第11話: 「第5層の誓い 〜小さなリーダー・コウタと、希望の壁塗り〜」
その少年は、静かにみんなの前に立った。
傷だらけの体。だけど姿勢は、真っすぐだった。
「俺は、コウタ。ここでみんなをまとめてる。歳は、たぶん12」
声には威圧も虚勢もなかった。
でも、“守るものがある者の声”だった。
「で、何がしたいんだ? 食いもんで釣って、勧誘?」
「違う。共に生きたいだけだ」
「俺たちが築いてる拠点に、君らの力が必要だ。支配じゃない、共存だ」
しばらくの沈黙のあと——
コウタは、笑った。
「大人みてぇなこと言うな。……でも、ウソじゃなさそうだ」
◆ ◆ ◆
そして次の日。
「信頼を得るための“最初の共同作業”」として、EDUが提案したのが——
「壁、塗りましょう!!!」
「壁!?」
「そうです! スラムの記録消去エリアに、“情報としての存在”を刻み直すには、可視化=見える形での共同作業が有効ですっ!」
「それに、内装ってテンション上がるじゃないですか〜〜っ♪」
というわけで、拠点ゼロの一角にある、瓦礫だらけの旧校舎の外壁を、
子供たちと一緒に“再塗装”することになった。
即席チーム分け:
ハルキ → 力仕事担当(バケツ運び、瓦礫撤去)
ナギ → 下塗り管理(静かに色の濃淡調整してくれる)
コウタ → 子供たちの班長、指示&ミス処理役
ライガ → 監督&ケガ対応&トラブル対応(あと全部)
EDU → 音楽&ペース管理(なぜかDJモードでBGM流す)
「おーい、誰だ! ハルキに筆持たせたやつ!」
「筋肉でアートしようとしてるだけだ!!」
「テーマは“俺の三頭筋”!!」
「塗るな!壁に!筋肉!!」
一方で、コウタが塗った側の壁には、
“青い空”と“緑の地面”の絵が広がっていた。
「俺たち、空を見たことないからさ。想像だけど」
「でも、見たいやん。いつか」
その言葉に、俺は確かに心を動かされた。
作業が終わる頃には、
子供たちは疲れてたけど、どこか誇らしげだった。
「これで、俺たちも“ここ”の一部になれたよな」
コウタがそう言った。
俺は、強くうなずいた。
「ようこそ。仮設ベース・ゼロへ」
「ここはもう、ただのスラムじゃない。“俺たちの自治区”だ」




