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第27話~判明した居場所~

視点が 主人公→第3者{ゼウォン}→主人公→第3者{ゼウォン} になります。



冷たい目をした緑の髪の女は、鉄格子の前まで来ると酷く冷酷な一瞥を投げてきた。


「ようやく目が覚めたのね。なかなか起きないから薬の量を間違えたかと思ったわ」


この声は、聞き覚えがある。

私を〔地中転移〕とやらで引きずり込んだヤツだ!


「一体何なのよ?!これ、誘拐じゃないの?!自己紹介と状況説明しなさいよ!!」


女の視線に怯むことなく、私は怒りにまかせて声を荒げた。


「うるさい女ね。誘拐だから何なの?必要だから攫った。それだけのこと。アンタ、南の金魔とどんな関係なの?調べ上げたけどアンタの体に召還印は無かった」


コイツっ…自己紹介も状況説明もする気ないんだな。

南の金魔っていうのはレギのことか…どうして知っているのだろう?

でもこの調子じゃ、聞いたところで答えてはもらえなさそうね。

とりあえず私の体を調べたってコトは、この女が私をこんな格好にしたんだな。

男の人じゃなくて良かったけど、ムカつくことに変わりは無いよ!


それよりも気になるのは〔召還印〕ってヤツ。

でも、ここで〔召還印〕てのは何ですか?って聞くのは、常識知らないみたいで(実際知らないケド)よろしくないだろう。


黙り込む私に、冷酷女はチッと舌打ちをする。


「素直に答える気は無いってこと?生意気な女ね。拷問して吐かせたいところだけど…アンタの体に傷をつけるわけにはいかないからね」


冷酷女はそのまま踵を返して立ち去ろうとした。


「ちょっ、待ちなさいよ!状況説明くらいしてよ?!」

「状況を知ったところでアンタはこの〔封魔牢〕からは出られないんだよ。土の赤月までおとなしくしてな」


冷酷女は殊更冷たい視線で私をチラッと見た後、そのまま去ってしまった。



土の赤月まで…それって、もしかして王太子問題と関係アリ?

ミーグに相談したいけど、亜空間が出せないんだから聞けないなぁ。

もう1度眠ったら会えるかもしれないけど、全然眠くならない。

ミーグ、お話できないかなぁ…


--『ユリーナさん』


ん?今、ミーグの声が聞こえたような気が…


--『ユリーナさん、ワタクシを呼んでくださいましたか?』


頭の中に響くようなカンジでミーグの声がする。


「ミーグ?あれ?なんで?」

--『ユリーナさんがワタクシに意識を向けて語りかけてくださったので、繋がることができたのです。』

「そうなの?良かったぁ!亜空間使えないから指輪出せなくて困ってたんだ。でもミーグとお話できて助かるよ」

--『意識してくだされば念話できますわ』


念話かぁ。ミーグとお話するイメージをして、心の中で語りかければいいのかな?


--「ミーグ、私の声、届いてる?」

--『はい、ユリーナさん』


ミーグの返事が返ってきたので、念話成功ってことね。

早速、土の赤月までのことを相談しようと思ったら、ミーグの方から質問される。


--『ユリーナさんの魔力量は充分あるようですが、ワタクシを出すことが出来ないのは何故なのでしょう?』

--「なんかね、私、今、封魔牢ってところに閉じ込められているの。魔法使おうと思っても出来ないの…」

--『封魔牢?そんなものがあるのは危険指定者収容所とか限られた所になりますよね?あ、でも〔闇の帝団〕の本拠地なら、あってもおかしくないですね…困りましたわ』

--「じゃあ、やっぱり私〔闇の帝団〕に囚われているってのは確実なのね。ね、本拠地ってのはヌーエンにあるのかな?それとも…別の場所に転移させられちゃってるのかな?」

--『どうでしょうか?〔闇の帝団〕は各地に拠点があると言われていますが、本拠地の場所は知らなくて…』

--「そう……ところでミーグ、今しがた〔闇の帝団〕らしき女にさ、土の赤月までおとなしくしてろって言われたの。それって、グリンジアスの王太子が決まるまで監禁決定ってことかな?」

--『そうだと思います…』

--「う~ん、マズイね。あ、そうだ!第2王子様はさ、ミーグと繋がっているんでしょ?この場所察知して助けに来てくれないかな?」

--『亜空間内にいるワタクシを察知することは主でもできませんわ』


ありゃ。指輪を亜空間に入れたのは大失敗だったみたい。

亜空間から指輪を出せれば何とかなるかもしれないのに、この牢に監禁されている限り無理だし…

自分がどのくらい眠っていたのか分からないけど、〔地中転移〕させられたのは土の青月20日のこと。ヘアグでは1ヶ月が44日だから、2,3日経過していたとしても土の赤月まで、あと20日ある。

その間に何とか脱出方法をみつけなきゃ!!


拳を握り締めて決意し、私はくまなく牢内を調べ始めたのでした。






「約束のモノだ」

「おう。確認させてもらう。ちょっと待ってろ」


ゼウォンが持って来た薬を受け取ったソドブは、薬を持ってしばらく姿を消していたが、やがて戻ってくると。


「ちょいと試させてもらったぜ。良質な薬だな。さすがだ」

「……ヤツラの場所は?」

「カカカッ、そう焦るな。新たな情報が手に入ったんだ。追加料はとらねぇからさ、まぁ、座って聞きな」


ゼウォンが座ると、ソドブもドカっと腰を下ろして身を乗り出す。


「〔大地の指輪〕はユリーナが亜空間に入れちまったままらしいぜ」

「!!!ユリーナが指輪を?!」

「そう。どうやら『情報広場』でアレフに渡されたらしい。何故アレフがそんなことしたかは知らんがな」

「……それで?」

「ユリーナもアレフも〔闇の帝団〕の本拠地にある封魔牢に監禁されている。これは、内部に潜り込んでるヤツの情報だから確かだぜ」

「彼女は無事なのか?」

「そういうこった。少なくとも土の赤月まではな」

「土の赤月まで?」

「正確には王太子が決まるまでは、だな。その後ユリーナとアレフがどうなるかまでは掴んでいない」


とりあえず今はまだ無事なんだな。…ユリーナ。

だが、悠長なことは言ってられない。明日、急に王太子が決まってしまう可能性だってあるのだ。


「それで本題の〔闇の帝団〕本部なんだが…場所はわかっても中には入れねぇぜ?」

「何故だ?」

「地のガードがかかっているからだ。ヤツラは優秀で強力な魔法士を何人も囲い込んでいる。」


地のガード。守護に長けた〔土〕の魔法の中でも最高峰の絶対防御魔法。

そんなものを使えるほどの魔法士がいるってことか。

だが、それでも。


「行ってみないとわかんねぇだろ。早く場所を教えろ」

「カカカッ、決めたらとことんな性格は変わらねぇみてえだな。っとにヴァルに似てやがる。……ニアルースだ。グリンジアス王都から南西に早馬で2日ほど行ったところにある街だ。その街の上流階級域、北東にある1番大きな屋敷。そこに〔闇の帝団〕元締のシュオイがいる。」


ニアルースか。ここヌーエンから馬を飛ばして5日ってところだな。

5日間のうちに王太子が決まる可能性は低いが急ぐに越したことはない。


ガタンっと椅子が倒れそうなほど勢いよく立ち上がったゼウォンを、ソドブが「おい」と引き止めた。


「何だ?ソドブ」

「おめぇよ、そんなにユリーナって女が大事なのか?ガキの頃から妙に冷めてて生意気で、ヴァル以外には懐こうとしなかったのによ、随分変わったじゃねえか?」

「……もう、行く」


振り返りもせずに去っていったゼウォンを、座ったまま興味深げに見送ったソドブがボソリと呟いた。


「ルキア様が捕まった時のヴァルみたいだな…死ぬなよ、ゼウォン」






この牢、おかしい。

広さは6畳くらいあるのに、移動できるのは牢の中心から半径1mくらい。

先に行こうとすると、なんだかゴムのように弾力のある見えない障害物が在るみたいで、全然進めない。

これじゃ調べようがないよ~…。薙刀の(得物不要の)型もできないしぃ~…。


おかしいといえば、ここに入れられてからお腹が空かない。おトイレに行きたいとも思わない。寝ようと思えば眠れるけど、眠たいとも思わない。

それなりに時間が経ってるはずなのに、食欲も排泄欲も睡眠欲もないなんて、かなりオカシイよ!


--「ミーグ、ここヘンだよ。私、お腹空かないし眠くならないの」

--『封魔牢全体を〔空間〕で固定化してるのでしょうね。ユリーナさんの亜空間と同じ原理ですわ』


確かに亜空間道具袋に入れた食材は入れた時のままだけど、じゃあ今の私は時が止まっている状態ってことかな。


--「監禁されて、どのくらいの時間が経ったんだろうね?」

--『ワタクシにもわかりませんわ…主はどうなっているのでしょうか…』

--「そういえばミーグはどうして第2王子様と契約したの?今までも誰かと契約したりした?」

--『今までも仕えていた主は居りましたが、ここ200年ばかりは居ませんでした。ハフィスリード様が初めてワタクシの器を身に着けたとき、この方にお仕えするよう天命が下りましたの』

--「に、にひゃくねん?!ミーグって何歳なの?!」

--『さぁ?ワタクシ自身もわかりません。ですがワタクシの初めての主はグリンジアス王国を建国した方でしたわ』


わぁお。とっても愛らしい幼い女の子は、とっても長生きしてるのね…。

守護精というからには根本的に生命体からして違うんだろうケド。驚きましたよ。


時々ミーグと会話をしながら、何も出来ずに時が過ぎる。

このままでは〔闇の帝団〕の思い通りになってしまうと分かっていても、何も出来ない。


ゼウォン…レギ…今、どうしてる?

私が居なくなって、探してくれているのかな?それとも、あきらめられちゃったかな…。


〔闇の帝団〕に捕まる直前まで、とっても幸せだったのに。

ゼウォンと一緒に、食屋台通りに行くはずだったのに…


会いたい。

あのアメジストのような紫の瞳を、見たい。


惹かれてやまない紫の瞳を思い浮かべながら、私は膝を抱えて蹲った。






青髪の男を乗せた馬が土煙を上げて駆けていく。その後ろを、金朱の魔鳥が追従する。


「ゼウォン~、その速度じゃ馬がもたないんじゃ~ん?」

「定期的に回復液を与えるから平気だ」

「……鬼畜」

「何か言ったか?レギ」

「いんや~。この調子ならニアルースには5日かかんないじゃん?しっかし〔闇の帝団〕かぁ~。オイラ久々に本気で暴れちゃうぞ?ぐふふっ」


ゼウォンは苦笑して馬の手綱を握り直した。


ユリーナ、すぐに行くからな!



ゼウォンとレギは一路ニアルースに向かって疾走したのであった。


次話から更新が不定期になります。

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