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囚われた騎士の午前中

「魔女様〜、おはようございます! 朝ですよ〜!」


 いつものように念のため声をかけてみるも彼女の部屋からは音さえも聞こえない。


 今までの騎士たちは一体彼女にどうやって接していたのかと疑問に思いながらも彼女のために作った朝食を皿ごとトレイに乗せる。


 焼いた食パンに力任せに切り刻んだ不揃いな野菜。


 あとは、送られてきたばかりの果実のドリンクを……と、朝食と呼んでいいのかわからないが、ここへ来るようになってからは定番の朝のメニューを彼女の部屋の前に運ぶ。


 お腹が空いたらそっと室内で食べてくれればいいのに、と願うも俺がこうして準備を始めてから一度も彼女は食事に手を付けた様子がなかった。


 それどころか、姿さえも見ていない。


 ちゃんと食べているのだろうか。


 まさか、倒れてるんじゃないかと心配になることはあっても許可なく勝手に入って良いものなのかと葛藤もある。


「魔女様〜! 朝ご飯はこちらに置いておきますね」


 半ば諦めつつも同じ言葉をドアの向こうに向かって発する。


 彼女はとても細くて小さい人だった。


 本来だったら……考えては頭を降る。


 どうにかして彼女に何か食べてほしい。


 そう思いながら、今日も俺は試行錯誤を繰り返す。


 ずっとトレーニングばかりしていたから考えるときも部屋にこもって唸っているよりも剣を振るっているときの方が頭が冴える。


 食器を水に浸し、再び外へ出る。


 ドアを開けると変わらぬどんよりした雲に招かれた気分だ。


 ここは、呪われた森。


 普通には見つけることができない場所だ。


 それは彼女の祖母である強力な魔女により、そうなるよう力が加えられていた。


 王子に呪いをかけた小さな魔女が逃げ出すことがないようにということと、もうひとつは彼女を外部の侵入者から守るためだったのだと思う。


 意識を集中させると、目に見えない空間からけたたましい声が聞こえてくる。


「さぁ、行くか……」


 剣をかざし、結界を解く儀式を行うと、先ほどまでは見えていなかった生き物たちが橋の向こうで牙を剥いてこちらを眺めているのが目に入った。


 躊躇なく橋に足をかけた。


 こうして彼女を待つ間に、彼女を脅かすように現れるものを排除していくことは俺の日課となった。


 結界の中で静かに生きていけば問題ないだろう。


 だけど、気配を察知して現れるものにここは安易に訪れて良い場所でないことは教えたい。


 食後の腹ごなしにしてはなかなかハードではあるものの、王宮にいたころよりも実践的なトレーニングが始められたと自負している。


 

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