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第28話~明かされた正体~

視点が 第3者{シュオイ}→第3者{ゼウォン&レギ}→主人公 と変わります。



〔緑の民〕の国グリンジアス王国の王都に最も近い街ニアルース。

この街は大きな街道沿いにあるため、王都に向かう商人や王都から旅立った冒険者などの足休めに適した立地にある。

宿屋や酒場、旅に必要なものを売る露店が立ち並ぶ街だ。

だが、上流階級域になると街並みは一変、高級感漂う屋敷が立ち並んでいる。


その上流階級域の北東には、侵入者を阻むかのような広大な森が広がり、森の中心には有力貴族にも勝る立派な屋敷がある。


屋敷の当主であり、裏組織〔闇の帝団〕元帥シュオイは、手にしていたインク筆(万年筆のような筆記用具)を、机の隅に置いてある筆立てに収めた。


「こざかしいネズミが…何処で飼われているヤツだ?」


シュオイの呟きが聞こえたかのように、扉を叩く音がする。

この叩き方は、ジェイか。


「入れ」

「失礼いたします」


足音も立てずに滑らかな動作でジェイが入室する。


「どこのネズミだ?」

「やはりお気づきでしたか。グリンジアスの諜報員です。…おそらく第2王子の関係かと」

「ふん…魔力は保有しているんだろうな?いつも通り〔人造怪物〕にしておけ。先日取り逃がしたネズミはどうだ?」

「申し訳ありません。逃げられました。ですが十中八九〔瞬耳〕の子飼いかと」

「わかった。下がれ」

「はっ、失礼致します」


まったく煩わしい…

ここ最近は、この屋敷に忍び込もうとする馬鹿なネズミが増えた。

ハフィスリードの差し金か。この場所を突き止めたのは、流石と言っておこうか。

だからこそハフィスリードに王太子、延いては国王になってもらっては困るのだ。

一度どこかの農村でも壊滅させて、再度脅しをかけておくか。

丁度性能を試してみたい〔人造怪物〕もいるしな。


シュオイは、書き物机から離れると窓際に立ち、屋敷を囲む深い森を眺めた。


市井にも、ハフィスリードが守護精に見放されたとの噂が流れている。

もうすぐだな。


残忍な笑みを浮かべたシュオイは、しばし森を見ながら思考に耽った。






その森から、屋敷を見詰める2対の目。

1対はアメジストのような紫。もう1対は金箔を雑ぜたルビーのような金緋。


「オイラてっきり屋敷全体に地のガードをかけているかと思ったんだけどなぁ~、部分的とはね。3,4…地下も入れると7箇所はあるかな。これ、どーすんだ?」


レギがチラッと隣を伺い見ると、ゼウォンは眉間に皺を寄せて何やら考えていた。

屋敷を見つめながら熟考している様は気軽に話しかける雰囲気ではない。

刻一刻と時間が過ぎたが、レギはゼウォンが何かしら方法を考えていると思い、ゼウォンが発言するのを黙って待っていた。


やがて、ゆっくりとゼウォンがレギへと向き直り、口を開いた。


「屋敷全体に地のガードをかけていたのなら、広範囲魔法特有の綻びを探って突破しようと思っていたが…要所ごとにガードしてるとはな。中には囮ガードもあるかもしれないが、いずれにせよ封魔牢にはガードがかかっているはずだ。これではガード自体を抹消しなければダメだな」


「だな。オイラもそう思う。でもさ、ゼウォン承知済みだと思うけど~、オイラここじゃ〔主神の加護〕は使えないし~、コルエン裏山の例の異質魔法はユリーナしか使えないじゃん。どうすんだ~?」


どうする?と聞かれたゼウォンは、視線をレギから屋敷へと移し、屋敷の中の封魔牢にいるであろうユリーナを想う。



そして、決意を固めた。




「俺が〔主神の加護〕を使う」




〔主神の加護〕とは、魔法ではなく〔神技〕とよばれるもの。

己の魔力と引き換えに主神の力を己の身に宿らせる技であるが、この技は高質で大量の魔力が必要なため、扱える者は極僅か。

人間では〔青の民〕〔緑の民〕〔赤の民〕〔黒の民〕の王族、魔物では最上級魔といわれる金銀魔、精霊では精霊長や姫精霊といわれる最上位の精霊のみが扱うことが出来る技なのだ。


仮にゼウォンが〔青の民〕の王族だとしても、東の地でなければ〔主神の加護〕は使えない、と思ったレギは


「はあぁ…ゼウォンさぁ、ユリーナの頓珍漢がうつったか~?」


と、何気に酷いことを言ってみた。


その言葉に苦笑を返したゼウォンは、後頭部に手を回して着けていた額防具を外すと、何やら髪をいじっていた、が。


……

………



((衝撃の事実発覚!などのスクープ映像で流れるBGMを思い浮かべて下さい))



「!!!ゼッ、オゥン?!その髪、どーなッてんダぁ~~~?!」



青髪の模造髪を手に持って佇む者の髪色は―――銀色であった。



驚愕の色を隠せないでいるレギをよそに、ゼウォンは模造髪だけではなく身に着けていた防具や衣服を全て脱いで亜空間にしまった。

(ユリーナが居たら赤面悲鳴モノだが、レギだからノーリアクション)

未だ茫然自失のレギの前で、更にボーゼンとする出来事が起こった。



一瞬、淡い光に包まれたゼウォンは―――銀狼になっていた。



「レギ」


銀狼に名を呼ばれハッと我に返ったレギは、金ルビーの瞳を数回瞬かせて目前にいる者を凝視した。


「ゼウォン…だよな?その姿、は。西の銀魔…なのか?」


恐る恐ると言ったカンジで質問したレギに「ああ、そうだ」と、開き直ったかのようなアッサリした返事が返ってくる。


「俺が人間として生きてきたのには理由ワケがあるんだが…それは後で話す。今はユリーナを助け出すことが先だ」


「……わかった」


物分りのいいレギの態度を有難く思いながら、ゼウォンは目を閉じて己の魔力を捻出し始めた。



「『我、西の地は魔獣銀狼族ゼウォン、わが身の魔力を以って主神〔土の神〕にこいねがう。偉大なる主神の御力を、このゼウォンに宿らせ給え』」


ゼウォンが祈言を紡ぎ終えた。



一拍後



銀狼は、緑に輝くオーラに包まれた。



「やった…ホントに…」


レギの呟きは、気高き銀狼の咆哮によって掻き消される。



ゥウオオオォォーーーン……



その咆哮は、森に、屋敷の中に、響き渡り---地のガード諸共あらゆる結界を打ち消した。



「これだけ分り易く行動すれば、バレバレだな。レギは陽動を徹底してくれ。俺は封魔牢を、ユリーナを探し出す!」

「了~解!いっちょハデにやっちゃうよ~~」


西の地最凶の犯罪組織の本拠地に殴りこみ同然で乗り込むというのに、レギは妙に楽しそうだ。

その姿は、聊か気負いすぎていたゼウォンに落ち着きを取り戻させた。


「頼りにしてるぜ、レギ」

「まっかせといて~。そっちも必ずユリーナを連れ戻してくれよ?」

「もちろんだ」


西の銀魔と南の金魔は視線を合わせて頷くと、屋敷に突撃したのであった。






「いったぁ~い」


牢の床に頭突きしちゃったよ~…うぅ~痛い。


今しがたまで私、ビリー○ブートキャンプやってました。えへ。

だって、ずっと蹲ってジッとしてると、どんどんネガティブになっちゃうから体を動かして気分転換しようと思ったの。

行動範囲半径1m以内で、何か体を動かせないかなって考えて思いついたのが、以前ブレイクしたコレ。

詳しいやり方なんて覚えてないから、適当にキックとかパンチしてるだけなんだけどね。

挙句の果てには、見えない壁のような障害物が弾力性あるってのをいいことに、その障壁をサンドバック代わりにしてパンチやキックをお見舞いしてたんだよね。

ストレス発散とばかりにドカドカとやっていたら、急に障壁が消えちゃったみたいで、まさに力いっぱいパンチをしようとしていた私は、その勢いのまま、前のめりに突っ伏しちゃったってワケ。

勢い良すぎて普通だったら気絶してたかも。心身強化、万歳!


でも何故急に障壁が無くなったのだろう?


--「ミーグ、聞こえる?」

--『はい。なんでしょう?ユリーナさん』

--「あのね、さっきまであった、見えない障壁が急になくなったの」


そう言いながら、さっきまで通れなかった所を進み、手の届かなかった鉄格子を握ってみた。


--『もしかしたら封魔牢の結界が解けたのかもしれませんわっ、ユリーナさん、試しにワタクシを出してみて下さいませ!』

――「あ、うんっ」


半信半疑ながらも、試しにやってみた。すると…

亜空間が出現したではあーりませんか!

私の掌にくだんのゴージャス指輪が光り輝いている。


『やりましたわねユリーナさんっ。理由はわかりませんが今なら魔法が使えます!封魔牢の結界が戻る前に脱出しましょう!』

「うん!!」


ミーグの言葉に力強く頷き、早速鉄格子をぶち壊そうとして、ハッと気づく。


「その前に着替え!!」


亜空間から服一式と、シプグリールの修行時に履いていた靴を出して、素早く身に着けた。


「よし!逃げよう!!」

『あ、ユリーナさん。ワタクシの器はグリンジアス王家の方以外は指に填める事ができないので、お召し物の中に仕舞っていただけますか?、亜空間の中はご遠慮したいのです…』

「さすがにもう亜空間に入れようとは思わないよ。でも途中で落としちゃったら大変だし…。そうだ、紐に通して首にかけるとかでも良い?」

『はい。結構ですわ』


亜空間から革紐(髪を括る用の紐)を出すと指輪を通して、ネックレスよろしく首に下げた。

そして、薙刀も出すと〔風〕の魔力を込め、某有名怪盗ルパ○3世の石川五○門さんの戦闘シーンを強くイメージ。

鉄格子に向かって身構える。


「『斬鉄刀!』」(←ダ○ソン掃除機以来、一言呟くようになった)


スパッ---ガランガラン…


切った-――支えを無くした鉄棒が床に転がった…


「あらら…我ながら〔風〕の薙刀の威力にビックリだわ…」


まさか一振りでイケるとはね。それとも鉄格子の強度が弱かったのかな?

もともと牢から出られないような障壁があったんだから、硬質な鉄を使ってなかったのかも。ラッキーv


それはそうと、薙刀どうしようかな?

いつまた魔法が使えなくなるかわからないから、このまま持っていたいところだけど、万一ブーツみたいに没収(?)されたら非常に困る。特注品だし。

それに柄が長いから逃げるときには邪魔になりそう。

うん、ここは亜空間にしまっておこう。


私は薙刀をしまうと、〔闇の帝団〕から逃れるべく牢から脱走したであった。



第13話でレギが言った〔主神の加護〕

ようやく説明できました(^^;)

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