第2話:教育支援AI《EDU》、起動
数日が過ぎた。
朝は水場の奪い合い。
昼は食料の奪い合い。
夜は寝場所の奪い合い。
ここは「学園」じゃない。ただの**戦場**だ。
ある日、俺は廃屋の裏手で奇妙な光景に出くわした。
瓦礫の中から、光る端末が埋もれていたのだ。
「これ……支給された“EDU端末”と同じ型か?」
特待枠だった分だけ、支給品が1つだけあった。
——「学園端末(型番:S-EDU1)」。
「ま、起動しねぇからゴミだけどな」
俺のズタボロのポケットから出した、
たしかに、電源は入らなかった。
このガラクタ端末と見比べる。
どちらも型番は「S-EDU1」
ただしこっちは、電源が入っていた。
なんなら、さっきからピコピコ光ってる。
とりあえず拾って、手持ちの端末に繋いでみた。
──その瞬間。
「ピロリロリッ♪ 私立無冥学園・教育支援AI《EDU》、起動しました!」
……しゃ、喋った!?
「ユーザー確認:管理外・転校生“ライガ”さんですね。ログインを許可します!」
「えっ、あ、うん……てか、なんで俺の名前を?」
「顔認証ですっ☆ ご安心ください、プライバシーは約73%守られています!」
「不安すぎるわ!」
この端末、どうやら学園システムとリンクしてるらしい。
「現在、スラム区での“教育再構築プロジェクト”が未登録状態です。
仮プロジェクト名:《零番街計画》を提案します!」
「いや勝手にプロジェクト名つけんな」
とりあえず、こいつが何者かを確認してみると……
◆AI《EDU》:
開発元:無冥学園旧教育部門
用途:生活指導/学習支援/進路サポート
状態:システム破損につき、人格データが“テンション系女子高生”化している
「人格崩壊してるやん」
「ごめんなさいっ! でも役には立ちますっ!」
「……で、できることは?」
「現在、以下のサポートが可能です!」
・旧校舎マップの表示
・廃棄物資の位置情報の取得
・簡易ロック解除(ツール必要)
・生徒データの一部閲覧(ただし違法)
「最後の完全にアウトやろ」
でも、正直──ワクワクした。
このスラムで、俺はただ生き残るだけじゃ終わりたくない。
俺には、特待で入ってきた誇りがある。
そして今、この“ポンコツAI”が、
俺に再び「学ぶ」という言葉を思い出させてくれた。
「ライガさん、初のミッションを設定しました!」
《目標:地下備蓄倉庫の確保》
《障害:崩落・トラップ・先住スラム民の可能性あり》
「さあ、勇気を持ってGO☆です!」
「ノリが軽すぎるわ!!」
──それでも、俺は踏み出す。
ここから始まる。
**“スラム再生計画《零番街》”**の第一歩だ。