第24話: 「クロ組の真実。そして、“第二の盟約”が結ばれる」
戦いの翌日。
スラムに、久々の静けさが戻っていた。
拠点ゼロでは、負傷者の手当て、食事、復旧作業が慌ただしく進んでいる。
ナギは静かに火を起こし、
ハルキは片手で筋トレをしながら鍋を見張っている。
EDUは壊れた端末を修理中。
そして俺は、ヒビキと向かい合っていた。
「で? 俺たち、どうするんだ?」
ヒビキの第一声は、相変わらず尖っていた。
◆◆◆
場所は、ゼロ組の会議スペース(という名の鉄板テーブルの周り)
ヒビキ、クロ組の仲間数人が、警戒しながら座っていた。
俺は、真正面から聞いた。
「ヒビキ、お前らが《クロ組》を作った時、何があったんだ?」
ヒビキは、しばらく黙っていた。
そして——話し始めた。
「あたしらは、最初はただの“スラム流れ”だった」
「でも、ある時……本校の元教師がスラムに落とされてきて、こう言ったんだ」
『君たちに、“教室”をつくらせてほしい』って。
彼の名は、津島先生。
優しくて、本気で向き合ってくれる人だった。
彼の下に集まった子どもたちは、
ヒビキを含め、10人を超えた。
教室は瓦礫の中、机はブロック、教科書は手書きのノート。
でも確かにそこには、“学び”があった。
「……でもある日、“上”が動いた」
「“スラムのガキに教えるなんて、秩序を乱す行為”って言われて」
「白衛隊が、私たちの教室を潰しに来たんだ」
結果、津島先生は……
目の前で殴られ、引きずられていった。
誰も、止められなかった。
「あたしらは、ただ“先生を信じてた”だけだったのに……」
「“学び”は、奪われるってことを、そこで知った」
その後、ヒビキは再び“仲間を持つ”ことを恐れて、
クロ組を硬い殻の中に閉じ込めた。
それでも、スラムで誰かが“学ぶ”ことを許さなかった連中に、反抗し続けた。
俺は、その話を聞き終えたあと、静かに言った。
「だから、お前は今度こそ……誰も失わない教室を作りたかったんだな」
ヒビキ:「……言うなよ。泣くぞ、あたし」
◆◆◆
その夜。
俺たちは、拠点ゼロの中心に“新しい板”を置いた。
スラムで最初の——盟約書。
『ゼロ組とクロ組は、“共に学ぶ場”を守り、育てる』
『暴力による支配を否定し、教育によって生きる道を選ぶ』
『それぞれの違いを尊重し、互いに支え合うこと』
その横で、EDUが張り切っていた。
「これよりスラム連携第一号、**“スラム学級連盟:EDEN協定”**として発足しますっ!!」
「同盟名は勝手に考えました!!反論は受け付けませんっ☆」
ハルキ:「EDUが爆走モードに入った……!」
でも、誰も止めなかった。
その日、ゼロ組はひとつの教室じゃなくなった。
**“灯火を分ける者たち”**になった。




