第2話~巨大黒鳥に激突したら羊さんに歓迎されました~
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--いまだ落下中です。
雲を突き抜けて落ちちゃってます。
そして気付く。
こんな上空にいるのに、凍えるほどの寒さを感じてないよ
これって『監視者』の心身強化のおかげなのかな?
だとしたら感謝だね~
って、そもそもヤツが落としたんじゃないか!
感謝する必要なんてナシ!!
生き返らせてくれた人物(?)に内心憤っていると、何か黒いものが見えた。
なんだか、かなり大きな黒い鳥のようだけど…。
落下を止められるはずもなく、ぐんぐん近づいていく。
鳥は私に気づいてないようだ。
そりゃそうだろう、かなり上空にいるのだ。普通は下、よくて横しか気にかけないか。
でも、このままじゃぶつかる、危ない!どうしよう!!
大声で「避けて」って言いたくても、風圧で口がまともに開かないしっ
ああー、もう駄目!!
ドンっっ
私は膝から鳥の上、背の羽の間(人間だと肩甲骨あたり?)にダイブ
鳥が柔らかいのか、心身強化の賜物なのか、思ったほど痛くなかったよ。
けど
激突1秒後、ピタっと鳥が止まる。
そして…そのまま真下に落ちた。
(再び)ぅきゃあぁぁーーーーっっ
鳥--?!
もしかして失神しちゃったとか?!
ご、ご、ごめんね~!
恨むなら『監視者』を恨んでネ。
でもキミ随分大きいねぇ。10mはあるんじゃない?
そんなのんきな事を思いつつ、私は鳥と共に地表にダイブすることとなった。
ずどぉぉぉん!!
周囲に大きな音を響かせて、巨大黒鳥と私は地面に着いた。
巨大黒鳥は飛んでいた姿のまま、お腹から地面に落ちたので鳥の背中にいた私は無傷。
結果的に巨鳥がクッションになってくれたってことね。
とりあえず、助かった。ほっ。
せっかく生き返ったのに恋愛せずに死にたくなかったし~。
あ、でも、このバカでかい鳥は大丈夫かな?
意図的では無いとはいえ、鳥を犠牲にして助かったんじゃあ目覚めが悪い。
まだ軽く落下時の衝撃が残る体を動かし、鳥の背中から降りて鳥の頭の方へと周って見ると、鳥の目が薄っすらと開いた。
良かった、どうやら鳥は生きてるみたい。
!!!
えっ?!
な…何?……
こ…こ わ い ………
鳥の目が、明らかに強烈な意思を帯びて睨んでる。
恐怖で、体が硬直してしまっていた。
その目に宿るのは怒り?
いや違う、これは殺意。
この鳥をこんなめにあわせたのは確かに私。(『監視者』のせいでもあるのか??)
だから、こんな目で睨まれるのは当然なのかもしれない。
だけど……
コイツはヤバイ!!
本能が危険信号を点滅させてる。
逃げなきゃっ
でも、すぐに逃げようとするものの、足が動かない。
早く、早く逃げたい!
この巨大黒鳥が動き出す前に、離れなきゃ!
恐怖で動かない体、動かない体に焦る心。
パニックになりそうだった、
その時
いきなり、私と鳥から少し離れた所に淡い光が出来た。
その光は徐々に人の形となり、4人の人が現れたではないか!
えええぇぇーー?!
彼等は私のほうへとやってくる。
え、ちょ、待って。
そう思っても彼等は待ってくれずに近づいてくる。
そして、彼等の姿をしっかり見た私は唖然。
だって、人間っぽいのに、人間じゃないんだもん!
身体は人間と変わらない。
でも、顔が…なんていうか、羊とか山羊のようなんだよっ
頭の上に何か角みたいなのがついていて、目も楕円形っぽくて緑色をしている。
髪は黄色味がかった白で全員クルクルパーマ。
こんな姿をしている人、見たことも、聞いたこともない。
違う世界。
ホントにここは異世界なんだ。
「ギルガを地に墜としたのは、あなたですか?か弱そうなのに凄いですね!」
突然現れた人たち(人なのか?)をボーゼンと見る私に、一番年長っぽい方が話しかけてきた。
凄いって…空から落ちて偶然追突しちゃっただけなんですが…
何と言っていいかわからず、まだボーゼンとしている私を、皆さんアレ?って表情で見ていたが、ふいにざわめく。
「まずい!ギルガが起き上がりそうだ。すぐ収容所に送ろう。」
そういって彼らは件の巨大黒鳥を取り囲むと、何やらブツブツと呟き手のひらを鳥にむけた。
すると、鳥の周りを淡い光が取り囲んで--
と思った瞬間、鳥は跡形もなく消えちゃった。
えええぇぇーー?!(part2)
なんで、なんで~~?!
あんなデカイの、どうやって消したんだ??
イリュージョン???
更にボーゼン。
ポカンとアホ面しているだろう私に、彼等は再び話しかけてきた。
「あの…、ギルガを墜としたのは貴女ではないのですか?何故このような場所にいるのですか?」
「…何故このような場所にいるのかは、私が聞きたいです……」
「はい?」
「…ここは何処なんですか?あなた方は誰なんですか?あの大きな鳥は何故消えたのですか?(さすがに私は誰?とは聞かなかったケド)」
頭がプチパニック状態の私は、思いつくがままに質問を繰り出した。
目の前にいた人(?)が困惑気味に「……落下時に頭を打ってしまったのでしょうか?」と呟いた途端、なにかがプチっ
私は弾けたように訴えた。
「頭は打ってません!私は…私は違う世界から来たんです!」
その言葉に、羊もどき4人衆がポカン。
コイツやっぱ、オカシイんじゃね?黄色い救急車必要?
なんて思わないでよ?!
誤解されないように、必死で、一生懸命、誠心誠意、犬を庇って事故ったところから今に至るまでを語った。
結構、支離滅裂な説明だったけど、彼らは驚いた表情をしながらも真摯に聞いてくれた。
いい人達だなぁ。
「…貴女の話は俄かには信じがたいのですが…いずれにせよギルガを退治してくれたのは貴女であるということは確かなようですね。我が一族は長年にわたりギルガに、あの怪鳥に苦しめられておりました。貴女はわが一族の恩人です。是非、我が一族の街シプグリールにおこしください。歓待いたします」
そういって羊4人衆は方膝をつき、腕を胸の前にもって来て頭を下げた。
そんな傅かれても困るしっ
私は焦ってしまい、アタフタしながら言った。
「あ、あの、私、よく状況をわかってなくて、でも、そんな頭下げてもらうほどの事したつもりはないし、えと、その、色々お尋ねして良いですか?あ、お顔あげてください」
すると彼らは膝をついたまま顔をあげ、やわらかく口角をあげ「なんなりと、お尋ねください」と言ってくれた。
やっぱり良い方達だ。
「はっきり言って私は、この世界に来たばかりで何も知りません。言語は理解できますが、知識は皆無です。生まれたての赤ちゃんと同じなんです。…だから、この世界のこと教えてもらえませんか?」
「承知いたしました。ですが、ここでは落ち着いてお話するのは難しいので、やはりシプグリールへお越しいただけますか?申し遅れました。私は魔獣の羊緑族、メルーロと申します。こちらの者達は私の部下で、カハール、シゼーレ、タガーテです。よろしければお名前を教えていただけますか?」
「あ、はい、私の名前は百合奈です」
「リーナ様とおっしゃるのですね」
「いえ、ゆ・り・な です」
「失礼しました。ユ・リーナ様」
「いえいえ。ゆりな です」
「ユリーナ様?」
「……はい。」
細かく訂正するのも面倒くさい。
百合奈とユリーナ、たいして変わらないから、まぁいいか。
「ユリーナ様、我ら羊緑族はユリーナ様を手厚く御持て成しさせていただきます」
「……ありがとうございます。あの、シプグリールと言う所は、ここから遠いのですか?」
今、私達がいる所は岩や木が点在している、だだっぴろい草むら地だ。
人が住んでいる気配は見当たらないんだけど…
「ええ、ここからだと徒歩で行こうとすれば夜になってしまいますが、空間魔法で転移いたしますで、すぐ着きますよ」
さも、当たり前のように[空間魔法]などと言うメルーロさん。
そうか、この世界は魔法が存在する世界なんだ。
さっきの巨大黒鳥もきっと魔法を使ってどっかに移動させたんだね。
そんなことを思いながら、私はメルーロさん達が何やら呟いてる(おそらく魔法)のを見ていると、足元にキラキラしている物を見つけた。
屈んで手にとってみる。
それは真っ白な玉砂利のような石だった。
所々に金粉をまぶしたみたいになっていて、とても綺麗。
わぁ、異世界の石は綺麗だな~。もらっちゃっていいかな?良いよね、うん。
河原の石を持ち帰るような感覚で、穿いているジーンズのポケットに入れた時、メルーロさんが私を呼んだので、小走りで彼等のところに向かった。
どうやら転移の準備が整ったらしい。
宙に淡い光が浮かんでいるよ。
魔法だ……魔法だよ!
ス・テ・キ
初体験する魔法に内心ワクワクしながら、私は彼等の〔空間魔法・転移〕とやらで、この場を離れたのだった。