魔女が大好きな騎士のお話
運命の日は、すぐにやってきた。
夜が眠れないのか、フローラが日中眠そうにしていることが増えた。
時間が来たら起こしますよ、とお伝えしても大丈夫だと一点張りのくせに強い睡魔には敵わないのだろう。お昼ご飯を食べたあとは特に眠そうにしていた。
「フローラ、どうぞ」
ぼんやりした状態のフローラが顔を上げる。
午前中はせっせと薬草づくりに励んでいたが、そろそろ電池切れのようだ。
自分の肩を指すと、そのまま俺の胸に頭を預ける。
いつもなら絶対になかったしぐさだ。
「フローラ、無理はしないでくださいね」
この声がどこまで彼女に届いたのかはわからない。
言い終わる前に彼女は小さく寝息を立て始めたからだ。
「フローラ」
愛おしくてたまらないのに、どうしようもできない。
それがとても苦しかった。
「フローラ、触りますね」
そっと彼女を抱きかかえ、そばに置いていたタオルケットを彼女にかける。
とても軽い。
こんな小さな体で頑張っているのかとしみじみ思ってしまうほどに。
「フローラ」
一体どうすれば、あなたとこれからも共に過ごしていけるのだろうか。
ずっとずっと考えている。
彼女の幸せを願いつつ、いつも自分本位になってしまうことが嫌になる。
目覚めたときは、また彼女が笑ってくれることを願い、窓の外に目を向けた。
モフモフが飛んでいた。
ユリシス様の話で知ったのだが、モフモフは王家の人間のみが扱える生き物なのだとか。
そんなことがフローラに知られたら、俺の正体なんてすぐにバレていただろう。
思わず苦笑しながらも、フローラの頬に触れる。
「すぐ、戻ります」
外で待機をしているのはハルク率いる近衛騎士たちだろう。結界を解く必要がある。
あーあ、とこらえきれないため息を吐き、名残惜しくも外へと繋がる扉を開いた。




