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第3話~豪華なお部屋でこの世界のお話を聞きます~

今回、少し長めです。

説明文が多いです。



ぐにゃ~~~ん



気持ち悪い…。

転移って内臓シェイクされてるみたい。

アッという間だったけど、結構気持ち悪かった。


空間魔法とやらで移動した私たちは、シプグリールの街を一望できる丘の上にある大きなお城みたいな建物の前に立っていた。


「第一番隊隊長メルーロ、ギルガを堕とせし方をお連れいたしました。族長にお会いしたく、謁見願います」


お城の入り口前にいた門番らしい人にメルーロさんが告げると、門番さんは歓喜と驚愕が入り混じったような表情で私を見た。


あ、私、この門番さんが思ったことわかっちゃった~

(あの巨大黒鳥やっつけたんだ、すげー!やったー!って、こんなひ弱そうなオンナが?!)

ってとこだろうな。

メルーロさんだって私のこと「弱そう」って言ってたしね。


気後れしつつも、お城の中に入っていくメルーロさんの後をついていく。

広々とした廊下を歩くこと数分、不意にメルーロさんが私の方へ振り返った。


「ユリーナ様、見知らぬ所へいきなり来て、ご不安もおありでしょう。いち早くこの世界のことをお知りになりたいと思われてるかと存じますが、まずは我が族長にユリーナ様をご紹介したいのです。」


まあ、当然でしょうね。

私もこれから情報収集とかでお世話になるわけだし、族長さんとやらに挨拶するのは礼儀でしょう。

お友達のお宅に遊びに行ったときに、その家のご家族に挨拶するのと同じよね。ん?微妙に違うかな?


「族長さんへのご挨拶は当然のことだと思ってますよ。でも私、この世界の挨拶の仕方がわからなくて…。私のいた国では膝は付かずに腰をまげて頭を下げるのですが、それだと失礼にあたりますか?」

「いえ、大丈夫ですよ。ユリーナ様の思うとおりになさって下さい。」


メルーロさんが柔らかく微笑みながらそう言ってくれたので一安心。


それから更に数分歩くと、キレイな模様が細かく彫られてる大きな両面扉の前に着いた。

扉の前に立っている兵隊さんっぽい人にメルーロさんが何事か告げると、兵隊さんは先程の門番さんと同じような表情で私に視線を向けてきたが、すぐに扉を開けてくれた。


メルーロさんに続き、一歩踏み入れた途端、視界に入ったのは豪華絢爛な場所。


なんじゃ此処は~~っ

ベルサ○ユ宮殿?バッキ○ガム宮殿?シェーンブル○宮殿??

きらびやかすぎる……

こんなゴージャスな場所にパーカーにジーンズ姿の私。

明らかに場違いだよね?!ホントに入って良いの??


「ユリーナ様、どうされましたか?」

「あ、えっと。あまりにも素晴らしい所なので気後れしてしまいまして…」

「大丈夫ですよ。族長がお待ちですので、どうぞ」


怯む気持ちを何とか落ち着かせて、メルーロさんに続く。

ふっかふかの高価そうな絨毯を3分の2くらい進んだところで、メルーロさんが歩みを止めて膝をついき、玉座(なのかな?めっちゃ豪華な椅子)に腰掛けている壮年の人(?)に向かって口を開く。


「族長、第一番隊隊長メルーロ、ギルガを堕とせし方、ユリーナ様をお連れ致しました。ギルガは手配者収容所に転移させたこと、ご報告致します」

「うむ、大儀であった。…そなたの言を疑うわけではないが、本当にこちらの女性があのギルガを堕としたのか?」


う。やっぱり、おかしいって思いますよね?


うろたえる私に、大丈夫ですってカンジでメルーロさんが微笑むと、私がこの世界に来たいきさつなどを族長さんに順立てて説明してくれた。

私が異世界から来たと聞いて族長さんもビックリしてるみたいだったけど、すぐに元の表情に戻った。

でも「そうか、その奇妙な服は異世界の服装なのだな…」と呟いたのは聞こちゃいましたけどね。

パーカーにキャミ、ジーンズという服装は異世界では奇妙なのか…


そして、メルーロさんの説明が一通り終わると、族長さんは豪華な椅子に座ったまま、私をジッと見た。


「まずは、例を言おう、ユリーナ殿」


族長さんにお礼を言われ、私はひたすら恐縮する。


「いえ、あの、私はホントたいしたことしてないんです。偶然なんです」

「それでも、ユリーナ殿がいなかったら、我らはギルガの恐怖に脅かされ続けているところなのだ。もちろん、布令の通りに大金貨1000枚を与えよう」

「はあ…(金貨って…お金ってことよね。これからこの世界で生きていくには、お金も必要よね。大金貨1000枚がどのくらいの貨幣価値があるのかは分からないけど、ここは素直に頂戴しちゃお)…ありがとうございます」


それにしても、お金もらえるなんて、あのバカでかい鳥は賞金首だったのね

棚から牡丹餅だわv


「ところでユリーナ殿。今宵はギルガが居なくなったことを祝い、盛大に晩餐会を開く予定なのだ。是非ユリーナ殿もご出席くだされ」

「えっ!!!晩餐会?!わ、私はこちらの食事のマナーは全く知らなくて、その、お気持ちは嬉しいのですが……」


晩餐会って、そんなぁ…。

そりゃ、こちらの世界の食事は大いに興味あるけど、多分たくさんの人が集まるんだよねぇ…気疲れしそうだし、出来ればお断りしたいな…

そんな消極的な気持ちで族長さんを見ると、彼は苦笑した。


「ユリーナ殿もお疲れだろう。部屋を用意するので、まずは一息ついてくだされ。晩餐会まではまだ大分時間もあるので、メルーロにこの世界のことを聞くと良い。メルーロ、ユリーナ殿を東の貴賓室にお通ししなさい」

「は、承知いたしました。ではユリーナ様、ご案内いたしますので、こちらへどうぞ。族長、御前失礼致します」


メルーロさんが一礼したので、私も同じようにし、族長の間から東の貴賓室へと向かった。


案内された貴賓室もすごい部屋だった。先程の族長の間ほどでは無いが充分ゴージャスだよ!

豪華で高級そうな絨毯にカーテン、フカフカのソファに、高そうなテーブル。

思わずキョロキョロしてるとメルーロさんがソファをすすめてくれたので、遠慮なく座る。

私の向かい側のソファにメルーロさんがかけると、早速この世界--ヘアグというらしい--のことを話し出してくれた。


ヘアグの世界観は、地球と違って球体ではなく平面に大陸や海が存在し、最果ては濃霧に阻まれて先に進むことは出来ないという。

驚いたことに、ヘアグには大小2つの太陽があり、月が無いのだ。夜空に輝くのは星だけ。

大きい太陽は〔主光〕といい、小さい太陽は〔副光〕というらしい。

主光は東から昇り、副光は西から昇り、副光が主光に完全に隠れて2つの光が合わさる時を〔正光〕といい、この時間は昼食をとる時間になるのだそうだ。


日本で言う正午と同じ時間よね~、正光と正午って似てるなぁ


ヘアグには人間以外にも魔物、精霊、怪物が居て、人間・魔物・精霊は共存しているが、怪物は各々好き勝手に生きていて、神出鬼没で生態系はイマイチ不明らしい。気性は残虐で獰猛、よく人間やおとなしい魔物の町や村を襲っているのだそうだ。

あの巨大黒鳥ギルガも性悪な怪物だそうで、災害、厄災扱いらしく、ここシプグリールも年に2,3度ほど襲撃されていたんだって。


あの鳥、性悪な怪物だったんだ…あの殺気はハンパなかったもんね~。ヤツが動く前にメルーロさん達が来てくれて良かったよ。お礼言うのは私の方だな~




扉がノックされ、メイドさんらしき女性がお茶セットとお菓子と思われる物を銀色のワゴンに載せて入ってきた。


あれ?この人、顔は族長さんやメルーロさんと同じような羊さん風な顔立ちだけど、角が無い。

女性だからかな?…まぁいいや。


女性は優雅な動作でテーブルの上にお茶とお菓子を置くと、一礼してしずしずと退室した。

黄緑色をしていて、ハーブっぽい香りのお茶と、クッキーのような焼き菓子。

美味しそう♪

ちなみに茶器や器も、この豪華なお部屋にふさわしく高価そうなものだ。

メルーロさんが、どうぞ、と勧めてくれたので、お茶を一口飲んでみる。

うん、美味しい!

少し甘みがあるけど、後味がスッキリしていて飲みやすい。

思わずニッコリした私にメルーロさんが「お口にあったみたいで良かったです」と微笑みながら、同じようにカップに口をつけた。

そして、また話の続きをしてくれる。


ヘアグには中央にかなり大きい大陸があり、その周りに様々な島が点在するらしい。大陸は1つしかなく、

東の地は風の神の加護があり、魔物の〔魔竜〕精霊の〔風の精〕人間の〔青の民〕が、

西の地は土の神の加護があり、魔物の〔魔獣〕精霊の〔土の精〕人間の〔緑の民〕が、

南の地は火の神の加護があり、魔物の〔魔鳥〕精霊の〔火の精〕人間の〔赤の民〕が、

北の地は水の神の加護があり、魔物の〔魔甲爬〕精霊の〔水の精〕人間の〔黒の民〕が、

それぞれに国や都市、街や村や居住区を成して暮らしているらしい。

魔物の魔鳥・魔獣・魔竜ってのは想像つくけど、魔甲爬って何?って聞いてみたら、水蛇や鰐や海亀や蟹の魔物なのだそうだ。なるほど。

〔青の民〕は青い髪に藍色の目、〔緑の民〕は緑の髪に茶色の目、〔赤の民〕は赤い髪に橙色の目、〔黒の民〕は黒の髪に灰色の目をしているという。


へ~~、と話を聞きながら内心戸惑う。

だって、私、目の色が藍色なんだもん!

曾祖母がイギリス人なんだけど、隔世遺伝なのかな、小学校の高学年頃から段々目の色が青みがかってきちゃったの。それでも中学2年くらいまでは光の角度で青みがかって見える程度で普通は黒目だったから気にしてなかった。

でも高校生になってからは完全に藍色の目になってしまい、カラーコンタクトじゃないかと疑われたんだよね。だからわざわざ黒のコンタクトをしていたのよ。大学生になってからは面倒だから黒コンは止めたけどさ…


今の話だと、〔青の民〕の目に〔黒の民〕の髪ってことになるじゃん。

見た目もイレギュラーってことだと思うんだけど、それにしては羊緑族の方々は友好的。

気にしなくても大丈夫よね。


私はお茶をまた一口飲んで、気持ちを落ちつけ、メルーロさんの話に意識を戻した。


次にメルーロさんは魔法について説明してくれた。

魔法の種類は風、土、火、水、空間、重力があり、それらとは別に魔物や精霊は独自の魔法が使える。また、魔物や精霊は魔力がなくても独自の能力があるのだそうだ。人間は独自の能力というものは無いが、魔物や精霊と召還契約をして彼らの力を借りることが出来るのだとか。

ヘアグの全人口の半分は魔力をもたないので、魔力があるというのは力があるということになるらしい。

そうか、半分は魔力が無い人になるんだ。良かった~、魔法なんて当然使えないもんね、私。


「じゃあ、メルーロさんは貴重な人材ってことですよね、空間魔法なんて使っていたのですから~」

って何気なく言ったら、メルーロさんは少し照れたようだった。

40代の中年に見えるメルーロさんがなんか可愛く見えちゃったよ。あはは

そういえば、メルーロさんは何歳なんだろう?

女性に年齢を尋ねるのはためらっちゃうけど、男性は構わないよね


「メルーロさんは、何歳なんですか?」

「私ですか?今年で36歳になります。」

「そうなんですか~(ちょっと老けてるな~)ええと~…、私は今、18歳で、今年19歳になるんです。」


私が18歳っていった途端、メルーロさんはすごく驚いた顔をした。


「え?!ユリーナ様は御歳18歳なのですか?11、2歳くらいと思ってましたが…」


ええ?!11、2歳って、小学生じゃん。そりゃ無いよ


「私、そんなに幼く見えますか?私のいた国では20歳になると成人式といって大人だと認められる式を行うんです。あと1年で私も成人なんですよ」


まだ大人じゃないけど、もうすぐ大人なんだぞ~。知識は赤ちゃん並みだけど。体は立派な(?)女なんだぞ!と、ちょっとムッとしながら言う。

すると、メルーロさんが見開いた目を更に見開いた。


「大人になる儀式が…20歳?ヘアグでは人間は15歳が成人ですよ」


はいぃ?!15歳が成人?そっちがビックリだよ!!

あ、でも成長速度が早いのかな?だとしたらメルーロさんが老けてるのも納得するんだけどな…

それとも時間の流れが違うとか。あ、何かヤな予感。


「あの~…、ちなみに1年間って何日ですか?」

「704日です…」


ななひゃくよん!

704日ですか、365日の約2倍じゃん。予感的中。

おそらく時間軸が違うんだろな…太陽2個あるし。地球見たいに丸い星じゃないみたいだし。


「あの…ユリーナ様のいらした世界では1年は何日なのですか?704日ではないのですか?」

「はい、私の居た世界…地球って言うんですけど、地球では1年は365日なんです。1日24時間、7日間で1週間、30日か31日で1ヶ月なんです。ヘアグとは違いますね…」

「なるほど、地球…と言う世界と、ヘアグでは1年間の日数が2倍近く異なるのですね…。」

「ええ、地球では18歳ですが、ヘアグ年齢はいくつになるかよくわかりません…」

「そうですねぇ…」


なんとなく、私たちはカップを手に取り、お茶を飲んだ。お互いちょっと気まずいカンジ。

ハハハ、と空笑いして一息ついた後、仕切り直すようにメルーロさんが幾分落ち着いた声で話し出す。


「地球という世界と、ヘアグでは時間が色々と違うみたいです。

まず、1日は26時間で、1ヶ月は44日、1年は16ヶ月で704日となります。

1月から4月までを風の季節、5月から8月までを火の季節、9月から12月までを土の季節、13月から16月までを水の季節、といいまして、月ごとにも別名があります。

1月=風の青月、2月=風の赤月、3月=風の緑月、4月=風の黒月

5月=火の青月、6月=火の赤月、7月=火の緑月、8月=火の黒月

9月=土の青月、10月=土の赤月、11月=土の緑月、12月=土の黒月

13月=水の青月、14月=水の赤月、15月=水の緑月、16月=水の黒月

と、言います。

日付けは夜明け時に変わり、時刻は正光を基準としてます。夜明けから正光1時間前までを風の刻、正光1時間後から火の刻、土の刻、水の刻となり、正光前後1時間とは別に、それぞれ6時間ごとの刻を刻みます。」


ふむふむ。

ヘアグは26時間だから、正光前後の時間を無視して24時間に置き換えてみると…午前6時から正午までが風の刻、正午から18時までが火の刻、18時から深夜0時までが土の刻、深夜0時から6時までが水の刻ってワケね。

どうやら1分60秒で1時間60分というのは同じみたいなので助かった。


私が頭の中であれこれと置き換えて考え込んでいると、メルーロさんが「色々と一度にお教えしても、ユリーナ様が大変ですよね。ユリーナ様が、ヘアグの共通文字をお解かりになるなら、一般知識や、一般常識などをまとめて書きましょうか?」と言ってくれた。


おおおーーっ、それは大変ありがたい提案!

実は私、この貴賓室の本棚にある本の背表紙がちゃんと解かるのだ。ってことは、ヘアグの共通文字とやらも解かるだろう。

『監視者』の意思疎通能力、ぐっじょぶ!


と、いうわけでメルーロさんの申し出に甘えることにした。

メルーロさんには、よけいな手間かけさせちゃうけど、私は聞いても忘れちゃう確立高いし書いて残してもらえると後からおさらい出来るから、とっても助かるの。


そんなこんなで、気づけばかなり時間がたっていたようだ。お腹すいたなぁ。

お茶とお菓子じゃ足りません…晩餐会に出席しないとゴハンにありつけないのかしら…

でも、今は一度に色々ありすぎて、あまり人前に出る気になれない。


「メルーロさん、失礼を承知でお願いがあるのですが…先ほど族長さんがご招待してくれた晩餐会、辞退させていただきたいのですが、良いですか?」


ためらいがちにお願いすると、メルーロさんはあっさりと承知してくれた。


「族長もわかってらっしゃるでしょう。ユリーナ様を晩餐会にご招待したのは、形式上のこともありますから。もちろんご出席くださるに越したことはないですが、ご無理をさせてまでとは族長も思っておられないですよ。後ほど、こちらに食事をお持ち致しますので本日はこのまま御寛ぎ下さい。私はこれで一旦失礼いたします。」

「あ、はい。色々ありがとうございます。」


メルーロさんは笑顔になり、では、と一礼して部屋を出て行った。



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