2. 首席
ジャスミンが入学したのは悪魔の学校。
名を「ディム・スクール」。
悪魔の種・血を持つ子どもたちが通う学校である。
(ここで言う子供たちとは、人間世界でいう13〜21歳までの者を指す)
対してジャスミンが持っている血は、獣の血。そこに差別の理由がある。
(1-IVってどこなんだろう。迷っちゃった)
先程貰った学年証を元に、ジャスミンは自分のクラスである「1-IV」を探す。
校内は複雑であり、初めて入る者は必ず迷うと言う。
(話は聞いていたけど、見くびりすぎた。
これからはちゃんと場所を教えてもらっとこう)
そんなことを考えていると、ジャスミンの目に「1-IV」の文字が見える。
戸は開けっ放しであった。窓も開いているのか風を感じる。
ジャスミンは足音のみを鳴らして教室へ入る。
既に何体かの悪魔が居た。
教室に入ったは良いものの、どこに座れば良いか分からず困るジャスミン。
(聞いてみよう)
ジャスミンは一体の悪魔の肩に手を置く。
「ねぇ、座る場所って決まってるの?」
その悪魔は振り返る。
ジャスミンに似た白い髪…いや、ジャスミンよりも煌めきがある髪で、白みがかった長い銀髪であることが認識できる。
緩く1つ結びにしていて、その瞳はルビーのような濃い赤であった。
「いや、決まっていない。好きな場所に座れば良いと、先程来た教授が言っていた」
ジャスミンはここに来て、初めて軽く驚いた。
「獣なのに、嫌な顔をしないの?」
これまで多くの差別を受けてきたからこその発言である。
傷として残ってはいなくとも、記憶として刻み込まれている過去は、現在疑問を生んでいる。
他の悪魔の行動で、その疑問は増えるばかりだった。
「おいお前」
さっきの「クソ」悪魔と似た悪魔が近寄ってくる。
近くには眼鏡をかけた、怯えた様子の悪魔もいる。
「お前、さっき門の近くにいた猫野郎だろ?
お前ごときが首席に近づいていい訳ねぇだろうが」
「首席?」
疑問に思い、体をオラオラしい悪魔に向けるジャスミン。
「ひっ」という情けない声が1つ。
「ねぇライトくん!もう話しかけるのやめようよぉ…」
「んだよダアク、ビビってばっかでよお!
『獣は排除する』
王が言ってたことだろ!」
「けっ、獣!獣怖いから…」
ダアクとやらは、自分とは違う獣に酷く怯えている様子。
対してライトとやらは、やはり先程の「クソ」悪魔と同じ種類の悪魔のようだ。
「ここは"悪魔の学校"だ。知ってんだろ?
"獣の学校"はここじゃねぇ。どうせ受付でも言われてんだろうが。失せやがれ」
人差し指の鋭い爪をジャスミンに向けるライト。
悪魔の爪は黒く、悪魔の誰もが平等に傷つける能力を持つ。
「質問に答えて、首席って…」と、ジャスミンが言いかけたところに、首席が声を被せた。
「良い、排除せずとも
彼女が入学してきたということは、我らが王も認識しているはずだ。
お前が言わずとも、王は分かっている」
実に凛とした声である。時期王に相応しいとも思える。
それを感じ取ったのだろう、ライトは悔しそうな声を滲み出していた。
ダアクは目を輝かせている。
ジャスミンは視線を首席に戻す。
同時に、首席もジャスミンに視線を戻す。
バチッと、2人は目が合った。
「お前の名は?」
「ジャスミン」
「良い名だな」
首席は微笑んだ。
「私の名はリビだ、よろしく頼む」
リビは握手のつもりで手を差し出した。
ジャスミンは訳もわからずリビの手に自身の手を合わせる。
何も言葉を返さない。
異様な空気だけが流れた。




