第7話: 「おでんと筋肉と、うるさい新参者」
その日は、拠点の入り口に風が吹いていた。
ただの風じゃない。
ダシの匂いがした。
……正確には、おでんの匂いだった。
「EDU、これは……まさか」
「はいっ! 解析完了、成分は“大根・練り物・すじ”ですっ! 正真正銘のおでんです!!」
「スラムに、そんな高級料理あるわけ……いや、まさかな……」
俺は匂いを辿り、廃工場の裏手へと向かった。
瓦礫の間をすり抜け、ひとつ角を曲がった先。
——そこにあったのは、**ドラム缶をコンロにした“おでん屋”**だった。
いや違う、正確には。
その横で、上半身裸の筋肉男が仁王立ちしていた。
「よう! そこの貧相な兄ちゃん!」
俺を見つけるなり、そいつは笑った。
「腹減ってるだろ? 食え!! おでんは! 配るもんだッ!!」
え?
え???
「自己紹介しとくか。俺は九頭龍ハルキ! 元・第1区域生徒!」
「生徒会長にビンタしてスラムに落ちてきた、筋肉無法者だッ!!」
「で、お前……いい顔してるな! 目に“根性”がある!!」
突然、肩をバン!と叩かれた。
重い。っていうか、痛い。
この時点で、俺のツッコミ脳は悲鳴を上げていた。
EDUがこっそり呟いた。
「なんか……私よりうるさい人、初めて見ました……」
その間も、ハルキは勝手にドラム缶の中から取り出した“アツアツの大根”を、俺の手に押しつけてくる。
「熱っ!! ってか、なにこれ……本物!?」
「あぁ! 元第1区の調理室からパク……いや、回収した食材だ!!」
「俺の筋肉が火加減を覚えた! 火も友情も、じっくり煮込むのがコツだ!!」
俺は、気づいたら一口食ってた。
……しみてた。
胃袋だけじゃない、心にまで。
その時、思ったんだ。
「この人、うるさいけど……悪いやつじゃないな」
そして、俺の拠点に連れて帰ることになる。
「ここが俺の“拠点ゼロ”だ。勝手に入るなよ」
「おおー! 狭い!ボロい!最高!!」
「俺の筋肉、今日からここ守るわ!!」
「……誰が頼んだよ」




