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第4話「ゴミ山に眠る宝探し ~缶詰、出てこいや~」

「さて、EDU。食えるモンはどこだ?」


「現在、スラム区Bブロックに“非衛生推奨エリア”が存在しますっ!」

「通称:ゴミ山ですねっ☆」


「うん、名前の時点で食欲が死ぬな」


スラム区のゴミ山。

それは、学園中から出た廃棄物がまとめて投棄される区域。

異臭と腐敗と虫のフルコース。

つまり、俺にとってサバイバル上等の宝の山だ。


「マップ表示。行くぞ」


「は〜い! ゴミ探索ルート、開きまーす☆」


EDUのナビに従い、崩れた塀を乗り越え、ドラム缶の煙をすり抜け、

俺は“それ”と対峙した。


──ゴミ山、デカすぎる。


高さ約6メートル。

生ゴミ、段ボール、壊れたドローン、制服の山。

カラスとネズミと何かヤバいやつもいる。


「じゃあ、お宝発掘……始めるか」


◆ ◆ ◆


30分後。


「ねぇEDU……これ全部、“食えない”んだけど」


「ガマンです! 忍耐は教育の基本!」


「スナックの空袋、空き缶、賞味期限切れのサプリ、溶けかけのチョコ棒(※白カビ)」

「おい見ろ! サンドイッチっぽいもの発見! ってこれ、紙粘土じゃねぇか!!」


そのとき。


ゴミ山の奥から、キィ……っと何かの音がした。


物陰から出てきたのは、

ボロをまとった少女だった。


右手にスプーン、左手に錆びた缶詰。

目はギラつき、口元には……血?


(いや、ケチャップか? たぶん)


彼女は、俺と目が合うと——


「……喧嘩なら、やるけど?」


その声はガラガラだったけど、

どこか“命の火”が灯っていた。


「いや、俺はその缶詰をだな……一口、分けてほしいだけで……」


「一口……?」

「ここじゃ、それが命取りって意味だけど、分かってる?」


「うん、覚悟はできてる」


しばしの沈黙のあと、少女は缶詰を差し出してきた。


「一口だけ、な」


それは、俺がこのスラムに来て、

**はじめて口にした“食べ物らしい食べ物”**だった。


涙が出るほど……

その味は、

たぶん——しょっぱくて、温かかった。


彼女の名前は、高遠ナギ。

俺が最初に出会った“この地で生きる術を知る者”だった。

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