第3話: 「ゼロから始める隠れ家生活」
「よし、EDU。まずは俺が安心して寝れる場所だ。そこからだ」
「はいっ! “安全確保”は教育の基本ですからねっ☆」
EDUのマップによると、スラム区の北端に、
“旧保健室跡”という記録が残っていた。
崩落の危険があるから立ち入り禁止——
だったはずが、管理外のスラムには当然そんな看板はない。
現場に到着。
見た目はボロボロのコンクリートブロックの塊だったが、
EDUの指示通りに雑草をかき分け、瓦礫を動かし、
狭い隙間を通り抜けると……中は意外にも、まだ“使える”。
壁はひびだらけ。天井には穴。床は砂利と埃。
でも——風は通る。
雨も防げる。
何より、静かだった。
「ここを、俺の“ベース”にする」
「“仮設教育支援拠点・第一号”……通称“拠点ゼロ”、設立ですねっ!」
「……名前はあとで考えよう」
その日から、俺はそこを整備し始めた。
・瓦礫で入り口を隠し、目立たないように
・壊れた棚を組み直し、物置と寝床に転用
・床の砂利を箒で掃き出し、段ボールで断熱処理
・水溜りの雨水をろ過する装置を、ペットボトルと炭で自作(EDUアドバイス付き)
俺はDIYが得意なわけじゃない。
でも、生き残るためなら、何だってやる。
「すごいです、ライガさんっ! 学園データで見る限り、廃墟環境での生存適応率は97%まで上昇しています!」
「褒められてる気がしねぇんだけど」
「これで安心して“昼寝”もできますね!」
「いや、まだ飯がない。寝てる場合じゃない」
でも、この空間を手に入れたことは大きかった。
誰に知られることもない、
誰かに奪われる心配もない。
俺だけの拠点。
俺だけの時間。
そしてきっと——
ここから何かが始まる。
「次は……食料と、水だな」
「了解っ☆ ミッション『生存基礎資源の確保』を開始しますっ!」