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第22話~初仕事は片付けと掃除+草取りでした~

今回も途中で視点が変わります。

主人公→第3者→主人公 になります。



談話スペースに行くと、椅子に座って何か考え事でもしているかのようなゼウォンの姿があった。

こうして少し離れた所から見ても、やっぱりイケメンだわ。

でも、今のゼウォンは何ていうか、凍えそうなほど冷たいオーラを放っていて、かなり近寄りがたい雰囲気…。ちょっと怖いかも。

どうしよう、彼に気づいてもらうのを待ってようかな…なんて思っていたら、あっさりと私に気づくゼウォン。

彼は凍えるオーラから柔らかオーラになると、いつもの胸がドキドキする笑顔を向けてくれた。


「終わったか?」

「うん。お待たせしましたぁ。無事、登録できたよ。待っていてくれて、ありがとう」

「別にいいさ。そうだ、これはユリーナとレギの分だ」


ゼウォンから小袋を渡されたので中をみると、大金貨が2枚入っている。


「え?なにこの大金」

「だからユリーナとレギの分。コルエン裏山の怪物の報奨金って大金貨3枚だったんだ。あの怪物はユリーナとレギが退治したようなもんだからさ」

「いやいやいや、受け取れないよ!」

「なんで?あ、3枚全部渡すべきか」

「違うから!」


ちょっとしたやり取りの後、結局お金はお返ししました。

ゼウォンはイマイチ納得しきれてないみたいだけど、じゃあ宿代やグクコの実代にしてって言ってお返しすることに成功。

一度きちんとお金のルールを決めるべきだなぁ。


「ところでこれからどうしよう?私とゼウォンじゃギルドランクが随分違うけど、同じ依頼ってできるの?」

「大丈夫だ。俺が受ける依頼をユリーナが補佐するって形になるけど問題はない。だが…ちょっと薬のことで指名依頼がきてたから、そっちをやらなきゃならないんだ」

「薬?」

「ああ。今回は多めに調合しなきゃならないから3,4日はかかるな」


ふぅ、とため息をつくゼウォン。

薬って何だろう?コルエン裏山で飲ませてもらった薬湯のことかな?

そういえばメルーロさんのヘアグ常識ブックに何か書いてあったような…ってことは、きっと常識的なことだよね。後で読み返してみようっと。


「じゃ、私、その間はヌーエン中でできる1ツ星ランクの依頼を受けてるね」

「そっか。わかった。俺は基本的に宿屋の部屋に篭ってるから何かあったらすぐ言えよ?」

「うん!」



談話スペースから依頼書版に移動して見てみると、1ツ星の依頼って結構たくさんある。

『その他雑用』に至っては半分以上が1ツ星だし。

ヌーエン内で出来て時間もたいしてかからなさそうな依頼に絞って物色し『物置の片付け・掃除』というのを受けることに。

依頼引き受けカウンターに行って手続きをしてもらい、伝達石と依頼受理書と簡単な地図を受け取ってギルドから出た。

今日の火の2刻くらいに依頼者さんのところに行けば良いとのことなので、まだ時間に余裕があるなぁ。


宿屋までの道をゼウォンと歩いていると、上からレギが降りて来てストンと私の肩に着地。


「ユリーナ、ギルドどうだった~?」

「ちゃんと登録できたわよ。早速依頼受けちゃった。物置の片付けするの」

「片付け?ゼウォンもか?」

「いや、俺は別口の仕事があるんだ。まとまった量の薬を調合しなきゃならなくてな」

「ふ~ん、そっか~。んじゃ、しばらくは別行動なんだな」


宿屋についた時は正光1刻前だったので、ちょっと早めに昼食をとって、火の刻になるまではお部屋でのんびりすることに。

ゼウォンは早くも引き篭もり生活に突入です。


「ねぇレギ。ゼウォンが調合する薬ってどんなのかな?」

「さあ?オイラにもわかんないな~。東の地の薬学は結構謎だらけだし~」

「そうなの?」

「ユリーナさぁ、シプグリールで治療液とか回復液なんか買ったじゃん?あれらとゼウォンが作る薬湯はさ、また別モンなんだよ」

「……ゴメン。よくわかんない。説明お願い」


レギのざっくばらんな説明によると。

治療液や回復液なんかは、癒しの魔力が込められた水が原材料になっていて、効果は〔浅く・広く〕一般大衆向けに大量生産されているもの。

主に北の地でつくられているんだけど〔水〕の癒し魔法が使えるなら割と簡単に作ることは可能で、私にも出来るみたい。

でもそれを実際に作って売るとなると商売権とかややこしいことになるから、〔黒の民〕の専売特許になってるってのが実情らしい。

一方ゼウォンが作ったあの薬湯は、動植物に含まれている自然の成分を掛け合わせて作るものらしい。複雑な専門知識が必要不可欠なので、東の地にいる限られた者達にしか扱えないとのこと。

効果は〔深く・狭く〕発症原因や症状を見極めて調合するから、少量生産になってしまうんだって。


う~ん。つまりイメージ的には治療液とかはドラックストアで販売されている薬で、薬湯みたいなのはお医者さんが処方する薬ってカンジかな?


ゼウォンって剣や魔法だけじゃなくて薬学知識もあるなんて、タダモノじゃないよね?!一体ナニモノなの?!(←マモノです)


「ゼウォンって凄いのねぇ」

「うん。オイラも前さ~、なんで薬師じゃなくて危険な冒険者やってんのか?って聞いたんだけど~、色々と世界を巡りたいんだってさ」

「そうなんだ。世界を巡る、かぁ…」


世界一周って憬れてたなぁ。大学が夏休みになったらバックパッキングしたかったんだよね~。

ゼウォンとレギと一緒にヘアグ全土を旅できたらいいな。





宿屋の部屋に入ったゼウォンは簡素な椅子に腰掛けると、ふぅ、と一息ついた。

コルエン村の報奨金を受け取りにいった時に指名依頼がきていると聞いて、そういえば時期的にそろそろだったな、と思い至った。

この季節--土の季節--は、東の地と南の地の地境で毒蠍が大量繁殖するのだ。

旅人や付近の村の住民達は毎年この蠍の毒に悩まされていて、薬師が作る解毒薬を待ち望んでいる。

今年は特に蠍が多いらしく、いつもより解毒薬の注文数が多い。


「さて、やるか」


ゼウォンは亜空間から作業台と必要な道具一式、それと薬草を入れている大きめの箱を取り出した。

作業台に今回使うものを並べると、一冊の古い本と手記帳を取り出す。

古い本は、かつて東の地で使われていた古代文字で書かれている薬草書で、養父ヴァルバリドから受け継いだもの。

手記帳は、ヴァルバリドに監修してもらいながらゼウォン自ら勉強して書きしたためたオリジナルの薬学帳なのだ。


毎年作っている解毒薬とはいえ、一応確認しないとな。


ふと、部屋の壁を見る。


ユリーナの初依頼は物置の片づけ、か。

討伐系の依頼を受けたがる冒険者が圧倒的に多いのに、魔戦士が物置の片付けしにくるなんて依頼者が驚くだろうな。


微かに口の端をあげたゼウォンは、薬草書に目を通し始めた。





火の刻になったので、少し早いけど依頼者さんのところに行くことにした。

道に迷って遅刻とかシャレにならないしね。


「じゃ、オイラ空からユリーナの仕事ぶりを観察しよ~と。ぐふふっ」


高みの見物ってことですかね?レギさんよ。別にいいケドね。


ドア越しだけど一応ゼウォンに「いってきます」と声をかけると、わざわざ部屋からでてきてくれて「気をつけてな」って微笑んでくれた。

はうぅ、その微笑みで依頼3件はイケます。



無事に約束時間前に到着した私を出迎えてくれた依頼者さんは、お婆さんでした。

お爺さんと二人で暮らしているんだけども、物置の片付けと掃除は体力を使うので老夫婦には大変だからとギルドに依頼したんだって。お爺さんは今、お出かけしてるみたい。


「あれまぁ、ギルドの冒険者ってのは力自慢の男ばかりかと思ったんだけどねぇ。お嬢さんみたいな若い女の子もいるの?頼みたい仕事は力仕事なんだよ…どうしましょう…」

「大丈夫ですよ!こうみえても体力には自信あるんです。あ、こちらが依頼受理書と私のギルド登録証です」


お婆さんは登録証を見ると、とても驚いた顔をした。なんで?


「お嬢さん、魔戦士なのかい?本当に??」

「はい。本当ですよ。なので魔法を使って片付けることも可能ですのでおまかせ下さい」

「……あぁ、それじゃ頼むよ(魔法を片付けにつかうなんて聞いたことないよ)」


案内された物置小屋は20畳くらいの広さで、あちこちに古ぼけた箱とか紐で括られた本とか布袋なんかが散らばっていた。


「床にあるもの全部を、あの壁にある棚に置いて床掃除してもらいたいんだよ。掃除道具はあそこにあるものを使っておくれ。土の刻になるまでに終わりそうかね?」

「はい。大丈夫です」

「じゃあ、よろしく頼むね。」


さあてっと。やりますか。

魔法を使えるってことは知られているので、遠慮せずにバンバン使っちゃえ。


床に置いてある荷物を〔重力〕で軽減化したあと〔風〕で棚まで運ぶ。

物が無くなった床に向かい「ダイソ○の掃除機」と呟いて〔風〕を発生させてみると、イメージ通り、驚きの集塵力ですよ!

魔法を発動させる時に一言呟いたほうが、より鮮明なイメージが出来るなぁ。

それから〔水〕で床をキレイに洗い流して水分蒸発させたら依頼完了。


丁度いいタイミングで依頼主のジルお婆さんがご登場。


「ユリーナちゃん、言い忘れてたんだけど左隅の箱は……って、ぇええ?!」

「あ、ジルさん。終わりました。左隅の箱がどうかしたんですか?」

「……あー、いやね、あの箱は特別に重いから運ぶときは声かけてって言おうと思ったんだけど……なんていうか…魔戦士ってのは凄いもんだねぇ…」

「一応、確認していただけますか?」

「床もピカピカじゃないか!これだけしてもらえたら充分だよ!」

「そうですか。良かったです。あの、まだ時間あるので他に手伝えることがあればしますよ?」

「え?いいのかい?それじゃ庭の草取りをお願いできるかい?」

「はい、わかりました」


そんなわけで今度はジルさんのお宅の庭で草むしりをすることに。

魔法を使わずに地道に作業していると、上からキラキラしてるのが降りてきた、と思ったらレギでした。


「あれ~、物置の片付けじゃなかったっけ~?」


庭の柵に止まったレギは小首を傾げて聞いてきた。


「片付けは魔法を使ったからもう終わったの。今は草取り中よ」

「草取りなんて依頼なかったじゃ~ん?」

「そうだけど時間あるしね。せっかくだから他も手伝おうかなって」

「ふ~ん。あ、誰か来た。じゃ、また来る~」


レギが飛び立っていったのと入れ替わるようにジルお婆さんが木のトレーを持って顔をみせた。


「ユリーナちゃん、一息ついてお茶にしてちょうだい」

「あ、ありがとうございます」


ジルお婆さんが用意してくれたお茶は、砂糖入りの麦茶みたいな味がして美味しかった。

お茶請けのお菓子はマドレーヌっぽい焼き菓子で、こちらも美味しかったんだけど、お茶もお菓子も甘いから塩気のあるものが欲しいな~なんて内心思っちゃった。

羊緑族の族長さん、早くポテトチップ広めてくれないかなぁ。


順調に草取りも終わり、今は火の4刻過ぎ。

ジルお婆さんから依頼完了のサインが書かれた受理書を受け取ると、そのままギルドに向かった。

依頼完了報告をして、その後で報奨金を渡されたんだけど、なんか多くない?

提示されてた金額は中銀貨2枚だったのに、何回数えても3枚だ。


「あの、報奨金が違います…中銀貨1枚多いです」

「いえ。依頼主さんから追加報酬と書かれていたので3枚であってますよ」

「あ、そうなんですか?…わかりました」


どうやらジルお婆さんが草取りの分を上乗せしてくれたみたい。

ありがたく受け取ることにいたしましょう。



さて、これからどうしようかな?

新しい依頼を受けるには中途半端な時間だし、せっかく大都市ヌーエンにいるんだから散策でもしようかな~。ギルド周辺なら迷子にならないだろうしね。


ギルドから出た私は意気揚々と街中を歩き出したのでした。



砂糖入り麦茶、結構イケます。

作者の友人は好んでガムシロップをいれたりしてます(笑)

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