第22話: 「スラムには、もうひとつの“学級”がある」
ゼロ組、正式承認から数日後——
拠点ゼロに、妙な空気が流れていた。
拠点ゼロには珍しく“制服を着た女”の姿があった。
「……お前が来るとはな、アスカ」
ライガの隣で立つ時雨は、眉ひとつ動かさない。
アスカ:「命令よ、時雨先生。生徒会本部が、あなたの“報告”を求めているわ」
「ゼロ組の影響力が、学園の枠を超え始めている。それについて、きちんと聞かせてもらう必要があるの」
時雨は、ほんのわずかに沈黙し——
そして、振り返らずに言った。
「ライガ、お前に預ける。……お前は、もう“生徒”ではない」
「“担任が不在のとき、教室を守る者”が教師なら、
教師が不在のとき、教室を導くのは——リーダーだ」
ライガ:「……任せてください。ゼロ組は、俺が守る」
その言葉を最後に、時雨はアスカと共に行ってしまった。
残されたのは、静かな緊張と、
“リーダー”として動くべきタイミングを迎えたライガの背中だった——。
それから数時間後、
EDUの警告音がなった。
ナギが何も言わずに警戒レベルを上げ、
ハルキは筋トレの最中でも何度も背後を振り返っている。
そしてEDUが言った。
「拠点外周センサーに、未確認反応——複数体」
「しかも……組織的な移動パターンです。単なる野良じゃありません」
俺はすぐに行動を開始した。
偵察班:ナギ+レイ+EDU
防衛準備班:ハルキ+ガジ+子どもたち
交渉対応:ライガ(俺)
そしてそのとき、それは現れた。
瓦礫の山の向こう、
10人ほどの人影が姿を現した。
それはまるで——ゼロ組を鏡写しにしたような一団だった。
先頭の少女が歩み出る。
紫の髪、左右非対称の制服。左目にバイザー。目つきは鋭く、どこか諦めを背負っている。
「あたしは、ヒビキ。スラム第七層、未承認学級《クロ組》のリーダーだ」
「聞いてるぜ、“ゼロ組”。生徒会に認められたって話な」
俺は一歩踏み出して言った。
「ああ、正式認可された。でも俺たちは、スラムを出る気はない」
「ここで、“もうひとつの学び”を作っていくつもりだ」
ヒビキはふっと鼻で笑った。
「言葉は立派だ。でも、それで皆がついてきたか?」
「このスラムで一番強いのは“暴力”だ。それを知らないわけじゃないだろ」
どうやら彼女たち《クロ組》は、
かつてゼロ組と同じように希望を掲げて学級を作ろうとしたが、
他のスラム勢力に潰され、復讐と排他的自衛で生きてきたらしい。
「あんたらの“理想”、ぶっ壊してやる」
「戦え、ゼロ組。正義を名乗る資格、試させてもらう」
俺は即答しなかった。
だが、子どもたちが震える中、コウタが前に出て言った。
「戦いたくない。でも、守りたいものがある」
「でも、俺らは逃げない。戦うよ、俺たちの“やり方”で!」
空気が、張り詰めた。
そのとき、EDUが警告を出す。
「ちょっ、ちょっと待ってください!!別ルートから……別の勢力の反応が!」
俺とヒビキが同時に振り返る。
遠くの瓦礫の上に、謎の一団が立っていた。
全員が“統一された白い装備”、完全武装。
背中には学園の紋章。
でもその制服は——どの学級のものでもなかった。
EDU:「識別不能。未登録部隊です」
EDU:「ただし……通信傍受で確認しました。“支配型スラムグループ《白衛隊》”」
「“ゼロ組”も“クロ組”も、排除対象とされていますっ!」
ヒビキが目を見開く。
「……あの野郎、白衛隊をこっちに向けたのか……!」
「知ってるのか!?」
「こいつらは、理事長派のクズ共が作った“治安維持部隊”のふりしたスラム統制用の私兵だ!」
俺とヒビキが目を合わせた。
ライガ:「今だけ、“敵”はあんたじゃない」
ヒビキ:「……共闘ってわけか。気に食わねぇけど、背中は任せたよ」




