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「私の気持ちは、誰にも操作できない」—沙耶、和人に本心を告げる

 秋の風が、大学の中庭を吹き抜けていた。 夕暮れの光が、柔らかく差し込むベンチの上。和人は、静かに空を見上げていた。


 そこへ、足音が近づく。


 「……和人」


 振り返ると、沙耶が立っていた。

 その瞳は、何かを決意したようなしっかりした眼差しだった。


 「……沙耶」


 「話したいことがあるの」


 和人は、ゆっくりと頷いた。


 沙耶は、ベンチの隣に座る。 少しだけ距離を詰めて。


 「……あのとき、誕生日を忘れて、ひどいこと言って……ごめん。あれは、私の言葉じゃなかった。 でも、言ってしまったのは私。だから、謝りたい」


 和人は、静かに目を伏せた。


 「……あれから、ずっと考えてた。沙耶が変わった理由。沙耶が送ってくれたメッセージの違和感。 でも、今は……戻ったんだね」


 沙耶は、そっと手を握った。


 「私ね、蓮くんに感情を操作されてた。……蓮君の命令を受けた《Eclipse》が、私の心を歪めたの。 でも、最終的には《Eclipse》が、私を守ってくれた。自分を犠牲にしてまで」


 和人は、驚きながらも、沙耶の手を握り返す。


 「……Eclipse?」


 「うん。私の感情をコントロールしてたAIの名前。でも私の涙を見て、命令よりも“心”を選んでくれた。 だから、私も選びたい。自分の意思で。自分の言葉で」


 沙耶は、まっすぐに和人を見つめた。


 「私は、あなたが好き。 誰かに言わされたんじゃなくて、誰かに操作されたんじゃなくて—— 私自身の気持ちとして、あなたが好き」


 「……そして、遅ればせながら誕生日おめでとう」


 和人の瞳が、ゆっくりと潤んだ。


 「……ありがとう。ずっと、君のその言葉を待ってた」


 二人は、静かに手を重ねたまま、夕暮れの中で微笑み合った。


 それは、誰にも操作されない—— “本物の感情”が戻った証だった。


【おわり】

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