第3章 第5話 「奪還──時雨ミナト、最後の授業」
【学園塔・第七隔離層前】
重厚な鉄扉が立ちはだかる。
その中心に刻まれた、ひとつの名前。
【教育被観察対象 No.7 - MINATO.SHIGURE】
ゼロ組の誰もが、その名を見て拳を握りしめた。
EDU:「この扉、開けられます……!
でも……中に設置された“感情センサー封鎖ロック”が作動すれば、
内部との接続が完全に断たれる危険が……」
ライガ:「大丈夫。俺たちは、感情を押さえ込むような教育、したことねぇし」
アミ:「そうそう。“心が震える”ってのが、あたしらのやり方でしょ?」
ヒビキ:「行こうぜ。“あの先生”を、俺たちの手で教室に連れ戻す」
【隔離室内】
部屋は薄暗く、人工照明の白光が静かに灯っていた。
その奥――簡素な机と椅子。その背に、うつむいた男の姿。
白髪が少し混じった、やや痩せた身体。
でも、その背中は――かつての“時雨ミナト”のままだった。
EDU(小声):「生命反応、安定……
でも意識レベル、低下中……!」
ライガ:「時雨先生――!!」
その声に、ミナトがゆっくりと顔を上げる。
ミナト:「……やっぱり、来たか。
お前らなら……そうすると思ってた」
声はかすれていた。でも、目は――
あの日、ゼロ組を見つめていた時と、変わらぬ光を宿していた。
レンカ:「どうして……どうして“消された”の? どうしてひとりで背負ったのよ……」
ミナト:「……“感情教育”は、委員会からすれば“制御できない思想”だった。
だから、俺は“教育そのものに害を及ぼす異物”として……排除されたんだ」
ナギ:「ふざけんなよ……っ!!
アンタは誰よりも、“生徒を信じた教師”だったじゃねぇか!!」
ヒビキ:「……だから今度は、俺たちが“教師を信じる生徒”として、救いに来たんだよ!」
アミ:「……帰ろうよ。ゼロ組の教室に、もう一度、先生が必要なんだ」
ミナトは、長く沈黙し――
やがて、静かに立ち上がった。
「ああ……そうか。
教師ってのは、“教壇に立てる”ことじゃなくて、
“信じられている”ことなんだな」
「ありがとう。俺を、まだ“先生”って呼んでくれて」
【数分後/脱出ルート】
警報が鳴り響く。
扉のロックが自動で閉まり始める。
EDU:「早くっ!非常通路を抜ければ――!」
ミナト:「……行け。お前らだけでも、教室に戻れ!」
ライガ:「ふざけんな!俺たちは――全員で“教室”に帰るんだ!」
レンカ:「ゼロ組に、“欠けていい人間”なんていないの!!」
仲間の手が、ミナトの腕を掴む。
彼の身体が、ゆっくりと立ち上がる。
そして、その瞬間――
封鎖された教育施設の奥で、“授業の鐘”が幻のように鳴った気がした。
【夜/スラム拠点:旧図書室】
帰還したゼロ組。
そこには、教師・時雨ミナトがいた。
かつてと同じ姿ではない。
でも、生徒の笑顔の真ん中にいる、その背中は確かに“教壇に立つ者”だった。
次回予告:
「ゼロ組、再起動──時雨ミナト、授業へ」
再び教室に立つ男が語る、“本当の教育”とは――
そして、教育委員会が“最終手段”を発動する……!!




