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コピー機の紙詰まりと、虚像の破壊

深夜。客の一人が、店内の多機能コピー機の前で困った顔をしている。やがて諦めたようにレジカウンターの真木まき 悠斗ゆうとに声をかけてきた。


「すいません、コピー機が紙詰まり(ペーパージャム)起こしてるみたいで…」


エラーランプが赤く点灯している。


(うわ、最悪…)


悠斗は内心で舌打ちした。


(コピー機の紙詰まりとか、一番面倒なエラーじゃん…。あの機械、構造複雑だし、開けるのクソ面倒なんだよな…。下手すりゃトナーで手も汚れるし…)


これ以上ないというほど面倒くさい顔で、悠斗はレジから出てコピー機に向かった。


彼は、コピー機のパネル(客が使おうとしていた機能)を適当に2、3回叩くフリをした。


「あー、これダメですね。完全に壊れてます」


彼は客に(心の底から面倒くさそうに)嘘をついた。


そして、客が見ている前で、コピー機の主電源を大げさにOFFにする。


バックヤードから「故障中」と書かれたテプラを持ってくると、パネルの上からベタッと貼り付けた。


「(よし。これで誰も使えないだろ)」


客は「あ、そうすか…」と戸惑いながら店を出ていった。


(修理は朝のシフトの奴(佐藤)が業者に電話すればいい。俺は関係ない。客には悪いが、隣のコンビニ行ってくれ…)



その頃、シスター・アリアの司令室。


「シスター! 聖域コンビニの『万象の複写機(=コピー機)』が停止! 導き手が自ら電源を落とし、『故障中』の札で封印されました!」


オペレーターが(監視)映像をアップにする。


同時刻、別オペレーターから緊急報告が入る。


「敵性組織『虚像の幻影団ファントム・ミラージュ』の活動をキャッチ! 彼らは、都市のネットワーク(特にコピー機やプリンタの複合機網)に異能ウィルスを送り込み、偽の公文書や偽札を大量に『複写』させ、社会を混乱させる計画を進めています!」


アリアは、電源が落ちて沈黙したコピー機を見た。


「…! 導き手が『複写』の機能を、自ら封印された!」


アリアは、悠斗の行動の真意を(誤って)確信した。


「(『虚像の幻影団』は『偽りのコピー』で世界を混乱させようとしている…。導き手はそれを予見し、聖域が『偽りの像』を生み出す『起点』にされるのを防ぐため、あえて『万象の複写機』の電源を断ち切った! あれは『真実オリジナル以外は認めない』という神託だ!)」



一方、その『虚像の幻影団』のアジト。


リーダーが、ハッキングコンソールを監視していた。


彼らの計画は、悠斗のコンビニの多機能コピー機(高性能ネットワーク複合機)を、偽札データの「最重要出力ノード」としてハッキングし、作戦開始の「テストプリント(=偽札一枚目)」を実行するというものだった。


「リーダー、ハッキング完了。『テストプリント』を送信します」


オペレーターがコマンドを実行した、まさにその瞬間。


モニターにアラートが鳴り響いた。


「(エラー音)…バカな!? ターゲットの複合機が、作戦開始と同時にオフラインになった! しかも物理的に!」


リーダーは慌てて(別ルートの盗撮)映像を確認する。そこには、悠斗が「あー、ダメですね」と呟きながら、主電源をOFFにし、「故障中」の札を貼る姿が映っていた。


リーダーは凍りついた。


「(まさか…我々の『ハッキング(偽のデータ)』を検知し、『紙詰まり(物理エラー)』という口実・・・で、システムごとシャットダウンしたというのか!?)」


悠斗の無気力な顔が、すべてを見通す神の監視者のように見えた。


「(あの店員…我々の『虚像データ』が『異物エラー』であると見抜いた…!? 恐るべき防壁だ!)」



最重要ノード(コンビニ)からの出力が失敗したことで、ウィルスが逆流。敵のハッキングサーバーが、行き場を失った「虚像のデータ(=偽札データ)」で埋め尽くされ、パンク(自滅)した。


「神託(=電源OFF)の通り、敵の『虚像』は打ち破られました!」


アリアが(悠斗の『複写拒否』に応え)厳命する。


「市内の全ネットワークを監視し、『偽りのウィルス』を全て駆除しなさい!」



シフト終了。悠斗は「故障中」の札が貼られたコピー機を横目に見る。


(あー、あの紙詰まり、マジで面倒だったな。でも電源切って正解だった。誰も触らなくて済んでラッキー)


彼はいつものように、メモ用紙を取り出した。


(…さて、佐藤くんに『コピー機故障中(紙詰まり)。業者呼んで』ってメモでも残して帰るか…)

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