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【彼女の喫茶店 】14話完結 「誰もいないのに、誰かがいる。あなたの言葉を静かに待つ喫茶店。七人の心の吐露が思いもしない連鎖を生む」  作者: Taku


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第一部:個の物語 ―内省の時代― 第1話「沙織――描く女」

平日の夜、晴れていた。


沙織は街角のベンチでスケッチをしていた。

展示会が終わった解放感と、いつも付きまとう罪悪感が混ざったような気分だった。

彼女は鉛筆を走らせながら、通り過ぎる人々を眺めていた。


ふと、一人の若い女性が目に留まった。

ベンチに座り、ノートに何かを必死に書き込んでいる。

目が少し充血していて、唇を強く結んでいる。

何かを追いかけているような、でも追いかけきれていないような——そんな目だった。


沙織は無意識にその女性を描き始めた。


線を重ねるたびに、胸の奥がざわついた。


(私はまた、誰かを「選んで」いる……この人を描くことで、他の人を描かないことを決めている)


描き終えた後、沙織はスケッチブックを閉じ、ため息をついた。

その女性の名前が光莉だとは、まだ知らない。


その夜、沙織はカフェ「あおい」に来た。


窓際の席に座り、カプチーノを注文した。


向かいの席に、誰かの気配を感じる。

誰もいない。

でも、確かにいる。


沙織は小さく息を吐き、話し始めた。


「今日、街角で知らない女性を描きました。ノートに何かを書き込んでいて、すごく必死な目をしてました。私はそれを、ただ線にして、影にして、形にしました。描いている間、ずっと胸がざわついていました。


 私はいつもそうなんです。

描くことで誰かを『選んで』しまう。

描かない人を、知らないうちに切り捨ててしまう。それが、怖いんです。

 優しい絵を描いていると言われるけど、本当は……誰かを支配しているような気がして、罪悪感でいっぱいになります」


彼女はスケッチブックを開き、光莉の絵をもう一度見た。


「でも、描かずにいられない。描かないと、私自身が消えてしまいそうで……。あなたは、何も言わない。それが、救いです。

ここでは、描くことも、描かないことも、ただそこにいるだけで許される気がする」


沙織は静かに微笑んだ。


「ありがとう。また来ます」


挿絵(By みてみん)

三人の「沙織」のご紹介

『彼女』シリーズ3作品に登場


『彼女の計画』

→「見ていただけ」から「一枚のメモ」へ

『彼女の教室』

→「見ていただけ」から「書かない」選択

『彼女の喫茶店』

→「見ていただけ」から「声をかける」へ


同じ「核」が、

三つの異なる物語で三つの形をとる。

合わせてお楽しみください!

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