第29話: 「転入希望。烏丸レンカ、ゼロ組に現る」
ー討論会から数日立った
【放課後/拠点ゼロ】
いつもと同じスラムの夕暮れ。
でも、その空気が今日は違っていた。
EDUが浮かび上がりながら、言った。
「ライガさんっ!“来訪者”がありますっ!」
「しかも、学園の最上階層からの転送ゲートを使ってきましたっ!!」
瓦礫の隙間から現れたのは——
制服を着崩した少女。長い黒髪。冷たい目。高貴な佇まい。
「やっと見つけた。スラムの……“最底辺の教室”」
ナギ:「誰だ、あんた……?」
少女は名乗ることなく、ボロい机に腰を下ろした。
そして、静かに笑う。
「……烏丸レンカ。転入希望。ゼロ組へ」
ライガは思い出した。
俺がスラムに来た時に鉄パイプ持ってたヤツだ!
場が凍りつく。
ハルキ:「な、なんで貴族様みてぇなやつが……!?」
コウタ:「本当に転入って……どういうこと……?」
EDU:「確認取れましたっ!学園のシステムに“転入希望処理”が正式に入力されてますっ!!」
ライガ:「……目的はなんだ?」
レンカは、少しだけ目を細めた。
「観察よ。“教室”ってやつの、正体を見たいの」
「このスラムの泥の中に、もしほんの少しでも“光”があるなら……それを証明したくなったの」
「私は、理事長の孫娘。生徒会も、教師も、私には逆らえない」
「そんな私がここに来たら……**ゼロ組が壊れるんじゃないかって、興味があるの」
「でももし、ここが“本物”なら、私は……」
「——本当に“学びたい”と思うかもしれない」
ヒビキがボソッとつぶやいた。
「……めんどくせーの来たな」
ライガはゆっくり言った。
「勝手に見てろ。ただし、“座る場所”がほしいなら、
この教室じゃ、自分で作るんだぞ」
レンカは一瞬、目を見開いて——
ふっと笑った。
「……その言い方、悪くないわね。リーダーさん」




