第32話: 「“私の居場所を作る”——レンカ、初めての自主授業!」
あの日の夜から、
レンカは少しだけ、変わった。
朝の準備に加わるようになり、
草汁鍋には絶対近寄らないけれど、
子どもたちの読み書きを手伝い、
そして、何より——
「この教室に、“私の椅子”を作ってみたくなったの」
そう言って、レンカが持ち出したのは――
自分で組み直した、板材の手製椅子。
その日、ライガが言った。
「だったら、お前の“学び”を見せてくれよ」
「この教室は、お前にも開かれてる」
「だったら今度は、お前が“教える”番だ」
◆◆◆
翌日。
瓦礫の教室に、レンカが立つ。
制服のまま。背筋はピンと伸びたまま。
だがその手は、ほんの少しだけ震えていた。
レンカ:「今日の授業は、“計画”について」
「……皆、夢とかやりたいこととか、あると思うの」
「でも、夢って、“どうすれば届くか”って誰も教えてくれないじゃない」
「だから今日は、“夢の分解”をしてみましょう」
◆ レンカ式授業内容:
“逆算式未来設計”
→ 夢を細かく分解し、「明日やれること」にまで落とし込む授業。
アミ:「将来パン屋になりたい!」
→ →「じゃあ明日“材料を覚える”、明後日“近所のパン屋に聞きに行く”とか?」
コウタ:「俺、先生になりたい」
→ →「まず、何の科目? 誰に教えたい? そこから逆算しよう」
子どもたちが、目をキラキラさせて書き込んでいく。
EDU:「今日のメモ、保存保存保存ですっ!!」
ナギ:「レンカ、お前、すげぇな……」
レンカは、微笑んで言った。
「私は、“正解を教える”ことしかしてこなかった」
「でも、ゼロ組では“正解を作る”ってことができるのね」
「……ここに来て、よかった」
その夜。
ゼロ組の“授業報告ノート”に、ライガが書き込んだ。
『第32回授業:講師:烏丸レンカ』
『評価:最高だった。理由は……たぶん、みんな笑ってたから』
そして、レンカがそっとその横に書いた。
『次の授業も、やっていい?』




