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魔法を信じるかい? ― マッドサイエンティストの異世界旅行  作者: 黒々猫
■■■■■■ 第1章 異世界は光の向こう側
2/6

■■■ Step002 異世界人同士のファーストコンタクト

Step003は2月21日 15:00に投稿いたします。

この物語の導入部分はStep003までになります。

どうぞお楽しみにしてください。

彼女の言った事が理解できた...。

しかし、なぜ理解できるのかが理解できない。


私の耳は全く知らない発音を拾っているのに、意味だけが滑り込んでくる。

知らない?...いや、知っているぞ!どこだ?誰だ?なんだ?


...そうだ。あの本だ。


翻訳のために、呪文の音まで叩き込んだ、あの「魔術大全」。


え?「魔術大全」とは?



「お前は誰だ!?なぜそこに居る!?」


改めて女性に問われ、現実に戻る。


ひとまず、言語の問題は後回しにしよう。

まずは彼女の質問に答える事に集中しなければなるまい。


ただ正直な話、彼女の言う「なぜ」については「正確な答え」を持ち合わせていない。が、「正直に答える」のが一番だ。

分からない事を知っているかのように答えるのは得策ではない。というのは、この25年という生きてきた中で学習した事の一つだ。

ただし、駆け引きは別だ。


「私は...悪の科学者だ。ここには...なぜ居るのかは分からん」


普通であれば自分の名前を名乗るのであろうが、あえて「誰」についてはぼかした返答をした。

この私の言葉に対して、どのような返答をするかで、ある程度女性の思考力が把握できるだろうと踏んだのだ。


「悪の科学者?...悪というのは分かるが、科学者とはなんだ?」


彼女は私の返答に怒る事はせず、疑問に思ってくれた。


なんにしても『悪の科学者』というのが名前ではない。という事には気が付いたようだが、『科学者』という単語については分からないらしい。

おそらく『科学』という存在がないという事だろう。


そうなると説明には非常に骨が折れると思われる。そこで、私が考える『科学者』というものを簡単に説明する事にした。


「科学者とは科学を理解し、科学を嗜み、理論を追求する。この世の先駆者の事だ」

「追求か...説明を受けても正直分からんが...要は『探究者』の事だという事は分かった。で、改めて聞くが、なぜここに居るのだ?」


ここまでの応答で、この女性は非常に高い思考力、理解力を持っていると思われる。

個人的にはこういう問答は非常に楽しいものだ。


何度も言うが、「ここに居る理由」は説明できるが、「なぜ」なのかは説明できない。

嘘を言う事は非常に簡単だが、この女性に嘘をつく理由はない。少なくとも、この場では。


「『なぜ』かは、正直分からん」

「分からない?」


厳しい顔に疑問の表情が浮かぶ。同時に杖が突き出された。

どうやら警戒レベルが上がってしまったようだ。

彼女の気持ちは分かるが、本当に分からないんだ。


「事実を簡単に述べるとだな...科学の探究の結果、偶然この場に居るのだ」

「意味が分からないな」


でしょうね。


「すまない。私も正直驚いているのだが、あの光の帯...というのかな。実験中に偶然アレが出来てしまったのだ」


私の説明にならない説明を聞いて、女性は一言「ふむ」とうなずき、私に向けていた杖を下におろす。

が、青白い光は灯したままだ。まぁ、あれが攻撃手段であるならば、女性としては当然の事だ。


「なるほどな...想定外の結果でここに居るわけで、『なぜ』という事については説明ができないという事か」

「理解が早くてとても助かる」

「まぁ、想定と結果が合わない事は私も常々遭遇している事だ。それは良いが...そもそも、悪の科学者とは...?」

「その前にこちらも一つ聞いて良いか?」


この現状を把握する為に、どうしても先に確認したい事があるのだ。


「ここはどこなのだ?」

「ここは私の家の納屋だ」


私の問いに、女性はある意味明確に答えてくれた。


しかし...それはこの光景を見る限りわかっているのだが...と、女性を見ると相変わらず視線はきついが口元が少し緩んでいる。

どうやら、わざとぼかした返答をしてきたようだ。


試されているのか。面白い。

言葉だけでは人は分かりあえないが、それでもまずは言葉からだな。


「...なるほど。では、あなたの家はどこの国にあるのだ?」

「順番に説明するぞ。ここは『エルセリア』という街。『ジョーチェ法皇国』に属している。そして『ジョーチェ法皇国』は『ロタイリグス連邦』に加入している」


今度はかなり正確に質問に答えてくれた。が、全く分からないな。

私も地球のすべての国家を把握している訳ではないが、『ジョーチェ法皇国』や『ロタイリグス連邦』というものを聞いたことがない。

『連邦』と言う事は、各国が集まって合議制で大きな国家として運営するんだったな。例えばアメリカ合衆国とか。


しかし、なるほど。

ここは私の住む地球とは違う場所、まさしく『異世界』のようだ。

そして、目の前の女性はかなり頭が切れる、才女といった所だろう。

どんどん会話が楽しくなってきた。


「明確な説明助かった。私の国は『日本』という国で、住んでいる場所は『関西』という地域にある『吹田市』という名前の街だ」

「『ニホン』?『カンサイ』?『スイタシ』?...どこにあるのだ?」

「あの...光の向こう側にある」


私の背後にちらりと視線を投げる。

500円硬貨と私と、その背後の光も向こうの光景を交互に見ていた女性は、やっと杖の光を消してくれた。


一先ずは敵意がないと理解してもらえたようだ。

とは言え、まだ下手に動かない方がよかろう。


「...どうやら異なる世界からの訪問者...と、いう訳か...」


彼女は私の説明で、私と同じ結論に至ったようだ。

ふと、思い出したかのように手にしていた500円硬貨を私に見せ、聞いてきた。


「これは一体なんなのだ?見る限り貨幣のようだが?」

「貨幣で間違いない」

「かなり正確な円形だな...彫られている意匠は...こちらのものとは全く違う意匠だな。しかもかなり細工が細かいぞ?」

「我々の国はそういう細かい作業をするのが得意な国なのだ」

「ふむ...技術的にはそちらの方がかなり先に進んでいるという事か。で、お主はどうするつもりなのだ?」


500円硬貨が貨幣だと分かった為か、こちらに投げてよこしてくれた。律儀な性格のようだ。

まぁ、500円ぐらいであれば彼女に渡してしまっても全く問題はないのだが。


彼女はまだこちらを警戒しているようだが、最初の頃と比べるとかなり警戒レベルは落ちているようだ。

軽く腕を組み、豊満な胸を強調するように立ち、こちらの様子を見ている。

私の返答によっては、警戒レベルが上がるだろう。が、そんな事をしても私には全く利益はない。


「正直、どうするかはまだ何も決めてはいない。いや...あえて希望を言うならばだが、こちらの世界を見てみたいと思っている」

「まぁ、そう言うであろうな。私もお主の世界を見てみたいと思っているからな」


よし、彼女の警戒レベルを上げることもなく、お互い意見は一致したようだ。

彼女は私の背後の光を見ながら、


「ところで、今更だが...そもそも、あの光はなんなのだ?」


と問うてきた。

確かに今更の質問だな。しかし、あの光についてはまだ検証が済んでいないのだ。

とりあえず、実験の内容から説明するしかない。少し考えて素人でも分かる内容で説明をする。


「離れた場所で会話をする為の実験をしていたのだが、その実験で偶然にこの現象が発生したのだ。なので、あの光についての説明は今の所できない」

「ほう、離れた場所で会話をするのか...それはすごい事だとは思うが...まぁ、どちらにしてもこの現象は想定外の事で、こちらに来たのも想定外という事だな」

「そうだな。かなり不本意な結果ではあるが...」


彼女は首をかしげながら問うてきた。


「不本意なのか?」


最初の険悪なイメージからはかなり遠い。そして...そのしぐさはかなり...いや、非常に可愛いものであった。

顔に血が集まるのを感じ、慌てて腕を組み、背後に光を見るために身体ごと振り返り、彼女に顔を見せないようにする。

その行動が不自然に見えないように、考えを口にしながら時間をかせぐ。


「通信実験そのものについては検証できたんだが、その結果がこの現象だからな...」


そうだ。実験による通信結果は問題は無かったのだ。100%受信出来ているのだが、ただ単に『想定外の事象が発生した』だけだ。


「確かに想定外の出来事ではあるが、この結果は不本意ではないな...むしろ、喜ぶべき結果と言える」


そうだ。これは歴史的に見てもあり得ないような快挙だ。

もう、先ほどまで顔に集まっていた熱は、いつの間にか別の興奮に塗り替えられていた。


彼女は私の返事を聞いて十分に納得したのか、うんうんとうなずき、私を見ていた。

そこでふと疑問が沸き、彼女に問うてみる。


「ところで...あなたは誰なのですか?」


なんとなくだが、彼女は上流階級というのか、一般市民ではない雰囲気もあり、少し丁寧に聞いてみた。

最初の彼女の問いを、そのまま返したようなものだが、これを聞かないわけにはいかない。


「あぁ、そうだな。こちらも答えてやらねばならないが...いや待て」


彼女は素直に答えようとしたのだろうが、お預けを食ってしまった。


「待てって...さっき『答えてやらねば』と言ったぞ?」

「慌てるな」


そこで初めてその女性は笑った。

少しだけ『困った』という表情。そう、これは『苦笑』と言うものだろう。


「ここはお互いに色々知り合わなければならぬようだが、先ほども言ったがここは我が家の納屋でな、ゆっくりと話す場所ではない。すぐ隣に我が家があるのだから、そこでゆっくりお茶でも飲みながら話をしようではないか」


そう言いながら私に向かって左手...私からは右手の方にゆっくり歩き始める。

そちらには小さなドアがあり、取っ手に手をかけ、ゆっくりとドアを開ける。

ドアの向こうは夏の昼間のように明るく、その眩しさの為に私は思わず目を細める。

ドアの前で黒いシルエットとなった彼女が振り返りつつ私を呼ぶ。


「では我が家に招待しよう。同志よ」


と...。

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