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第16話~目が覚めたらイケメンがいました~

前半は第三者視点、後半は主人公視点に戻ります。



山頂にたどり着いたゼウォンが見たものは


地面に倒れている少女と魔鳥、黒焦げの怪物だった……


少女も魔鳥も、そして黒焦げの怪物も、まだ生命力を感じるものの、三者とも相当の痛手を負っているようだ。

魔鳥は気絶しているらしく、動かない。

そして少女は、魔鳥に近づこうと動かないらしい体を何とかしようと懸命にもがいているようだった。


「レギ?!レギィィっ、しっかりして!!レギ!!」


少女の悲痛な叫び

そんな彼女の声を聞き、いじらしい姿を見た時。


ゼウォンは、それまで思っていた『面倒くさい』とか『嫌味言ってやろうか』とかの感情は一切無くなった。

かわりに到来した感情は


彼女を守りたい。助けたい。




その時、怪物から、なにか小さい石矢のようなものが放たれた。


マズイ!!


ゼウォンはとっさに銀狼族の力を使ってしまった。

紫の瞳に力を込めて鏃石を睨み、その動きを止めると更に力を加えて塵にした。


西の銀魔の特殊能力の一つ『石化帰塵』

対象物を石化、粉々に粉砕、砂のように塵にして大地に帰化させるといった力。


銀狼族の能力の使い方や抑え方は幼少時にセラシーアから学んだが、生涯使うことなど無いと思っていたのに…

でも、たとえ己の秘密が露見することになってしまっても、あの少女は死なせてはならない、と。何故かゼウォンはそう思ったのだ。


それからすぐさま結界を少女と魔鳥に張り、自身は怪物の前に飛び出した。


背後から少女の視線を感じる


ゼウォンは少女の視線が自分に向けられていることが不思議と嬉しかった。


黒焦げの怪物は巨大な体躯だったので、石眼力ではなくて石化霧を吐いて攻撃した。

怪物は霧を振り払う力は残っていなかったようで、まんまと固まる。

そして、石化した怪物を一思いに粉砕し、後ろを振り向いた。



少女と視線が絡み合う。


その瞬間



ドクンっ

心音が大きく一つ跳ねた後

呼吸も、血の流れも、思考回路も、空気の流れも、全てが停止した気がした


その瞳と初めて視線が重なった時

一瞬とも、永遠とも感じた




星明りに照らされた少女は、黒髪に藍の瞳をしていた。

大きな瞳に少し小ぶりな鼻、ふっくらとした唇がバランスよく顔におさまっている。

あまり見かけない顔立ちながらも美しく、見る者を惹きつける容姿だ。


彼女の黒曜石のような艶やかな黒髪がゆれる

彼女の花の蕾のように愛らしい唇が微かに開く

彼女のサファイアのような美しい藍色の瞳が彼を見る


そのサファイアの輝きを、ずっと、こちらに向けていたい



彼女がゼウォンへと手を伸ばしかけて---力尽きたようにパタっと、その華奢な手を地につけた。


!!!


その時彼は奈落の底に落とされたような、深い負の衝撃を受けた。



すぐさま少女のもとへ駆け寄り、彼女の体に顔を摺り寄せ耳を押し付け鼓動の音を確認した。


トク…トク…トク…

生きている。


ゼウォンは心底安堵した。

そして、少し離れていた所に倒れていた魔鳥に近寄り、無事を確認する。


少女と魔鳥が意識を戻す前に人型に戻ると、亜空間道具袋から身に着けていたものと応急手当の医療道具をだし、衣服と模造髪を身に着けてから少女と魔鳥に手当てを施したのだった。





少しすると魔鳥が意識を取り戻し、ゼウォンを見て驚いた。


「あれ?…どうなったんだ…って、アンタ誰?人間…?」


ゼウォンは自分がギルドからきた冒険者であること、村長に頼まれてここまで駆けつけたところから今に至るまでを簡潔に説明した。


「そか…アンタのおかげでオイラもユリーナも助かったのか。ありがとな」

「いや、もともと怪物退治は俺の仕事だったからな。…彼女はユリーナっていうのか…」


ユリーナ、とゼウォンは再度低く呟き、まだ意識を取り戻していない彼女を見る。

その視線は少し熱を孕んでいた。


「ああ、そうだよ。オイラはレギってんだ。アンタは?」

「ゼウォンだ」

「そか、よろしくゼウォ--っいって~~っ!痛い!」


飛ぼうとして少し羽を動かそうとした時、レギに激痛が走ったのだ。


「まだ動かない方がいいぞ。薬を塗ったから血は止まってるが、体内まで回復していない。レギ…だったか、その色は朱焔族か?南の金魔が人間と召還契約したのか?」


レギはおとなしく羽を閉じると再び体から力を抜き、ゼウォンに答える。


「ま、普通そう思うよね。けど、召還契約なんてしてないんだな~。オイラはしても構わないって言ったんだけどユリーナに断られたんだ」

「え?まさか?!」


驚くゼウォンに、レギは自分とユリーナの出会い、今に至るまでを簡潔に話した。

といっても、全てを見境無くゼウォンに話した訳ではない。

ユリーナが異世界から来たこと、恋人を探していること、ギルガを(結果的に)倒したこと、などはあえて伏せておき、あくまで自分との関わりの範囲内での話しに留めた。


「召還は嫌か…友達って…確かに珍しいな。」


ゼウォンはそう言いながら、このレギという朱焔族は彼女のことをかなり気に入っているんだなと実感した。


それから再び亜空間道具袋から薬草と煎じる道具をだすと、手際よく薬湯をつくりレギへと差し出した。


「それだけ喋ることができれば、もう充分回復してそうだな。これを飲んで、しばらく眠ったら怪我も治るだろう。」

「へ~~、薬草湯かぁ~。それって調合に専門知識が必要なんだろ~?薬師になれるだろうに、わざわざ危険な冒険者してるん?」

「まぁな。色々と世界を見てまわりたいんだ。(放浪してた方が一箇所に留まるより正体バレにくいだろうし)」

「なるほど。世界を見たいってのはオイラと同じじゃ~ん。ぐふふっ」


そう言ってレギは素直にその薬湯の器に嘴を入れ、ゼウォンにお礼を言うと、そのまま目を閉じて眠ったようだった。






昔の夢を見ていた

6歳の私が泣いている

ああ、そうだ、お母さんが死んじゃったんだ…

脳の病気だったらしく、パート先で突然倒れて。

お父さんと私が病院に着く前に天国に行っちゃった。


お父さんは商社に勤めていて海外に行ってることが多かったから、お祖母ちゃんの家にお世話になることになって。

お母さんに二度と会えなくて、お父さんにもなかなか会えなくて、とっても悲しくて辛かったけど、私が泣きそうになるとお祖母ちゃんも泣きそうになっちゃうから、頑張って明るく振る舞うようにしていたんだ。


ある日、仏壇に手を合わせていたお祖母ちゃんが私をみると、ポツリと言った。


「百合奈、『想念』って言葉を知っている?」

「そーねん?ううん、知らな~い。」

「こうなって欲しいなって思うことを、心の中で強く願うのよ。具体的にイメージして、ずっと強く心の中で願うの。そうするとね、それがホントになるんだよ」

「??お祖母ちゃんの言ってること、よくわかんない…」

「あぁ、ごめんね。百合奈には難しかったかな?」


その時お祖母ちゃんが何を言いたかったかなんて分からなかったけど『想念』って言葉だけは覚えていた。


10歳の時。

算数のテストがあったけど、私は半分くらいしか解けなくて悔しかった。

だから、台所にいたお祖母ちゃんに八つ当たりしちゃった。


「お祖母ちゃんっ、『想念』なんて嘘だよ!だって算数100点取れますようにって願ったのに、全然駄目だったもん!」


するとお祖母ちゃんは困ったように笑った。


「百合奈、『想念』っていうのは魔法のランプじゃないんだよ。自分で自分の願いを実現させる『信念』なんだよ」

「…意味わかんない……」

「百合奈は算数で100点とりたかったんでしょう?そのために努力はしたかな?」

「…努力……うぅ」


何か言い返したくって、でも何て言っていいか分からない私にお祖母ちゃんは続けた。


「ただ願うだけじゃなくて、そうなるように努力もしなくちゃ。強く願って一生懸命努力すれば、きっと夢がかなうよ」

「ホント~?」


なんだか嘘臭いな~とは思ったけど。


--願い続けて努力すれば夢はかなう--


その言葉はいつまでも私の中に在り続けた。




私は、恋愛がしたかった。恋人が欲しかった。結婚がしたかった。

でも、それはただの布石

願い事の根本は、ただひとつ


--幸せになりたい--


いきなり死んじゃったお母さん

高校1年の時に死んじゃったお祖母ちゃん

再婚してから遠のいちゃったお父さん

家族を失うのは辛くて悲しい

それでも、私は一緒に生きていく人が欲しかった

願い続けていれば、出会えるのかしら…私のたった一人に…



満点の星空

輝く銀

煌く紫


あれは……






ミントのような香りが鼻腔を刺激し、私は夢から覚めた。


目に入ったのは


満天の星空

青の髪

紫の瞳

精悍な顔立ちの美丈夫


カ、カッコイイ…イケメンだわ…こんなイケメンがいるなんて…

私はまだ、夢を見ているのかしら…


意識はまだぼんやりするけど、私は彼から目が離せなかった。




次、次こそは!

ラブい雰囲気になります!

今日で休日も終わりなので、今日中にあと2話くらいアップしたいです。

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