第2章 第9話: 「追放通告──ゼロ組、最後の授業の権利」
【翌日/本校・生徒会室】
副会長の前に置かれた一枚の報告書。
表紙には太字でこう書かれている。
《報告書:F地区小学術院にて、ゼロ組による非公式出張授業が実施》
《参加生徒:31名》
《満足度調査:97% “また受けたい”と回答》
《学園内部からも視察希望者が出始めている》
生徒会長:「……もはや、“例外”では済まされない」
副会長:「革命が連鎖し始めた。
“秩序教育”そのものの根幹が、ゼロ組によって揺らいでいる」
生徒会長は静かに、一枚の通知を作成する。
《特別通告:ゼロ組 教育活動の即時停止および本校からの除籍申請》
《理由:校則違反、教育指針逸脱、秩序混乱誘発行為》
《生徒会直轄命令により、本日限りでの通達をもって有効とする》
【同時刻/ゼロ組拠点(旧図書室)】
アミ:「おいおいおい、なにこれ……“追放通知”!?」
ナギ:「これ……本校からもスラムからも、完全に消されるって意味じゃねぇか……」
ヒビキ:「つまり、俺らの授業は“学校外でも禁止”になるってことか……」
ライガ:「……だったら、その前にやることはひとつだ」
「最後に、“この学園で一番でっけえ授業”やってやろうぜ」
「――全校生徒を前に、“感情”の授業を」
レンカ:「いいの?もう逃げ場ないわよ」
ライガ:「最初から逃げ場なんてなかった。
俺たちは“逃げないために教室を作った”んだろ?」
【当日/校内大型掲示板】
EDUがこっそり張り出す“最後の挑戦状”。
《特別授業:ゼロ組による“感情の最終授業”》
日時:本日16:00〜
会場:屋外ステージ
内容:“今、教育を問い直す”最後の授業
※出入り自由。心で参加すること
【15:59/屋外ステージ】
強風の吹くなか、集まった生徒数――ざっと100名以上。
教師の姿もちらほら。
生徒会は、距離を置いて様子を伺っている。
【16:00】
ライガがマイクを取る。
「これは、追放されるゼロ組の最後の授業だ」
「でも俺たちは、ここで“学びの意味”を置いていく。
受け取るか捨てるかは、お前らの自由だ」
【最終授業テーマ】
「学校とは何か?──“教え合う”を取り戻す」
アミ:「“教える”って、上から目線じゃないんだよね。
“好き”を話すことも、“謝ること”も、“笑わせること”も、全部“教え合い”」
ナギ:「完璧な答えじゃなくていい。“自分の気持ち”を出せるってことが、生きてる証だろ?」
ヒビキ:「ウチらの授業で、誰かの心が一回でも揺れたんなら、それが“正解”だ」
【黒板に書かれたラストワード】
『ここが、俺たちの教室だった』
その瞬間――
後方の教師席から、一人の声が上がる。
教師(以前の討論会の司会者):
「……私は、この授業を“教育行為”として正式に認めます」
どよめく会場。
そして拍手が、ぽつ、ぽつと鳴り始め――
それは、嵐のような拍手へと変わった。
【生徒会室】
副会長:「……終わった、な」
生徒会長(目を閉じて):「いや、始まったんだ。“次の教育”が」
次回:
第10話「ゼロ組、正式認可!?本校との“共同教育改革”へ」




