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末王子の過ちと魔女の未来

「驚いたな。君の友人がドラゴンだったなんてな、ジャドール」


 部下たちが止めに入るのも気にせず乗り出すようにして見ていたらしい第三王子がおかしそうに両手を叩く。


「男前が台無しだな、ジャドール」


「すぐに直りますよ」


 頬から血が流れているようだが、そこまで深くはない。


「君の両親が知ったら……いや、そんなこと恐ろしくて想像もできないな、ジャドール」


「だから、いちいち名前で呼ばなくてもいいです。あと、絶対に城の誰にも言わないでくださいね」


「もちろん、君の勇姿だけ伝えるよ、ジャドール」


 この人は、ただからかいたいだけなのかもしれない。


 ドラゴンについては彼女が任されることとなり、騎士たちとともにドラゴンの元に残ったあと、俺だけ第三王子に呼び出された。


「まぁいい。本題はここからだ」


 今までのが本題じゃなかったのか。


 うんざりしながら次の言葉を待つ。


「おまえは、この村の状況をどう思った? ドラゴンが現れたのは一ヶ月前。それまでは頻繁に現れていたらしいのに、最近では現れたり現れなかったり」


 彼女が、あの場所で感じたのは魔女の力だと言っていた。


 彼女は気づいていないはずだ。


 でも、それは要するに……


「ルシファー様が村や近隣の地域に被害が及ばぬよう結界を張ってくれていたのではないかと思います」


「ルシファー様……フローラの母親か?」


「王宮の魔女に匹敵する強さの魔女を他に聞いたことがありません。ドラゴンが現れるたび、村人に被害が出る前に異空間へ飛ばしていたのでしょう」


 王宮の魔女にバレないギリギリの範囲で。


 いや、それもすでにバレているかもしれないけど。


「しかし、なんのために? 彼女は十年以上前にこの国から姿を消したのはおまえも知っているな。戻ってきたというのか?」


「……俺の推測です」


 娘を守るためだ、なんて言えるはずがない。あとはそちらで考えてくれ。


「それよりも、あなたがここへ来た本当の理由が聞きたい。それも理由があるんでしょう」


「話が早いな」


 第三王子から表情が消える。


「フローラをわたしの側仕えの魔女にしたいと思っている」


「なっ!」


「彼女は妹のように可愛いと思って接してきていた。無垢だった彼女をあんな得体も知れない森の中に閉じ込めておくなんて、考えたくもない。おまえもわかっているんだろう」


「………」


「彼女が帰れない理由はただひとつ。うちの愚弟のことだ」


 彼女が魔術を初めて使った相手、アベンシャールの末王子だ。


「わかっているんだろう。彼女を救えるのは騎士の君じゃない」


 第三王子の声が徐々に低くなる。


 返す言葉もない。


「王子である弟自身だ」


 わかってる。


 わかっているんだ、そんなこと。


「弟にできないのなら、わたしが救うまでだ」


 第三王子の言葉は、重く俺の心にのしかかった。

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