第28話: 「討論会開幕!スラムとエリート、“学び”の意味を問う」
【無冥学園・中央討論ホール】
通常は、学園幹部候補生のプレゼンに使われる場所。
今日はそこに、異例の組み合わせが並んでいた。
右サイド:
無冥学園の最上位エリート集団、《特進A組》
白を基調にした制服。データ端末。無表情な天才たち。
中央に立つのは、議長代理・氷室セイの直属
討論主席——葛城エルナ(IQ178、3ヶ国語対応、超合理主義)
左サイド:
ボロボロの制服、使い古された教具、瓦礫の椅子。
ゼロ組&クロ組混成メンバー
中心に立つのは——ライガ。
開幕の鐘が鳴る。
テーマは一つ。
「“学ぶ”という行為に、格差は許されるのか」
エルナが開口一番に言う。
「学びは“機会”ではなく、“資質”によって与えられるべきです」
「資質なき者に知識を与えることは、リソースの浪費に他なりません」
観客席でうなずく者多数。
セイは静かに腕を組んで見ている。
だが、ライガは動じない。
「でも、それって“スタートライン”から人を見捨てるってことだろ?」
「走る気がある奴の靴を奪っておいて、
“走れなかったのは才能がなかったからだ”って言うのか?」
エルナ:「感情論です」
「統計的に、上層出身者の方が成績が高く、学習効果も安定しています」
レイが口を開く。
「でも、そっちは“教えてくれる人がいる環境”で数字取ったんだよね?」
「うちらには、それすらなかった」
「でも今は違う。“教え合う”ことを知ったから」
ナギも続く。
「俺はずっと一人だった。でもゼロ組に来て、火を起こす方法を覚えた」
「“誰かと一緒にあったまる”学びが、数字で測れるか?」
後半戦、クロ組リーダー・ヒビキが討論台に立つ。
「昔、あたしたちも先生を信じて教室作った。でも潰された」
「そっちの“正義”でな」
「でもライガたちは、もう一回、火をつけてくれた」
「それが本物じゃなかったら、もうこの学園に“教育”なんていらねぇよ」
静寂。
そのあとに、じわじわと——
拍手が、湧き始める。
一部の観客が立ち上がり、
「もっと話を聞きたい」と声を上げた。
だが、セイは冷たく言い放つ。
「この茶番に、価値はない」
「次は、“制度”で排除する」
そう言い残して会場を去っていった。
だが、ライガは……微笑んだ。
「言葉で殴っただけでも、意味はあった」
「“教室”が、ほんの少し広くなった気がする」
この結果がどう出ようと、俺達に後悔はない。




