第6話: 「沈黙の夜警と、EDUのしゃべりすぎ問題」
深夜0時。
今日もナギの雑炊はうまかった。
(“おいしい”とは言ってない)
俺は拠点「仮設ベース・ゼロ」の天井を見上げながら、
ボロ布を肩にかけて、眠る前の確認を始めた。
「EDU、現時点での脅威リストを表示してくれ」
「了解ですっ☆ 現在の懸念事項は以下の通りです!」
・空き缶窃盗犯:2件(推定被害額0円)
・“夜鳴きスズメ”による不眠:1件
・スラム内の無言の徘徊者:3名(うち2名は寝ぼけ)
・ナギさんの目力による圧:計測不能
「最後の完全に主観じゃねえか」
EDUは、ライガが拠点で拾ってきたカメラ付き端末を自力で改造し、
簡易的な監視システムを構築していた。
ジャンク電池を並列に繋いで、3時間だけ稼働。
それでも、スラムじゃ大きな安心材料だった。
「外壁の補強素材は?」
「空き缶88本、ダンボール(湿気有)、使えない教材プリント43枚!」
「そして、メイン武器“ほうき”1本です!」
「防衛ってレベルじゃねえ」
でも、俺はそれでも“守る”って決めたんだ。
ナギがたまに来る場所。
俺が生きてる証。
誰かが勝手に壊していい場所じゃない。
俺は、ドアの前に**“音の鳴るトラップ”**を仕掛けた。
ペットボトルに小石、空き缶をひもで結んで――
「わぁ〜、ライガさんのDIY、防犯界に風を吹かせてますぅ〜!」
「うるさいな。黙ってろ、テンション高AI」
そして、拠点の中の壁に書いたのは——
『この場所は俺のもんだ。壊したら、ただじゃおかねえ』
文字はボロマーカー、筆跡は最悪。
でも、この空間に“俺の意志”が刻まれた気がした。
「ライガさん、記録しておきますね。“小さな革命、第一歩”ですっ☆」
その夜、EDUの端末から優しく音が流れた。
ノイズ混じりのピアノ曲。
「これは……“学園入学式の日に流れる曲”だそうです」
「スラム区には、流れたこと、ありませんけど」
「……来年は、ここで流してやろうぜ」
「はいっ! 再生予約、しておきますね!」




