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騎士の迎えが来た日

「お迎えにあがりました、スチュアート殿下」


 そう言うなり、ハルクやまわりの騎士たちが跪いた。


「……あまりにも突然だな」


「お言葉ですが、殿下……」


「ハルク、頼むから普通にしてくれ」


 わかっている。


 彼が王命でここにきて、こうして俺にもそれなりの大度で接しなければならないことはわかっている。


 それでもハルクやかつて仲間であった騎士たちに跪かれるのは距離を感じ、複雑な気持ちになった。それでも、


「お言葉ですが、何度か文は差し上げたはずですし、我々がこの場にたどり着ける明確な日時はお伝えできないことはあなたもご存知のはずです」


 立て、と号令をかけ、ハルクは立ち上がり、しっかりとした意志の強い瞳でこちらを見つめ返してきた。


「欲望に溺れるのもほどほどにしてください、隊長」


「なっ!!」


「そ、そうですよ! 隊長がここで魔女様を独り占めしていることはみんな知ってるんですよ」


「いつもいつもデレデレにやけて、俺らの知る隊長はどこに行ったんですか!」


「そうですよ。フローラ様が逆らえないのをいいことに……しょ、職権乱用ですよ!」


「なっ、なんだと!」


 ハルクの言葉に続き、あちこちから非難を受けることになる。


「あなたも騎士ならおわかりのはずです。一度お戻りください。我々には今、あなたが必要なのです」


 隊長、とハルクは胸元に手を当て、敬礼する。騎士たちも続く。


「おまえたち……」


 迷いのない真っ直ぐな瞳に、もう逃げてばかりではいられないことを気づかずにはいられなかった。


「モフッ」


 モフモフの声がした。


(ああ……)


 彼女が目覚めたことを悟る。


「今日、ジャドールとして彼女に告げる。それまでは待ってほしい」


 俺は騎士であり、そして一国の王子である。


 我々の一言で国は良くも悪くもなる。


 そのくらい一族のある一家だ。


 だからこそ、俺たちがしなくてはならないことが山ほどある。


 ましてや俺は、自由を与えられて、華やかな世界とはまるで違う街や村を見てきたし、直接の声も聞いた。


 見て見ぬふりをするなんて、絶対にできない。


 扉が開く音がして、騎士たちの表情が引きつって見えた気がした。


「隊長、フローラ様です」


 ハルクの声とともに、振り返るとそこには蒼白な顔をしたフローラが立っていた。


「ああ、フローラ、目覚めたのですね」


 振り返るなり、笑顔を作る。


 フローラは大きな瞳をさらに大きくしてこちらを見ていた。


(ああ……)


 それは、明らかな拒絶だった。

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