ。空飛べるっていいよね~。上から夜景が見れるんだもの。

私は魔力使っても、そんなに高く浮けないんだよな~…ちぇ。


「今から行く所って、ゼウォン行った事ある?」

「いや、ないな。王都は何度か訪れたが観光じみた事はしなかったから」

「そうなんだ。明日ランク試験なのに付き合ってくれて、ありがとう」


ゼウォンは惚れ惚れしちゃうような微笑を浮かべて、手を差し出してきた。

引き寄せられるように、自然とその大きな手をとる。


頬が熱い。体が火照る。

これは、たくさん食べて代謝が良くなっているからだよ。ゼウォンと手を繋いでいるからじゃない、と思いたい。




さすが噂のスポットというか何というか、到着した目的地はカップルだらけでした。

こういうのって、国どころか世界を超えても共通してるのね~なんて思いながら夜景を堪能。


しばらくの間、淡く光る王都に見入っていたけど、なんだか隣から視線を感じたので仰ぎ見ると。


食市場でみせた、あの甘い瞳をしたゼウォンが、私をジッと見詰めていた。


ドキッ。カァ~ッ。途端に跳ねる心臓。赤くなる顔。(←本日2度目)


「……ユリーナ」


少し掠れた艶っぽい声で名前を呼ばれて、下腹部にナゾの感覚が沸き起こる。

絡めとられたかのように、魅惑的なアメジストから視線が外せなかった。


彼の大きな手が私の肩にかかる。

えっ?と思った時には、広く逞しい胸に、赤面した顔がくっついていた。


ぅきゃ~~~っ、これって、もしかしなくても抱きしめられてる?!


なんでこうなったのかサッパリわかんないけど、拒む、という選択肢は思い浮かばなかった。

でも、赤らむ顔は見られたくなくて、彼の胸に押し付けるようにして顔を隠すと、私の体をフワッと包んでいた筋肉質な腕に力が入り、ギュワっと拘束される。


ぐえっ、ぐるじいぃぃーーっ。


「っっ、ゼウォ、ン、苦しい…」

「!!、あ、スマンっ、つい…」


フッと腕の力が緩み、ホッと息をつく。


「んもうっ、「つい…」って何よ~?圧迫死するとこだったじゃんっ」


プクゥッと脹れて抗議すると、彼は「悪かった…」と眉を下げて謝ってくれた。


「つい、加減できなくて…次からは気をつけるから」


え゛?! 次からは…って、それってどーゆー意味なんでしょうか??

なんか今後も抱きしめるの当然ってな台詞ですが……これは如何いかがなものなのでしょうか?

あんな瞳をして、こんなことされると、ゼウォンも私と同じ気持ちだって期待しちゃうんですケド…


ここは思い切って彼の気持ちを聞いちゃう?いやいや、その前に自分の気持ちを告げるべき??

あーうー、どうしよう~~~?!


……

…………

…………… ま、いっか。


敢えて今、白黒つける必要もないし。

こうしてゼウォンと触れ合っていられるだけで幸せだしね。


頭に浮かんだ事はスルーして、私を包み込む彼の逞しい温もりに浸ったのでした。




主人公、以前「ずっと一緒にいたい」とか「離れたくない」とか「お別れするのは耐えられない」とか言って、盛大にコクっちゃってるってことに気づいてない…(^^;)

ゼウォンはゼウォンで、気持ちを全面的に態度にしてるし「俺も離したくない」と告げてるから、自分の想いは伝わっていると思っているんです。

そしてレギは、かみ合っている様でビミョーに合わない2人の状態を面白がっている、と(笑)

ちなみにルーシェは、最初から主人公とゼウォンはツガイ(恋人同士)だと思ってます。



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