第14話: 「生徒会の使者、スラムに現る。名を語る者:アスカ」
スラムの入り口に、
似つかわしくない存在が立っていた。
制服の袖は白、襟元に金のライン。
その肩に刺繍された紋章は、“無冥学園・生徒会”。
そして、その人物の名は——
「……常磐アスカ。生徒会副会長、情報管理担当」
「あなたが、“自治区ゼロ”のリーダー、ライガで間違いないかしら?」
声に感情はない。目も、心の奥を覗くように静か。
俺はゆっくりと頷いた。
「そうだ。ここは“学園”の外にある、もう一つの学び場だ」
「“俺たちの意思”で作った、ゼロからの居場所だ」
ハルキは後ろで腕を組み、ナギは無言で様子を窺う。
子供たちは、気配を殺しながら壁の影に隠れていた。
アスカはその全てを、端末で記録している。
「あなたたちの存在は、学園秩序を揺るがす可能性がある」
「放置はできない。——が、排除も、まだ決定ではない」
「どういう意味だ?」
「これは、観察期間。生徒会は“対話の余地”を残す」
「ただし条件がある。“秩序ある組織体”である証明を、提出してもらう」
アスカが差し出したのは一枚のフォームだった。
『自治組織構成調査票』
——つまり、生徒会公認“学級”への昇格申請だった。
「これは、チャンスと見るか、介入と見るかは……あなた次第」
「次に来るとき、私は“敵”か“味方”か。答えを用意しておいて」
そう言い残し、アスカは踵を返して去っていった。
廃墟に金のラインが、しばらく煌めいていた。
俺は調査票を見下ろした。
そこにはこう書かれていた。
◆仮登録名:「自治区ゼロ」
◆申請代表者:ライガ
◆構成人数:最低10名以上
◆指導担当:なし(AI不可)
◆活動目的・カリキュラム・指導方針を記入せよ
「なるほど……“クラスごっこ”を始めろってか」
EDU:「お任せくださいっ!授業計画、燃え上がってきましたあぁぁ!」
「いや、燃えるな。冷静にやれ」




