第40話: 「“教室を壊させない”──出張授業、防衛戦開始!」
【作戦当日/Dブロック第6居住区・旧教室跡】
ここはかつて、“自律式学習教室”として認定されていた場所。
レンカがまだ裏で支配していた頃に作られた、貧しい子どもたちのための“草の根教室”だった。
だが、現在はセラフィムの監査下にあり、
立ち入りには“教育統制認可証”が必要とされていた。
そんな場所に、ゼロ組がやって来た。
ライガは、ボロボロのドアを開けた。
そこにいたのは、怯えた目をした10人ほどの子どもたち。
教壇に立っていたのは……かつての仲間だった教師、セイナ先生。
セイナ:「……戻ってきたのね。レンカ……それに、ゼロ組」
「お願い……この子たちを、連れて行って」
「もうすぐ、監査部隊が来るの。ここも、“矯正施設”にされるわ」
レンカ:「ダメよ、セイナ。ここは、まだ“教室”なの」
「だったら、私はここで授業をする」
ライガ:「よし、いくぞみんな。出張ゼロ式授業・開講だ!!」
【30分後/授業開始】
▶ 授業テーマ:「自分を伝えるための“物語”を書こう」
ライガ:「今日は、“お前自身”が主人公だ」
「誰かに言えなかったこと、悲しかったこと、嬉しかったこと……書いてみようぜ」
「カッコ悪くても、文字になれば、それは“力”になる」
最初は鉛筆を握る手が震えていた子どもたち。
しかし、アミの言葉で空気が変わる。
アミ:「あたしなんか、昨日パン盗もうとしてバレて泣いた話書くわ!W」
子:「え、それでも書いていいの!?」
ライガ:「もちろん。お前が“主人公”だ」
次々と、文字が紙に刻まれていく。
その姿を、セイナ先生は涙をこらえながら見守っていた。
「……ああ、そうだった。これが、私がやりたかった“授業”だった」
その時だった。
外に黒い車列が到着。
セラフィム直属の監査部隊が、無表情に教室へ踏み込もうとする。
隊長:「この施設は違法教育活動の現場と判断、解体命令を執行する」
レンカが立ちはだかる。
レンカ:「この教室は、今“授業中”よ。破壊行為は、教育妨害罪で訴えるわ」
隊長:「あなたにその資格が?」
EDU:「ありますっ! ゼロ式特認教員“レンカ=カラスマ”は、
仮設教育施設指導員としての緊急教育権を行使可能ですっ!!」
ライガ:「ほら見てみろ、“勉強”って強ぇだろ」
そして、子どもたちの“物語”が黒板に貼られていく。
どの紙にも、震える文字で書かれた“心”があった。
隊長は一枚を見て、ほんのわずかに顔をしかめる。
「……判断を保留する。撤退し、上層部に報告する」
セラフィムにはまだ早いが、
今日は“戦わずして勝った”。
【夕方/再建された旧教室】
セイナ:「ありがとう……みんな」
「私はもう一度、“教師”としてやってみる。
この教室を、もう誰にも渡さない」
ライガ:「……よかったな。これが、俺たちの戦い方だ」




