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魔法を信じるかい? ― マッドサイエンティストの異世界旅行  作者: 黒々猫
■■■■■■ 第1章 異世界は光の向こう側
3/6

■■■ Step003 「悪の科学者」と「紫紺の魔女」のマッドなお茶会

ここまでがこの物語の導入部分になります。

次回から動き出してきます。


次回は2026年2月22日(日)15:00 にStep004を投稿予定です。

笑顔が素敵な彼女の家に誘われた事になる...のだが、妙に落ち着いている自分がいる。

彼女に対して「ときめき」が無いわけではないが、今は現状確認の方が興味がある。職業病というやつだ。


まぁ、お誘いの目的が単なる情報交換なのだ。どこにも色恋の要素はない。

彼女のお家に招待される事に問題はないのだが、その前にどうしてもやらなければならない事がある。


「すまんが先に確認したい事があるから、ちょっとだけ待ってくれないか」

「構わんが、一体どうしたのだ」


私の一言に一瞬怪訝な顔をした彼女は、開けたドアをゆっくり閉め、こちらを振り返る。


「ここは私にとっては異世界だ。まず元の場所に戻れるのかを確認したい」


と、後ろの光を指し示す。

おそらく戻る事に問題はないはずだ。光の向こうに堅牢の間の様子がはっきり見えている。

この現象が一方通行という縛りがなければ...という話ではあるが。


それを聞いた彼女は納得した顔になる。話が早くて助かる。


「確かにお主としてはそれを確かめるのが先決であろうな...ただ、一応確認だが、戻れる事を確認した後、こちらに来てくれるのだろうな?」


当然、この質問が来る事はわかっている。だが返答に困りはしない。


「逆に問おう。あなたはこのような面白い事に目を背けることが出来るのか?」

「確かに私は無理だな」


柔らかい笑顔で私を見る。

この女性の笑顔は面白い。まるであの娘のように分かりやすい。...そして、どうやら私は彼女の笑顔にもかなり耐性がついたようだ。


「ちょっと戻って用意をしてからすぐ来る。すまないが少し待っていてくれないか」

「わかった。あまり待たせるでないぞ?」

「承知した」


そう言って光の中に身を躍らせる。



問題なく戻って来れた事に安堵する。

すぐに隣の部屋の装置やコンソール、ディスプレイの状態を確認。動作状況に問題はない。

このままにしておいても、当分はこの状態を維持できるだろう。

次にコンソール周りの倒れそうなものだけ片付ける。これで安全だ。


必要と思われる道具――情報交換に必要と思われるもの、そして護身用の道具をリュックに放り込み、堅牢の間に駆け戻る。


実験装置には変わらず光の柱があり、その向こうに女性が立っているのが見える。約束通り待っていてくれたようだ。

光に飛び込み、先ほどまで立っていた異世界の納屋の床の上に戻ってきた。


「思っていた以上に早かったな」


彼女は先ほどの別れ際の姿勢のまま私を待っていた。

そして、その表情はいわゆるニヤニヤ笑いになっていた。要は「こっちに興味があるから急いで来たな?」と言っているのだ。


「まぁ、こういうものは早いに限るからな」

「違いない」


何食わぬ顔で言い切ってやると、それを受けてにっこり微笑んでくれた。

...先ほどの意地悪いニヤリ笑いのおかげで、今回はクリティカルを食らわずに済んだ。今はどうでもいいが。


改めて彼女の案内で納屋のドアを出ると、目の前に大きな屋敷があった。


それにしても...大きい...。

こちらの基準が分からないが、いわゆる貴族と言われる階級だと思われる。

周囲を見るに、中世の街中のようである。

ただ、ここは広い庭がある、かなりの上流階級の邸宅だと感じた。


「お主は客人だからな。本来は玄関から案内するべきだろうが...自ら『悪』と名乗る客人は少々抵抗がある。悪いが勝手口から案内させてもらおう」


私の前を歩きながら、またしても意地悪なニヤリ笑いを浮かべ、こちらを流し見る。

どうやら彼女は相手をイジるのが好きなようだ。


まぁワイは関西人や!全く問題あらへん!

...と、今は心の中でツッコんでいる場合ではない。


「よろしく頼む」


一言だけ返し、彼女のあとに続く。


彼女は勝手口から入り、どんどん中を進む。私は大人しくついていくのみだ。

途中でメイドさんとすれ違った際に飲み物を注文していた。


本物のメイドを初めて見たな。日本橋の路上で見たことはあるが、アレとは全く違う。

「職業:メイド(本気)」というのがひしひしと伝わってくる。...というのは私の変なフィルターのせいだろうな。


「ここだ。入ってくれ」


そう言うと割と大きなドアを開けて中に入っていく。私も今まで通り後について入っていく。


その部屋は『「豪奢」という単語が示すものは、これだ』という答えを示してくれた。

テレビや写真で海外の宮殿の部屋を見たことはある。それに比べれば見劣りはするのだろう。


が、「本物」を認識する為には、「本物」を実際に自分の目で見るのが一番である。――という事が学習できた。


...そんな事を考えていたら、部屋の入り口でまだ立っていたらしい。


「どうした?早く座るがいい」


今度は優しく微笑んでいる。可愛いというより、主導権を握る微笑みだ。


「こほん」と一つ咳払いをして、示されたソファーに腰を落ち着けると、すぐに先ほどのメイドさんがやってきてテーブルに飲み物を置いてくれた。


せっかくなので一口飲ませてもらおうと思い、皿ごと持ち上げ、ティーカップを手に取る。

骨董品を愛でる趣味はないのだが、このカップは上品だと感じる。きっと高価なものなのだろう。少し気後れする。


中身はおそらく紅茶の類だ。良い香りがする。

少し息をかけて飲み口を冷まし、口に含む。

香りが鼻から抜け、舌の上で味がほどけた。


うん。美味い。いや、語彙力がなくなるな。



その一瞬の幸福感を味わいながらゆっくり嚥下すると、温かい液体が食道を通り、胃に流れ込むのが知覚できる。

今までこれほどの飲み物を飲んだことがなく、その一口で十分に満足できてしまった自分を認識した。


ふと対面の彼女を見る。その行動をずっと見ていたのだろう。まだ優しく微笑んでいる。

...そのうち「ぎゃふん」と言わせてやる!!と心に誓いつつ、何食わぬ顔でカップを皿に戻す。


「さて...まずは名乗っておこうか。私の名前はタニア。タニア・ソフリートというものだ。お主は『悪の科学者』と名乗ったがそれは名前ではあるまい」


カップを置いて、ソファーに深く腰掛けたのを見計らって彼女...タニアが名乗ってきた。

確かに、お互い意図して名乗っていなかったな。


「私の名は了。加田屋 了だ。念の為の説明だが『加田屋かだや』がいわゆるファミリーネームで、『りょう』が名前だ」

「なるほど。こちら風に呼べば『リョウ・カダヤ』か。それならばリョウと呼ばせてもらおうか。私の事はタニアと呼べ」

「こちらは別に構わないが...」


こちらの世界で女性を友人のように名前で呼んでいいものかと思ったのだが...。

一般的には「ソフリート嬢」と呼ぶべきか?


「『ソフリート』は私以外にもいるのでな」

「なるほど。それは思いつかなかった」


これだけ大きな屋敷なのだ。当然家族が居てもおかしくはない。

とりあえず、情報交換をしたいのだが、まず確認しなければならない事がある。


「ところで、先の納屋での話なのだが...」

「ん?」

「『同志』とはどういう意味だ?」


納屋から出る際に、タニアは『では我が家に招待しよう。同志よ』と確かに言ったのだ。


タニアは「あぁ、その事か...」とつぶやき、話を進める。


「リョウの言う『悪の科学者』は理論の追求もするのであろう。それは私も同じく追求する者なのでな。であれば、我々は『同志』だと思ったのだが?」


なるほど、タニアも『探究者』という事なのか。


「その考えに対しては否定をする気はないのだが、そもそもの話、タニアは何者なのだ?何を追求しているのだ?」

「...しまった...それを説明していなかったか」


飲みかけたカップを戻すことなく、一言つぶやいて固まるタニア。どうやら、完全に失念していたようだ。

一口紅茶をすすり、ゆっくりとカップを皿に戻す。今まで一方的に質問をしていた事を思い出し、ちょっと恥ずかしいのだろう。早速一矢報いることができたようだ。

...そういえば、タニアの年齢はいくつなのだろうか...


「失礼した。私は興味があると次々と知りたくなる性分で、よく『落ち着きなさい』と幼少の頃から両親に言われていたのだ」

「それは私も親に同じ事を言われたよ。そういう意味では確かに我々は『同志』だろうが...で、改めて問うが、タニアは何者なのだ?」


ソファーに深く身を沈め、顎に手を当てて少し考え込む。そのままの姿勢でタニアは説明を始めた。


「まず、私は『魔術師』であり、『魔工師』だ」

「『魔工師』?」


魔術師は当然聞いた事があるが、魔工師は初めて聞いた。


「『魔術師』や『魔法』は分かるか?」


ちょっと考えて、


「どういうものかは知っている。が、『魔工師』は知らない」

「なるほど」


私は『魔術大全』を読破しているが、そこには『魔工師』の記述は無かった。


「で、『魔工師』だが『魔術』を道具に刻み込み技術をもった者の事だ」


なるほど。いわゆる「エンチャンター」の事だな。


「ちなみに『魔術師』はどれぐらいいるんだ?」

「『魔術師』は冒険者も含まれるから、小さな村でも1人はいるな。この街だと100人近くいるはず。もっとも初心者から熟練者までの幅があるが」

「タニアは魔術師としても熟練者になるのか?」

「自分で言うのもなんだが、この街でも上位に入るだろうよ」


なるほど。「この街でも」ときたか...。


「タニアは魔術や魔工に対して探究をしている。私は科学を探究している、なので『同志』と呼んだ。という訳だな」


まぁ、そういう事だろうとは思ったが、確認は大事である。

そんな私の思いを知らず、タニアはさわやかな笑顔を見せつつ、私の言葉に同意を示す。


「そうだ。もっとも、科学というものを私が理解しての話ではないがな」


と、今度は私の顔を眺めてきた。

どうやら、『科学』の説明を促しているようだな。


「科学の説明ね...う~ん...お互い基礎知識が違うので、この説明で良いかはちょっと自信が無いのだが...」


と、一言断りを入れておいて話を続ける。


「魔法は魔力を利用して様々な現象を起こすものだ。例えば火の魔法を使えば火が現れる」

「そうだな」

「でも、火を起こすのは魔法でなくても良い」

「すべての人が魔法が使える訳ではないからな」


『魔術大全』では全ての人間は魔力を持っている。となっているが、この世界では違うのかも知れないな。

もしくは、学習の機会がないだけなのかも知れない。


「この世界では火打石と火打金はあるのか?」

「当然あるぞ」


よかった。魔道具しか無かったらどうしようかと思った。


「じゃあ、なぜ火打石と火打金を使えば火が起こせるのか、知ってるか?」

「いや、知らないな。そもそも、それはそういうものだろう?」

「確かにそういうものだが...」


思わず笑ってしまった。

確かに「所変われば」だな。面白い。


「火打石と火打金をぶつけると火花が出る。『なぜ火花が出るのか?』を探究するのが『科学』だ」

「なるほどな。そういう発想はなかったな...確かに探究者だ」


一口紅茶を飲み、ソファーに背をもたれかける。

本当にそういう事を考えたことがなかったようで、うんうんとうなずきながら先ほどの説明を咀嚼しているのだろう。

こういう会話は個人的には楽しいものだ。

もちろん、聞いてくれる相手にもよる。ちゃんと聞いてくれなかったり、相手の理解が追い付かなかったりすると、とたんに会話は終わりを迎えるのだ。


「分野は違うがタニアも魔術の探究をしているのだろう?具体的にはどういう探究をしているんだ?」


そういうと、タニアはちょっとビックリした顔になったが、すぐに説明をしてくれた。


「魔術にもある理論がある」

「だろうな」


探究者って言ってたしな。


「魔法陣を描くにしても法則のようなものがあるが、それらの理論や法則について、まだまだ分からない事が多いのだ」

「魔法陣もあるんだな」

「そうだ。例えば効率の良い魔法陣を考案するとか、呪文の詠唱についての整理や実験をしてみるとか、まぁ色々手広くやっているのさ」

「ちょっと疑問に思ったのだが、作った魔工品は...売っているのか?」


魔法の品物作成するっていう事は、それを生業にしているんだろうなと思って聞いてみた。


「私の魔工品は基本的に売り物だ。私の場合はほぼ依頼を受けてから作るようにしている」


受注生産って事ね。


「全く新しいものを注文された場合は実験から始めなければならない。依頼内容や難易度によっては断らなければならない事もある」

「それも大変そうだな。そうすると、魔工品は高く売れるのか?」

「魔工品は希少なものなので、基本的には高価だな」


でしょうね。


「もちろん、一般的に出回っているものもあるが、私はそういうものは作っていないのでな。作っても良いが効果が桁違いなのでな。やはり高価になるだろう」


にこりともせず、自分の言葉にうなずきながら真面目に話す。

よほど自信があるのだろうが、こういう所は可愛くない...と周りから言われるんだろうな。きっと、おそらく。


「一つ明確にしたい事があるのだが、そちらの世界には『魔法』や『魔術』というものは存在しないのか?」


話の端々から、こちらの世界では魔法が存在しないのでは?と感じたんだろうな。

さて、どう説明したものか...。


「我々の世界でも『魔法はある』。だが、存在を知っているのは極端に少ない」

「少ない?」


『魔術大全』がある時点で、魔法を知っているのは私だけではない。という考察なだけだがな。

しかし、地球の魔法使いは私以外は知らない。


そもそも、魔法が証明されれば世界は混乱するだろうしな。

我々の世界では、魔法は秘密にするのが一番だ。


「かく言う私も知っている1人ではある。が、我々の世界では『魔法』は存在しないものとして認識されている」

「存在しているのに存在していない?なぜリョウは知っているのだ?」


そこは気になるよな。


「さっきも言ったように魔法は一般的ではなくてな。私も最近まではその存在を知らなかったのだ」


一応『魔術大全』の事は秘密にしておこう。そもそも説明が難しいからな。


「ただ本当に偶然、魔術を知る機会があったのだ。そして知った内容を元に実験を行っていたのだが...結果としてこの世界に来てしまったという訳だ」

「あれは魔術の実験という事か?」

「いや違う。科学実験だったのだ。ただ実験の元となる考え方が魔術を元にしていた為、このような現象が生じたんだと思うが...ともかく原因不明だ」

「なるほど...それで『なぜここに居るのか分からん』と言ったのだな」


私の実験についての説明がまだよく分からないのだろう。まぁ、私もどうやって説明してよいのか分からないのだから仕方がない。

そのうち、こちらの常識なども分かってくるだろうから、それを知ってから改めて説明しても良いだろう。


「そういう事だ。早く戻って原因を調べたいのだが...」

「今はこっちの世界の興味が勝っている...という事だろ?」


またニヤリと笑う。しかし、今度は嫌味な成分は感じられない。どちらかと言うと「いたずらっ子」の顔だな。


「タニアも我々の世界に来たいのだろう?」


私も負けずニヤリと笑いながら返してやる。タニアがどう思うか興味があるが、まぁ嫌がることはないだろう。と思いたい。

タニアは私の返しを聞いて、「我が意を得たり」というような顔でうなずいてきた。


「それはもちろん。だからこれは交換条件なのだが、こちらの世界でのリョウの行動について等は私が補佐をしてやろう。だから、そちらの世界に私が行く時は私を補佐して欲しいのだが...」

「それはありがたい話だが...タニアは気にならないのか?」

「何がだ?」

「私にしてもこういう体験は当然初めてだし、タニアにしても目の前に光が出来て、その中から私が現れた時は大いに驚いたはずだろ?」


と、そこで言葉を切る。


「そこに現れた私という人間を警戒していたはずだ。だが今は、このように親切にしてくれている。つまり...私が危ない人間だとは思わないのか?」


若い女性が男を家に招く。それもつい先ほど会っただけの男をだ。なかなかあり得る話ではないというのが私の考えだ。


「逆に聞きたいな。リョウはなぜ私についてきたのだ?」

「こういう言い方をするとタニアに失礼だとは思うが、タニアは女性だ。単純な腕力だけの問題であれば私の方が有利だと今でも思っているよ」


そういうと、タニアは表情を消して目を細める。

彼女は杖で魔法を発動できる状態にしていたので、挑戦的に聞こえたのかもだが、まぁ問題はなかろう。

実際、身体は鍛えてあるし、護身用の道具は常に身に纏っている。


「だが、この世界に来て初めて会話した人物と会話をして、あまつさえ意識を通わせたんだ。俄然、興味が出てくるというものだろう?」

「ま、確かにな」

「もっとも、タニアの魔術師としての実力はまだ分かっていないが、単純に侮れないと思っているがね」

「素直だな、リョウは...」


それを聞いたタニアは腕を組みながら苦笑する。腕を組む度に胸が強調されるので、できれば遠慮してほしいのだが...。

まさか直球で言う訳にもいかないだろう。出来るだけ胸に目がいかないように紅茶を口に運ぶ。


「まぁ、リョウがそういう考え方だろうというのは想定していたさ。こちらはそれに乗じてここまで来てもらったんだからな」


それを知ってか知らずか、タニアは話を続ける。


「もちろん、最初は全く信用していなかったさ。だが、納屋の中での会話である程度の状況が見えた時、ただ単に『これは面白い』と思ったのさ」

「面白いと思ってもらえたのはありがたいな」

「そして会話の中でリョウが探究者だと分かったからな、ここはお互いに知識の共有が出来ると思ったわけさ」


この辺りの思考はお互いよく似ているな。


「もちろん、あの短い時間ではリョウの性格は分からないが、少なくとも悪人ではないと判断した。そして、ここまでの会話でそれは確信になったのだ」

「私は『悪の科学者』なのだがね?」


『悪の』という所にアクセントを付けておいたのだが、彼女は全く気にした様子もない。


「何を持っての『悪』かだろう?かく言う私も巷では『紫紺の魔女』と呼ばれて恐れられているからな」

「『紫紺の魔女』?」


あまり良くはなさそうな二つ名だと思ったのだが、反射的に疑問が口に出てしまった。

その瞬間タニアは「しまった」という顔をした。もっとも自分で言い出した事なので私の疑問に対して無碍にできないと思ったのだろう。


「...そういう風に言われる事になる事件があったのだ...」


いわゆる「苦虫を噛み潰したような顔」になっている。


「それはともかく、リョウは私の同志だと思ったのだ。それが嬉しく思ったというのもあるし...同志であれば友人になる事は容易だと思ったのだ」


『紫紺の魔女』についての説明はキレイにうやむやにされたが、タニアにとってあまりよろしくない出来事だったのだろう。まぁ、そういう事もあるだろうさ。

私はそういう話については、気にはなっても聞かないようにしている。私も言いたくない事はたくさんあるのだ。

しかし...『友人』か。異世界の友人...なかなか良いのではないか?


「ふむ...『友人』か。それは良いな。では改めて友人としてよろしくお願いする」


ソファーから立ち上がり、右手をそっと差し出す。

それを見たタニアが満面の笑みをたたえつつ、同じように立ち上がり、私の手を握った。


「あぁ、よろしくな」


どうやら、こちらの世界も握手というものがあるらしい。何も考えずに行動したが、どうやら問題がなかったようだ。


こうして、私とタニアの友誼は結ばれたのだ。



それが、最終的にはとんでもない事になるとは知らず...。

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